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【今週の1冊】2020年10月④『勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版』千葉雅也(文春文庫)

勉強するとはどういうことか?本書ではまず、この問いに対する一つの考え方を知ることが出来る。その後、勉強を進める過程がどのようになっているのかということと、それに基づいた勉強の手法が紹介されている。

本書いわく、勉強するとはキモくなることだという。どういうことだろうか?簡単に言うと、新しいことを学ぶことで自分のノリが変化し、それまで所属していたコミュニティのノリに合わなくなって浮くようになるということだ。友達と話すときなどになんとなくノリが合わない感じがする、相手の発言に対して知識でツッコミを入れたらなんとなく場がしらけた、自分が好きなことの話になるとつい相手にしゃべる隙を与えないほどのマシンガントークをしてしまう…。こうした経験がある人も多いのではないだろうか?本書を読めば、これらの経験の正体を知ることが出来るだろう。

ノリが変われば、ノリの合う新しいコミュニティに移動することになる。しかし逆に言えば、現在のコミュニティが心地良い人にとっては勉強することは必ずしもいいことではない、ということが本書では述べられている。小さいころからやたらと「勉強しなさい」と言われてきた人はこれに衝撃を受けるかもしれないが、たしかに勉強すればするほど、勉強しない人とは話が通じないというか、相手のノリに何とも言えない気持ち悪さを覚えるようになるような気はする。

ただ一方で個人的には、勉強しなかったとしてもどのみちノリが合わなくなっていくような気もしている。自分以外が各々で好きなことを勉強していくはずだからである。これからの時代、ますます人生のかたちが多様化していくなかで、ひとりひとりが自分の好みのままに勝手に勉強してノリを変化させていくだろう。また、そうやって自分が学びたいことをとことん追求していった結果出会う、ノリの合うメンバーと過ごす方が幸せだろう。皆さんも是非安心して勉強し、キモくなっていただきたい。

本書では勉強について言語哲学をもとにした考察がなされている。文庫本で価格も手ごろだが、内容はかなり本格的で、哲学初心者にとっては正直難しいと思う。ただその分読みごたえは抜群である。是非一度格闘していただきたい。


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