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『キャッシュレス』くらいで驚いていられない『顔パス社会』とは

 日経電子版では、毎日のように新しいサービス・商品が記事にされていますが、【病院の受付・精算は顔パスで、カード決済→帰宅可】で取り上げられたようなサービスは卓越したものだと思いました。


 記事で紹介されているのは、AI顔認証による受付・精算システムです。このサービスによって病院での体験はどのように変わるのか――

①患者のUX
 ● 診察券なしで、顔パスで受付・受診できる。
 ● クレジットカードを登録しておけば、クレジットカードを提示する
  ことなく(クレジットカードを持ってこなくても)、
会計を待たずに
  帰宅できる。
②医師のUX
 ● 電子カルテに顔写真を登録しておけば、認知症の患者さんが他人の
  名前に返事をしてしまい、間違って診察を受けてしまうような問題が
  防止できる。
③会計担当者のUX
 ● クレジット精算を選ぶ患者が増えれば、現金払いの患者が減り、会計
  の流れがスムーズに。
 ● クレジット精算を選ぶ患者が増えれば、支払いをせずに帰ってしまう
  患者さんのような問題も改善できる。

 ――顔認証を導入することで、患者・医師・会計担当者など、病院に出入りする多くの人々の病院体験が改善され、待ち時間の長い待合室での感染症のリスクや、受付・会計窓口の人手不足といった大きな課題を解決できるのです。


 何故、顔認証、『顔パス』にこれ程のポテンシャルがあるのか?――考えて気付いたのは――

 『顔パス』によってその人の属性や権利を媒介するモノ=『媒体』が不要になる。

――という事です。

▶『顔パス』によって不要となる媒介物
 ● 診察券
 ● クレジットカード
 ● 現金(キャッシュ)
 ● チケット
 ● パスポートなどの身分証明書
 ● 携帯端末上のチケット、など


 それを持っている人の身分、資力、入場・乗車などの権利などを表す媒体、身分証・お金・チケットといったモノは、つい最近まで(今でも)なくてはならないモノでしたが、その一方で、携帯の不便、管理の面倒、忘れたりなくしたりするリスク、偽造、アナログな性質、それ自体が不正な売買の対象になる、等々の様々な難点を抱えています。『顔パス』は、『媒体』が持つそれらのデメリットを一挙に回避できるシステムなのです。

 このような『顔パス』のシステムがセキュアかつ効率的に機能するためには――

①【顔認証の精度】・・・トム・クルーズの「ミッション:インポッシブル」
 に出てくる3Dプリンティングのマスクの現実性はさておき、いかなる
 偽装も通用しない精度、逆に本人の健康状態・髪型・サングラスなどの
 ファッションに影響されない精度が肝心です。他の生体認証との併用は、
 システムが煩瑣になるので避けたいところではないでしょうか。

②【セキュアな個人データ管理】・・・『顔パス』のシステムは、もちろん
 幅広い個人データがデジタル化されていることが前提です。チケットなど
 のデジタル化されたデータが顔データと紐付け(情報の関連付け)されて
 いないと意味を成しません。つまり、数多くの個人データが今まで以上に
 デジタル化され、顔データの下に統合されるため、その改ざんや偽造に
 対するセキュリティーの脆弱性は、『顔パス』の存在意義そのものを
 揺るがしかねません。

③【クライシスに対する準備】・・・『顔パス』が広く浸透した社会で、
 システムがダウンすると、壊滅的な事態となりかねません。そのような
 事態をシュミレーションし、備えておく必要があります。

④【残高確認のシステム】・・・『顔パス』で買物が出来てしまうと、資産の
 管理、コントロールが課題となってくるはずです。買物の前に残高を確認
 出来る携帯端末は、なくならないのではないでしょうか。


 『顔パス』のシステムがセキュアかつ効率的に機能している『顔パス社会』では、貨幣の発明以来人類の文明を支えてきた媒介物が姿を消し、その代わりに、高度にデジタル化されたデータが顔データと紐付けられてスピーディーな処理が行われるようになる、と考えられます。そのような近未来の姿に思いを巡らすことは、楽しくもあり、反面少し怖くもあります――


▶『顔パス社会』を想像してみる……

●レストランは全て前払いに?

  食べ終わってから、顔認証して残高が足りません、はマズイです。
 今でも同じ事ですが、『顔パス』で気軽にどこでも行けるようになると、
 今まで以上に「うっかり」が発生するかも知れません。
  もっとも、現実には、注文した時点で、決済が完了(残高が足りな
 ければアラームが出る……恥ずかしい……)ということになるのかも……


●クレジットカード会社はなくなる?

  自分の顔データと貯金データが紐付けされていれば済むことなので、
 間にクレジットカードの介在する余地はなくなるのでしょうか?
  クレジットだと、例えば15日締めの10日払いなら、預金残高が少なく
 ても、25日に給与が入る事でカバーできます。支払回数も選べます……
 ですが、そもそも、銀行とクレジットカード会社を別会社にしておく意味
 がなくなる
、のではないでしょうか(法的な枠組みは別として)?単一の
 資産管理会社が個人の金融資産を管理し、与信管理も絡めた最適化
 された入出金管理
をする方が、格段に合理的なように思えます……


●わずらわしい暗証番号はなくなる?

 『顔パス社会』では、顔そのものが複製不可能なパスワードのようなものですから、顔認証テクノロジーの信頼性が十分に高ければ、パスワード、暗証番号は不要となるのでしょうか?
 もっとも、想像をたくましくすれば、強制的あるいは無意識に顔認証させられそうになった時の事を考えて、ユーザーが暗証番号を選択できるシステムになるかも。また、高額の取引の際など、本人の決心を再確認する意味で、パスワードや暗証番号の入力が求められるかも知れません。


●『顔パス』で世界旅行!

  現金もカードも、パスポートも持たずに、カメラと着替えだけを持って
 世界旅行へ
行けるようになるかも。……そんな気ままな旅では、残高が
 少なくなってきた時に、今帰国しないと、途中でアウトです、などと
 資産管理会社がアラートを出してくれるようになるかも知れません……


●国境なき世界

  『顔パス』でどこへでも行けるだけでなく、スピーディーに就労・就学
 の手続きができるなど、制度の障壁がどんどん低くなって、世界は国境が
 ないのと同じ状況になる
かも知れません……。そうなったら、世界の融和
 がどんどん進むかも知れない
……


 『顔パス社会』のインパクトは、想像以上に大きなものとなって、人類の歴史に新たな1ページを開くことになりそうです。
 進化した『超・顔パス社会』では、個人の属性や権利などを媒介するものがなくなり、全てがデジタル化されたデータとなるため、それまで独立して存在していたシステム間を隔てる障壁が著しく低くなって、システム、すなわち企業をはじめとした社会の様々な仕組みの統合が進むのかも知れません。

  


 

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