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ぐちぐち内省トラベル

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社会に適応できない人間による、社会を愛するための旅行レポート群です。ダークツーリズム率やや高め。
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尾道の局在的尾道性

尾道の局在的尾道性

白﨑尾道三部作

一、18歳一人旅(2015)
・あらすじ
 青春18で人生はじめての尾道へ。踏切を境界として民家・寺と商店街が隔たる、独特な街の雰囲気に打ちのめされる。日本にはこんな場所があるのか。どこか牧歌的なのに、映画や文学、洗練された文化への矜持が張り詰める街の意思を、この未熟な精神でも知覚することができる。熱量(カロリー)。「尾道」を最愛の地、心の支えとしてみよう。いずれ、人生にすべて絶

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自意識を捨てよ、旅に出よう(9/9)

自意識を捨てよ、旅に出よう(9/9)

 ニート期間に急遽思い立って出かけた、9日分の山陰・瀬戸内海カブキャンプ旅レポートの投稿が完了した。

 旅から帰ってくると、「あんまり有意義なことはしなかったな」とか「こういうときに‘教訓’なんかを持って帰ってくるべきなんでしょうね」とか、終わった行為の中庸さにしみじみする時間が、「ま、楽しかったからいいや」という、一種の開き直り感と共にやってくる。

 旅というのは、「他でもない【私】は、〈分

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醤油・オリーブ・コーヒー(8/9)

醤油・オリーブ・コーヒー(8/9)

2022.10.3(月)

 帰りたくない。

 本当ならば今日の朝、私は荷物をまとめて姫路行きのフェリーに乗る。目が覚めたのだし、さっさとテントを片付けて荷造りをして、フェリー乗り場で切符を購入しなければならないはずである。
 帰りたくないみたい。このままアウトドアチェアに深く腰かけ、遠方の海を眺めていたい。

 気楽なニート旅だ、帰りたくないなら帰らなければいい。港ではなく管理棟へ向かい、キャ

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島から島へ嘘遠足(7/9)

島から島へ嘘遠足(7/9)

2022.10.2(日)

 6時起床。テントのポケットからスマホを探り当て、現時刻から2時間後に鳴り出すアラームを止めておく。キャンプというのは強制的な生活習慣・矯正装置だ。瀬戸内海側特有の穏やかな秋晴れが、今日も今日とて澄み渡っている。テント越しなのに容赦ない。北陸生まれのインキャには眩しすぎる。

 バーナーに火を入れ、お湯を沸かし、鳥取から運んできたエチオピアを挽き、コーヒーをドリップする

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マンデルブロうどん(5/9)

マンデルブロうどん(5/9)

2022年9月30日(金)

 4連泊目ともなると、健やかに入眠し軽やかに起床することができる。ゆる言語学ラジオのゾミア回で「マズローの提唱した〈安全欲求〉が満たされないと健やかに生きられない人間もいる」という話をしていたが、私もどうやら堀元さん側、周囲に不安があってもなんだかんだで慣れていく側のようだ。
 まあ、とはいえ程度の問題だ。私にできるのはせいぜい連泊キャンプ3日目で安眠が得られるってい

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瀬戸内海の中心でモゴモゴとキョドる無職(4/9)

瀬戸内海の中心でモゴモゴとキョドる無職(4/9)

2022年9月29日(木)

 起きた。いい天気とは言い難いが、雨が降る気配はない。散策日和だ。
 今日は多々羅キャンプ場にもう一泊する。さくじつの厳しい移動を癒すために、のんびりここら辺をツーリングしよう。なんの目的もないけれど、大三島と生口島をフラフラ走る。

 坂が多い。案外、海が望める場所はそれほど多くはない。ほとんどの時間を山間走行に費やす。柑橘類の畑だろうか、手入れされた低木が規律正し

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こんにちは、瀬戸内海(3/9)

こんにちは、瀬戸内海(3/9)

2022年9月28日

 テントを叩く雨足が収まることはなかった。Yahoo!天気の雨雲レーダーを見つめすぎて、充分に眠ることができなかった。旅の序盤にうまく眠れないのはいつものことだ。仕方がない、諦めたほうがいい。睡眠不足は否めないが、朝6時にテントから這い出す。

 朝ごはんのコーヒーを飲みながら、愛媛は大三島の多々羅キャンプ場に電話して予約を取った。今日の絶対的タスクは、キャンプ場に隣接する

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雨の鳥取・池島キャンプ(2/9)

雨の鳥取・池島キャンプ(2/9)

2022年9月27日

 雨が降っている。

 雨が降ることは天気予報を前もって見て知っていたので(えらい!)、今日は遠くに出かけるのはやめて、鳥取市内でぼさっと過ごすことにしていた。
 レインウェアを着込んで出発する。たくさんの積載をして濡れた路面を走るのは初めてだ。滑ってコケたらおしまい。緊張する。

 キャンプ場のチェックインは11時。今は9時。少し時間を潰す。

 北陸地方民なので、曇天が

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明日、瀬戸内海を見に行こう(1/9)

明日、瀬戸内海を見に行こう(1/9)

 この旅行記は、約1年前の日記に基づいて書かれている。

 2022年9月26日から、9日間。スーパーカブにキャンプ道具を積載して、瀬戸内海のまわりを回ってきた。
 休職中ではあるが復職する気力はなく、事実上の無職。今でこそかなりこなれてきたが、この頃はニートOJT。先の不安に潰されそうだった。
 そんななか、バイク免許を取って初めての、ロング・キャンプ・ツーリングを企てた。今振り返ると、ワクワク

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飛騨高山のJapanese pub

飛騨高山のJapanese pub

 福井県に住んでいると、なにかと岐阜に訪れがちだ。

 愛知や静岡、長野を目的地とした旅の通過点として。バイクで温見峠を攻めたくて。1泊2日ほど、ちょっとした旅行の目的地として。

 岐阜は、観光地としてきわめて魅力的だ。言わずと知れた合掌造りの白川郷。山間の名湯・下呂温泉。淡水魚オタクにアクア・トトぎふ。鵜飼の長良川。岐阜駅前の巨大な廃墟、繊維問屋街。スーパーカミオカンデもあるし、鍾乳洞めぐりも

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長野の温泉ライダーハウス

長野の温泉ライダーハウス

 ちょうど1年前、生まれて初めて、バイクにまたがった。相棒のバイクは、教習所のスーフォアから、ブラックのタイカブになった。

 そして、先月、生まれて初めて、ライダーハウスに泊まった。

 店の種類にかかわらず、「常連客のみなさん」というのは恐ろしい。ライダーハウスといえば常連がはびこる巣窟だ。個人的ルール。閉鎖的空間。つかの間の共同生活。排他的な雰囲気。そういうイメージ、偏見。宿に到着するまでび

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富山駅前いるかホステル

富山駅前いるかホステル

 4月某日、スーパーカブに乗って、富山→新潟→長野→岐阜を回ってきた。

 富山の素敵なゲストハウスに泊まった。ぼんやりとBookingを眺めていたところ、その屋号の既視感に惹かれた。名は体を表す。その名の通り、オーナーが熱心なハルキストなのだ。

 ゲストハウスでは珍しく、かなりパワーの込められた図書室を併設している。飲食不可というこだわりっぷりだ。くつろぐ、チルするための部屋ではなく、あくまで

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九州・無職・車中泊(9/9)

九州・無職・車中泊(9/9)

 私の長期旅行というのは、毎回毎回、前の晩に荷造りをしながら「嫌だな、行きたくないな」「出発をやめちゃおうかな」と考える瞬間から始まる。そして、私の長期旅行の真髄は、旅のさなかに何度も何度も「なんのためにこんなことをしているんだろう」「気が狂いそうだな」と煩悶することにある。

 改めて「仕事やめてぬくぬくと旅行をして価値観変わったなんてインスタントに言って、そういう自分探し系はモラトリアム中に済

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雲仙・小浜・普賢岳(8/9)

雲仙・小浜・普賢岳(8/9)

 泣く泣く長崎市を経ち、大村市の道の駅へ。ここの道の駅めちゃめちゃ良いです。

 長崎付近で車中泊する人におすすめ。少し奥に入って耳栓すれば完全に安眠。お手洗いの水道からお湯が出る。そこそこ人が居て、気になるほど人が居ない。何よりもね、ここね、今まで道の駅で6泊してきた史上初めての、駐車場の中にいてもWi-Fiが届く道の駅でした。最高。

 今月入って3GBの通信量を早々に使い切ってしまったので、

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