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「健康」とは何か?について考えてみる

こんにちは。
アートセラピーオフィスyumit です。

最近読んでいた本に、「健康」とは何か? という問いがありました。
稲葉俊朗さんという医師の先生が書かれた本です。(とても読みやすい良書なのでオススメです)


大切な問いなので、是非ここでも考えてみたいなと思ったのです。

「健康」とは、「病気ではない」こと?
「病」をなくせば、「健康」なの?


稲葉さんはこの本の冒頭で、以下のように仰っていました。

"その人にとっての「健康」は、一人ひとりが主体的に決めて、発見するものです。
そして、医師の仕事は、その人が決めて発見した「健康」という目的地へ向かう時に、伴走者として手助けをすることだと思います。"


この一説、とてもとても深く共感してしまいました。(私は医師ではありませんが、1人の医療者として)
病院でありとあらゆる検査をしても問題が見つからず、すべての数値が正常で、なんの診断もつかない。
それでも、やっぱりどこかおかしい。とても調子が悪い。自分が「健康」とは感じられない。
そうやって色々な科を回ったあとで、最後の最後に精神科やカウンセリングルームを訪れるかたは、本当に大勢いらっしゃいます。

この本でも紹介されている通り、例えばWHO(世界保健機関)は「健康」を単に「病気や弱っているところのない状態」とは定義していません。健康とは、「身体的、精神的、そして社会的に満たされていること」としています。
「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.」

身体的に満たされていないことは、検査をすれば、数値や画像として出てくることが多いでしょう。
それはとても客観的で、科学的な見方ですよね。それによって最新の最も適切な治療を行えるのは素晴らしいことです。
「身体の専門家」であるお医者さんたちが、客観的かつ科学的な見方をするのは非常に大切なことだとわかります。

社会的(social well-being)に満たされているというのも、ある程度客観的な指標にそって調べることができそうです。
衣食住が整っているか、教育は受けられているか、生活水準は保たれているか、社会とのポジティブな繋がりの中にいるか、など。
これが欠けていたり、剥奪されている場合に活躍するのが、社会福祉や行政に関わるプロフェッショナルの人たちです。
その人が生きる“社会”、“環境”を整えることは、身体や心をケアするのと同じように大切なことです。

でも、「精神的に満たされていない」ことは、どのようにしてわかるのでしょうか?
どうしたら判断することができるのでしょうか?

もちろん、それらをはかろうとして、たくさんの指標が作られてきました。
質問紙、チェックリスト、半構造化面接、心理テスト。
でもそれは、形のないもの、目に見えないものを、なんとか数字に置き換えて、正常値や平均値と比べてみた、“理解のための試み”に過ぎません。それが正常値だから、平均範囲内だからといって、その人が「満たされている」というわけではないのです。

そのようなツールが手掛かりになるとはいえ、結局のところ、本当の答えはその人の中にしかないのです。
「精神的に満たされている」「満たされていない」の判断は、一人一人の“主観”の中にしかない。
私たちができることは、その人の「満たされていない」「健康でない」という“主観”を、できる限り理解すること。
そして、その人にとっての「満ち足りた」「健康な」状態へと向かうためのお手伝いをすることなのではないかと思います。

医師が「身体の専門家」なら、私たちは「心の専門家」です。
私たち心の専門家にとって、この目の前の患者さん(クライエント)の“主観”は、本当に重要なものなのです。

Yumitを訪れるかたの中には、
「自分はこんなに豊かな環境にいて、体も健康なのに、カウンセリングにかかるなんて、贅沢ですよね?」
とおっしゃるかたがいます。

「この子、病院でたくさん検査したけどどこもおかしくないし、それでも学校に行けないのは、甘えなんでしょうか?」
そんな風に憤りながらお子さんを連れてくるお母様もいます。

私は、贅沢でも、甘えでもない、と考えています。

みなさんそんな風に不安なのは、「身体」と「社会(環境)」が満たされていれば「健康」であるはずだ。
という思い込みがあるからなのではないかと思います。
この現代社会において、数値ではかることができない、客観的に理解されにくい「精神(こころ)」は軽視されがちです。
「身体」と「社会」が満たされているのに「精神(こころ)」のせいで健康でないなんて、甘えてる、弱い、思い込みだ、
そんな風潮が強かったのではないかと思います。

でも本当は、「精神(こころ)」だって、「健康」であるために欠かせない要素なんです。
「身体的」にも「社会的」にも満たされていたとしても、「精神的」に満たされていないために「健康」でないという状態は確かにあるのです。
もっといえば、「精神的」に満たされていない苦しみだけで命を落としてしまう人だって、少なくないのです。

ですから、「精神的に」満たされていない、欠けている、調子が悪い、といった辛さや苦しみを、
どうか軽視しないで欲しいのです。

「精神(こころ)」の不調を感じた時に、「甘えだ」「弱さだ」「思い込みだ」と、自分を責めないで欲しいのです。

「精神(こころ)」は、あなたの“健康”にとって、見過ごすことのできない大切な要素の一つです。
身体や環境と同じくらい大切で、ケアや調整が必要なものなのです。


例えば、肩が凝ったらマッサージやストレッチをするように、
お部屋を掃除したりデスクを整理して気持ちのいい空間をつくるように。
こころがちょっと疲れてるなと思ったら、
人に話を聞いてもらう、1人になってリラックスできる時間をつくる、好きなことをして思い切り楽しむ。
そんな風にケアしてあげてほしいなと思います。

もちろん、長い間ずっとこころを放ったらかしで、カチコチになってしまって、どうほぐしていいかわからない。
もっと言うと自分でも自分のこころがわからない。何をしたらケアできるのかもわからない。
そんな時は、マッサージや整体に行くのと同じような気軽さで、カウンセリングを利用してみてもらいたいなと思います。
(yumitも、そんな気軽なご利用を歓迎しています)


今回は、「健康」とは何か?について、考えてみたnoteでした。
いつも後回しにされがちな「こころ」も、身体や環境と同じように健康にとって大切な要素なのですね。

みなさんもぜひ、時々ちょっと立ち止まって、心のケアをしてみてください。


それでは、また次のnoteでお会いしましょう。



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