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創作現場の遺伝子組み換え問題

 日経電子版の記事【J-POPやアニメ、AIにお任せ 創作活動を手助け】など、ここへ来て、AIを創作活動に活用する事例が数多く報告されるようになってきています。



 このような報道に接して、最近よく考えるのは、「作者は一体誰なのか?」という素朴な疑問です。例えば――

▶ 創作にAIを活用すると、『作者』は誰かという
 問題が……

① 例えば、AIを使って俳句をいくつか作り、その中の良さそうなものを
 少しアレンジして発表した。その際、AIを使ったことには触れずに、自分
 の名前で発表した……

② 例えば、AIに題材を指定してショートショートの小説を作らせ、文言を
 アレンジして発表した……

③ 例えば、AIと協働でポップスを作詞作曲した……

④ 例えば、AIを使って写真を好みの作風のマンガに変換した。絵はAIに
 お任せだったが、ストーリーは自分が作った……



 このように様々なケースを想定してみると、いくつか問題が浮かび上がってくるのは明らかです――

▶AIを創作に活用する事の問題点

(1)『作者偽称』・・・最も極端な場合は、AIのソリューションを使った
   創作物を自作と偽称する行為。AIで創作できるアプリが普及すると、
   真の作者は誰かという問題が常に付きまとい、クローズアップ
される
   ようになるかも知れない。

(2)『創作丸投げ』・・・創作活動に疲れてしまったり、行き詰って
   しまったりして、AIに創作活動を丸投げしてしまうような行為を
   どう考えるか?例えば、小説の場合、読者は、いつまでも作者の作風
   を踏襲した小説が読めることを喜ぶだろうか?

(3)『創作割合』・・・創作活動におけるAIとの協働が普通の事となった
   世界では、個々の作品のどの部分が作者のオリジナルで、どの部分を
   AIが担ったのか、創作割合を何らかの形で標記すること
が求められる
   ようになるかも知れない。

(4)『作品価値』・・・AIとの『創作割合』によって作品の市場価値には
   差が付くのだろうか?

(5)『創作性』・・・人格を持たないAIが計算によって作ったものを創作と
   呼べるのか、という原理的な問題。

(6)『創作者』・・・例えば上記④のような事例で、この人物をマンガ家と
   呼べるのか?漫画家・作曲家・小説家・画家……様々な創作者の呼称
   が問われる事態となる。



 AIを創作現場に持ち込むことは、非常に興味深い研究課題ではありますが、重大な問題をはらんでいることも明らかです。それは、食品の世界における遺伝子組み換えの問題のごとく、大変重要な研究であると同時に、リスクもはらんでいるのです。
 良薬とも劇薬ともなり得るテクノロジーをコントロールする責任、議論する義務が人間にあることは、核の問題や、第2の核兵器と呼ばれるAI兵器を例にとるまでもなく明らかではないでしょうか。AIを創作に活用する事は、創作というものの根幹にかかわる問題である、と言えそうです。



(追記:AIとアートとの関係については、下記の拙稿でも考察しています。)










   






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