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あたしは可愛くなんてない。

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「その感情が愛でも、憎しみでも、悔しさでも。あたしの、あなたへの感情は誰とも違うのだから」…… 1話5000字ほどの読み切り形式で送る、女性同士の感情シリーズ。
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#レズビアン

君が眩しい

君が眩しい

 夏の終わりはよく、人が死ぬような気がする。
 だから彼はあの日、あの日差しの眩しさが目にしみると言っていたらしい。

 その石には「金城家」と刻んであって、でも、こぢんまりとしていた。

「あ……凜花(りんか)」
 眉の下辺りでぱっつんとしてある前髪。
 でも、プライベートでの彼女はツインテールなんていう幼い髪型なんてしていない。
 当たり前だ、本来の久保田明里というのは聡明な女性である。
「何

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あたしは可愛くなんてない。

 あたしが玄関の扉を開けると、そこにはずぶ濡れの女の子がいた。
「いや、でも……でも、あなた本当は」
 男じゃないか。
 あたしがそう言いたいのを知っているのか、彼女は切羽詰まった声で「いいから何とかして」と言った。
「……なぁ、肉まん……どうしよう」
 その晩はまるで台風でもやって来たかのようで、梅雨の風情もへったくれもなかった。
 そんな中、女の子は胸元のはだけた、白いワイシャツ姿でうなずいた

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まがいモノ

まがいモノ

 風俗の人間と、芸能人って対して変わらないんじゃないかと、あたしは思う。
 だってさ、アイドルって「偶像」っていう意味なんだって。
 偶像っていうことは、本当の神様ではない。
 本物ではない。
 人間が憧れ、崇め、すがるための存在。
 人間にとって都合のいい存在。
 ……世界を掌握しているのは、神様じゃなくてむしろ人間だろうと思う。

「わぁ……カナタちゃん、いつも本当にそっくりで可愛いよ」
「や

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青く小さい、まばゆい君を

「ボクのおかげで、晴れました!!」
 小柄な彼女は両手を広げて、潮風の香りをいっぱいに吸い込んでいた。
「うーん! どこまでも青いね、サナちゃん!」
 空の青と、一面に咲き誇るネモフィラがつながっているように見えた。
 その中で彼女の派手なオレンジ色の、短い髪はとても目立った。
「ボクらは今、海浜公園に来ていまーす! どう? すごいね? すごいでしょー!」
 セナは、アマチュアとはいえ演劇畑の人間

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