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Social Distance 社会的距離と場づくり

社会的距離を確保することが求められる社会において、
建築という行為による、場づくりは何と無力なのか・・・と困惑している。

コロナウィルス感染防止の最善策は、不要不急の外出をしないこと。
すなわち、皆、家に篭っていなさい、ということである。

2000年代の建築づくりの主題。

2000年以降、特に2010年代、東日本大震災以降、建築関係者は、
人との繋がりをつくる場、を主題に、建築を考えてきた。
シェアオフィス・シェアハウス・開かれた公共施設・オフィス・・・。

しかし、社会的距離の確保が何より優先される現在、
人との繋がりをつくる場は、全く役に立たない状況である。

街中の一人暮らしの1K部屋に住んでいる私は、
週末は、近所のカフェでコーヒーを飲み、本を読み、時には仕事をし、
平日の夜は、ごはん屋で晩酌をしながらゆったりした時間を過ごしていた。

家は最小限の広さ・機能と割り切り、生活の楽しみの部分を、
街中の様々な機能に頼りながら生活していたのだった。

社会的距離を確保する生活、求められる建築。

その楽しみの部分をごっそりと削ぎ落とされた時、
私は、今の状況で、私が考える住宅の一番よい選択肢は、
「散歩ができる自然が近くにある、郊外の一戸建て」

家の中で機能が完結し、庭もあり車も所有している、
昭和〜平成の価値観の一人勝ちだ。
外出の自粛を求められる中で、気分転換と運動を兼ねる
散歩やランニングができる場所は、重要な価値だ。

また、オフィス空間についても、
この10年間のシリコンバレーやスタートアップの
多様性のある働く場づくりを参照しながら、
日本のオフィスも少しずつ、均質な空間から目的に応じた多様な場づくり、
という方向性にシフトしてきたところだった。

技術的には、仕事や行政手続きの大半が、インターネットを通じて、
実行できてしまう世の中。
改めて、限りある時間とコストを投じてまで、
人が集まって働くことの価値は何か?考えざるを得ないだろう。

それにしても、経済の停滞具合を見ると、「不要不急な行動」により、
経済は回っていたのだなあ、と痛感する。
自宅がある郊外から街中のオフィスに移動し仕事をするから、
公共交通機関を利用し、ランチで外食し、
仕事終わりに同僚とビールで疲れを癒す。
オフィスに通勤するために、服や靴などを購入する。

効率性だけを求めれば、働くために集まる必要はないわけで、
これらの支出と時間の浪費は、必要なくなる。
(若手の教育や、雑談から生まれるクリエイティブな発想、
などをどうする・・・という課題は残るけれど。)

2020年以降の社会の在り方、建築の在り方。

2020年は、社会の転換期となるに違いない。

私たちは、本当に必要な、移動を伴う生活のルーティーンは何か、
見直さざるを得ない。

仕事・買い物・手続きなどあらゆることを遠隔で行う経験をした後、
求める住宅やオフィスのあり方は、変化するだろう。

一人暮らしの人は、仕事机が置けるくらいの広さの部屋に住みたいし、
家族暮らしでも、仕事スペースは欲しいだろう。

一方、オフィスは全員が出勤しないことを前提に、
スペースを縮小することができる。
会議の回数は減るため、賃貸スペース内に専用会議室を
設ける必要性が薄くなり、貸し会議室の需要が増えるかもしれない。
賃料や通勤費も削減でき、WEB会議の利用により、
出張の楽しみも減るように思う。

また、同じ空間で働かないことを前提に、人事評価や組織運営の
方法も変わらなければならないだろう。
今は、先輩の背中を見ながら仕事を学んだり、
上司や場の空気を読むことが、良しとされる日本の企業も、
立場に関わらず、自分の意見を言語化して伝えることが良し、
とされる時代がくるかもしれない。

コロナウィルス収束後の社会に向けて

現在の状況は非日常であり、数ヶ月〜1年くらい後、
感染は収束し、ワクチンが開発され、
これまでのと変わらない日常が戻る、と信じたい。

しかし、互いを感染させないために社会的距離を置くことや、
テレワークにより、平日は自宅で働くという生活を経験した私たちは、
コロナウィルス前の世界とは異なる場を求める、という確かな予感がある。

それが何か、ということは、まだ外出禁止命令も出ていない、
4月5日時点の日本では、はっきりとは分からないけれど、
今感じている思いを、備忘録として感じたことを残しておく。

早く穏やかな日常が戻ってきますように・・・。

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