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本の話

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#早川書房

その後の美青年。『レス』

その後の美青年。『レス』

作家レスに、元恋人の結婚式への招待状が届く。式から逃れるためにレスは世界中の文学イベントを回る旅に出る。

レスは年を取ることに恐怖を感じている。ゲイであるレスの周りの上の世代はエイズによって早死にし、レスは「歳を取った最初の同性愛者」だと考えている。彼が五十歳を迎えることに対して肩が上がったように大きく構えているのはそのせいだ。自分が未達のファーストジェネレーションになるのだ。

『君の

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『何があってもおかしくない』

『何があってもおかしくない』

映画『フロリダ・プロジェクト』で観た、その日暮らしの貧しい生活、それは十年前の日焼けのせいで浮き上がるシミのように、2000年代であろうと大戦後であろうと何代にも渡ってアメリカに浮き上がってくるのだろうか。

アメリカ中西部のさびれた町に住み続ける人。都会へ出て金持ちになる人。そんな人たちの話で編み上げられた一冊だ。

第二次世界大戦、ベトナム、イラク。いつの時代も戦争は人を変えてしまう。この

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『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド

『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド

農園の奴隷コーラの逃亡譚。
アフリカから連れてこられた史実と、逃亡を助ける「地下鉄道」というフィクションが強い魅力をもって惹きつける。

映画で観たい!と思っていたら『ムーンライト』を撮った監督が映像化するそう。
たのしみ。

この小説にあるのは、大きな悲しみと恐怖と少しの希望。
アメリカは誰の看守なのか。
支配するものは黒人労働者たちから報復されることを恐れ、その恐怖が暴力を生む。
恐怖

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