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アップルに学ぶデザインドリブンな発想

 日経電子版の記事【アップル去るデザイナー、世界が驚いたアルミ切削加工】は、デザインドリブンな商品開発、あるいはデザイン経営が、いかに力強くイノベーションを牽引するか、認識を新たにしてくれる素晴らしいリポートだと思います。

 


 まず、記事からデザインドリブンな発想が及ぼした影響の大きさを整理してみると――

▶デザインドリブンな開発

(1)【結論】筐体デザインの自由度が重要!
  ⇨【課題】加工精度が高く設計変更が容易なのは何か?
  ⇨【結論】アルミニウム合金の塊を削り出す切削加工!
  ⇨【課題】プレス加工と比べて、コスト高で加工時間が長いため
       大量生産に向かない。
  ⇨【結論】大量の切削加工機を製造業者に導入して一気に多量の筐体を
       成形すれば良い。

  ⇨【波及効果】工作機械メーカーに特需。
        ⇨モータードライブ装置メーカーに特需。
        ⇨パワーエレクトロニクス業界に特需(金属を削るミルの
         回転速度を高め、切削時間を短くするためのシリコン
         カーバイド製のパワー半導体)。

(2)【結論】加飾において少しでも剥がれる可能性のある塗装は
       使わない。

  ⇨【課題】酸化皮膜(アルマイト)処理という表面処理が適しているが
       ムラなく均一な処理には高い水準が要求される。
  ⇨【結論】ならば妥協せず材料メーカーにアルマイト処理に適した
       アルミニウム合金の開発を依頼し成功


(3)【結論】デザイン面からコネクターレスが好ましい
  ⇨【課題】機器間インターフェースの集約化、データ伝送・映像伝送
       ・給電もワイヤレスに。
  ⇨【結論】まず、集約化の為にType-Cコネクター仕様の標準化を
       主導

  ⇨【今後の課題】金属筐体とコネクターレス(オール無線化)は
          トレードオフの関係。  

 


 こうしてみると、ユーザーに寄り添い、ユーザー目線で、筐体デザイン優先・剥がれる可能性のある塗装の排除・煩わしく見栄えも悪いコネクターの排除といった『デザインドリブン』な開発を主導し、テクノロジーをそれに従わせていく姿勢には、ユーザーに刺さる尖ったプロダクトを生み出し、モノづくりの現場にイノベーション、ディスラプションを巻き起こすパワーがあるのは明らかです。

 そこで貫かれている哲学は、テクノロジーに迎合して目的を手段に合わせるのではなく、先に結論(目的)を定めて、あらゆる困難な課題をも知恵を絞って乗り越えていくパッションではないでしょうか。



#COMEMO #NIKKEI

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