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リーンスタートアップ~大企業病を予防するIT企業の取り組み~

 最近の日経電子版の記事【楽天「プロジェクト6」を待っていた落とし穴 ネット興亡記(7)】、【LINEがカンパニー制 7分野、意思決定を迅速化】を読むと、先進的なIT企業ほど大企業病に陥らないための努力を怠っていない、との印象を強く持ちます。本来大企業病の弊害を憂えるべき企業が、自身の大企業病に何ら手を打てないでいるのは、皮肉な事です。


(1)企業にとって大切なもの

 大企業病について考えるに当たっては、まず、現代の企業にとって何が一番大切か、という事を押さえておく必要がありそうです。その大切なことを阻害する症状こそが、大企業病の現れであると考えられます。

 企業にとって大切なものは、ESGなどいくつもありますが、企業にとって最も基本的な商品(モノ・サービス)ということであれば、『商品開発』こそ最も大切なことだと言えます。そして、消費の対象がモノからコトへと比重を移していく現在進行形の第4次産業革命の時代の『商品開発』には、消費者の潜在的なニーズを捉えた、今までにない全く新しい価値を創出するイノベーションが重要なのは言うまでもありません。その際、外せないポイントを3つだけ挙げるとしたら――

 ①『イノベーティブ』・・・今までにない全く新しいものを作る
 ②『心に刺さるUX』・・・ユーザーが共感するものを作る
 ③『スピード感』・・・スピ―デイーに作る
         (新しいものは、文字通り先に出した方の勝ち)


(2)大企業病

 そこで、この3つを阻害する要因を、大企業病の症状として列挙してみると――

 ①『イノベーティブ』の阻害要因
  ⇐事なかれ主義(リスク回避、変化を嫌う・・・)
  ⇐手続き主義(ルール偏重、自分で考えない・・・)
  ⇐煩瑣な決裁ルート(意思決定の遅延)
  ⇐タテ割り組織(部分最適の追求)
  ⇐(上記全てを内包した)官僚主義
  ⇐お客様目線の欠如(成功体験を引きずる・・・)
  ⇐現場軽視(肥大化した本部組織など)
 ②『心に刺さるUX』デザインの阻害要因
  ⇐事なかれ主義
  ⇐手続き主義
  ⇐タテ割り組織
  ⇐お客様目線の欠如
  ⇐現場軽視
 ③『スピード感』の阻害要因
  ⇐事なかれ主義
  ⇐手続き主義
  ⇐煩瑣な決裁ルート
  ⇐タテ割り組織
  ⇐官僚主義

 ――敢えて分類しましたが、実際には、これらの要因が絡み合い、一つの要因からもう一つの要因が派生して、悪要因の集合体としての大企業病が、イノベーションの足枷となっている、と考えられます。


(3)大企業病にならないために

 【LINEがカンパニー制 7分野、意思決定を迅速化】の事例では、『カンパニー制』が取り上げられていますが、記事の要点と思われるのは――

 ① 目的はあくまで意思決定のスピードアップ。
 ② カンパニー制は手段に過ぎず、弊害が出てくるなら止める。
 ③ 組織の階層を少なくしても、人数が多いとスピードが落ちる。

 ――目的と手段を取り違えずに、経営トップが、目的に合った手段を模索し、変えていく姿勢が印象的です。


 【楽天「プロジェクト6」を待っていた落とし穴】の事例は、今回最も注目した『リーンスタートアップ』です。リーン(薄く)に始めて、顧客に使ってもらいながら、試行錯誤を繰り返して大きくする、という手法ですが、記事からその骨子と思われる部分をピックアップすると――

 ①『スモールチーム』・・・少人数のスモールチームでプロジェクトを
  スタートし、サービスを効率よくスピーディーに立ち上げる。
 ②『社長室の隣部屋』・・・チームの本拠は、経営トップと物理的にも近い
  場所に。
 ③『迅速にメンバーを集める』・・・人事が社員のスキルを把握しており、
  迅速に対応できる。
 ④『失敗を恐れない』・・・小さく始めて試行錯誤していくので、途中で
  失敗してもダメージは小さい。
 ⑤『初めはコピーと言われても……』・・・後からどのように独自性を
  出して、顧客の支持を得ていくかが問われる。

 このような『リーンスタートアップ』がうまく機能すれば、事なかれ主義・手続き主義・煩瑣な決裁ルート・タテ割り組織・官僚主義・お客様目線の欠如・現場軽視・等々といった大企業病の足枷に煩わされることなく、作り手の思い込みを排して、スピーディーに無駄なく時代の求める商品(モノ・サービス)を作ることが出来ると考えられます。

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