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【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】糖尿病と鍼灸

千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。

今年も12月になり、一年の締めくくりが近づいています。
『よく飲みよく食べ、楽しく過ごした後にはお腹の周りと体重が。。。。』という恒例の時期を迎えましたね。
食べ過ぎ・飲みすぎなどの食生活の乱れは、肥満の原因になるだけでなく、体内の血糖値を高め、将来的には、生活習慣病の一つである、糖尿病の発病要因にもなりえることがあります。

今回は、その『糖尿病』について、症状や原因、治療方法について、西洋医学・東洋医学の両面からみていくことにしましょう。
本文中では、東洋医学における糖尿病についての考え方、糖尿病や血糖値コントロールに対する鍼灸治療によるアプローチについても取り上げます。

では、どうぞ最後までお付き合いください。


1.糖尿病とは

糖尿病は、からだがインスリンを十分に分泌できなかったり、インスリンの働きが悪いために、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなる病気で、
大きく分けて次の2つのタイプがあり、血糖値のあがる原因が異なります。

●1型糖尿病:
何らかの原因で膵臓の細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなります。そのため治療にはインスリン注射が不可欠です。
●2型糖尿病:
いわゆる生活習慣病で、食べすぎや運動不足、肥満、加齢によりインスリンが十分に働かなかったり、インスリンが不足して血糖が上昇します。

どちらのタイプも、インスリンがうまく働かないと、食後の血糖値が下がらなくなって血糖値の高い状態が続くようになります。
その状態のまま放置すると血管や神経、腎臓、目など全身に症状が現れるようになります。

2.糖尿病の症状

糖尿病の初期症状は「三多一少」とも言われます。
●多飲、多尿:
排尿が増加し、のどが渇くため、水分を多くとるようになります。
●多食:
インスリンが働かないとブドウ糖を吸収して体の中で利用することができません。そのため脳はからだに食事をとるように働きかけ、その結果、食事の量が増えていきます。
●体重減少:
ブドウ糖をエネルギーとして利用できない分、代わりに脂質やたんぱく質を利用するようになります。その結果、からだの構成成分が減少し、体重も減っていきます。

こうした症状は糖尿病がかなり進行してから現れるものですが、さらに深刻化してしますと、次のような症状もみられるようになります。

●だるさ、疲労感:
ブドウ糖をエネルギーとして十分に利用できないため、疲れやすかったり、疲れがとれにくく感じるようになります。
●昏睡:
血糖値が異常に高くなった時に意識がなくなることがあります。さらに悪化すると呼吸困難や吐き気、嘔吐、腹痛なども起こります。

3.糖尿病の合併症

糖尿病は、痛みのように、生活に支障が出る自覚症状がほとんど出ないことから、糖尿病、あるいはその予備軍であると知っていながらも、長期にわたって放置されてしまうことがあるようです。
長い間血糖値の高い状態が続くと、手先足先などの細かな血管が障害がを受けて全身にさまざまな病気が生じます。

目の網膜の血管が障害を受ければ糖尿病網膜症、腎臓の血管が障害を受ければ糖尿病性腎症、末梢神経が障害を受ければ糖尿病神経障害となります。
これらは、糖尿病の三大合併症といわれ、いずれも日常生活を普通に送ることができなくなる危険性があります。
さらに重症化した場合には動脈硬化によって心筋梗塞や脳梗塞など死を招く危険性も高まるため、早期の治療と対策が重要なのです。

4.糖尿病になる要因

インスリンの働きが不十分なために様々な症状が起きる糖尿病。
発症には、加齢や体質的な要因、ストレスなども関係していますが、もっとも大きく影響しているのは過食や運動不足などの生活習慣です。
食べるたいときに食べ続け、さらに運動不足になると、身体に貯まったブドウ糖を下げるためにインスリンが過剰に分泌されます。
この状態が長く続くと、インスリンの効果がなくなったり、分泌される量が減ってきてしまい、ますます血糖値が高くなってしまいます。
甘いものを食べすぎる、まとめ食いをする、満腹になるまで食べるといった食生活を送る人、歩くのが面倒で出かけたがらない、近くに行くのも車を使う、階段を使わないといった生活を送る人は、糖尿病になりやすいので注意が必要です。

5.西洋医学によるアプローチ

初期症状がみられにくいため、現代医学では早期発見・早期治療が大切とされています。そのため、会社や自治体の健康診断では糖尿病を見つけるための検査が取り入れられています。

5−1.糖尿病の診断

①尿検査
血糖値が高くなり、からだの中で処理できなくなったブドウ糖が尿に排泄されます。ただし、糖尿病だけが原因とは限らないために、血液検査が行われます。
②血液検査
・血糖値:空腹状態での血液中のブドウ糖の量を測定します。
・ヘモグロビンA1C:hba1cといい、過去2〜3ヵ月の血糖値の状態を測ります。
これら、血糖値とヘモグロビンA1Cがいずれも基準を超えると、糖尿病と診断されます。
③経口ブドウ糖負荷試験
空腹状態で実際にブドウ糖を飲んだあと、からだがそのブドウ糖をどれくらい処理できるかを測定する検査です。

5−2.糖尿病の治療

生活習慣の改善を目指す食事療法と運動療法が基本で、いずれも自己管理が重要です。それでも効果が見られない場合には薬物療法も取り入れられます。

①食事療法
糖尿病治療の基本となる治療法です。一日の必要エネルギー量や栄養バランスを気にしながら食習慣を改善し、血糖値をコントロールできるようにしていきます。
②運動療法
食事療法と並んで基本的な治療法です。運動によってエネルギーを消費し、肥満の解消と抑制を目指します。さらに運動を毎日続けることで、筋肉の活動も増え、インスリンの働きが改善します。
③薬物療法
食事療法や運動療法で血糖値が下がらない場合の治療法で、血糖値を下げる薬剤を服用します。また、インスリンの不足している状態の改善が見込まれない場合には、インスリンの注射が必要になります。

6.鍼灸によるアプローチ

ここまで、糖尿病とは何か、西洋医学的な糖尿病へのアプローチについてみてきました。
次に、東洋医学の手法のひとつである、鍼灸による糖尿病に対するアプローチについてみていきましょう。

「糖尿病は鍼灸で治療できるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、糖尿病を原因とする諸症状に対しても鍼灸によるアプローチが可能です。

一般的な投薬治療を受けている方の中には、『投薬を毎日続けることにストレスを感じる』『薬が効かなくなってきたように感じる』『これ以上、糖尿病が悪化しないように何かしたい』と考えていらっしゃる方も多いかもしれません。

一方、鍼灸治療の場合には「糖尿病の症状を引き起こしている根本の原因」をみつけだし、それを正すことによって、様々な症状を取り除くとともに、糖尿病の症状がおきにくい身体づくりをしていきます。
東洋医学的には、「食事の乱れ、感情の乱れ、性生活の乱れなどが原因となり、身体機能が低下し、体内循環が上手く行われなくなり、糖尿病の様々な症状を発症をする」と考えて、鍼灸治療にあたります。

鍼灸で一度の施術に使うツボは1~3つで、施術時間は休憩含めて1時間程度です。
なお、鍼をする前には、予め、詳しく問診をする必要があり、その症状だけでなく、他にもある様々な身体の症状(愁訴、随伴症状といいます)、その人の体質や体格、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。

その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼灸の施術をします。
そのため、糖尿病の症状や原因が同じでも、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。

7.東洋医学的にみる糖尿病の原因

東洋医学において、糖尿病は『消渇(しょうかつ)』といい、多飲・多食・多尿・身体消瘦、または尿濁・尿に甘味があることなどを特徴とする病証のことをいいます。
多飲・多食・多尿は「三多」症状といい、以下の症状の軽い重いを基準として、『消渇』を次のように三消に分類しています。
①上消 のどが渇き水をたくさん飲む
②中消 消化が早くよく空腹を訴える
③下消 のどが渇き尿が増え固形の脂のようなものが排出される

では次に、どのようにして、これら『消渇』の症状がおこるのか、東洋医学的な原因を探っていくことにします。

7−1.飲食の不摂生

長期にわたり油っこいもの・甘いもの・酒類・味の濃いものを過剰に摂取したことにより、胃腸の働きが低下して消化機能が低下します。
それでも身体はなんとか食べ物を消化しようとすることから、胃腸の働きはオーバーヒートした状態となり体内に余分な熱が溜まり、正常な水分を消耗していくことから、渇きが発生して『消渇』の症状が現れやすくなります。

7−2.過度な精神的な緊張、怒りによるもの

精神的なストレスに長期間さらされ続けると、心身ともに常に緊張した状態でいなければならず、身体の循環停滞により体内に余分な熱が発生して溜まりやすくなります。
イメージとしては、いつもイライラ・カリカリして何かに対して我慢してふんばっている状態のことをいいます。
そして、身体に溜まった余分な熱は、先ほどの飲食の場合と同様、体内の正常な水分を消耗していくことから、渇きが発生して『消渇』の症状が現れやすくなります。

7−3.性生活の乱れによるもの

体質的に身体の潤いが不足しがちな陰虚傾向がある場合に、房事過多(好き放題に過剰な性行為を繰り返し行う)をすると、体内のエネルギーや水分を消耗・損傷してしまうことから、身体が熱をおびやす、ほてりやすくなります。
この熱は、前述の場合と同様、体内の正常な水分を消耗していくことから、渇きが発生して『消渇』の症状が現れやすくなります。

8.糖尿病と臓腑の異常

東洋医学では、糖尿病には、五臓六腑(東洋医学的な内臓)のうち、肺・胃(脾)・腎の三つの臓腑の異常が深く関係します。
次に、各臓腑の異常がどのようにしておこるのか、また糖尿病に対する東洋医学的治療についてみていきます。

8-1.肺の渇き(肺熱津傷)

東洋医学における肺の働きは、西洋医学同様、呼吸を主るほか、口から吸った空気とともに水を全身に送り届ける働きをします。
その肺に熱がこもった状態になると、肺と身体の外をつなぐ口・舌に渇きを生じるようになることから、大量の水分を欲するようになり、頻尿・多尿の症状が出るようになります。
これが上消とよばれる状態であり、漢方や鍼灸では、清熱潤肺・生津止渇という治療方法を用いて肺の熱を冷まし、肺を潤すようにします。

8-2.胃の熱(胃熱熾盛)

東洋医学における胃の働きは、西洋医学同様、消化吸収をつかさどり、口から入った食べ物を受納腐熟して、さらに体の下へ送る働きをしています。
その胃の熱が旺盛となり、消化作用が異常に亢進した状態になると、食事量が増え、食べても食べてもすぐに空腹感を覚えるようになり、東洋医学用語で消穀善飢、という状態になります。
この状態が続くと、胃の腑の経絡(=ツボとツボをつなぐ通路のようなもの)である、陽明経の熱が盛んとなり、津・血(体内の水分)を損傷して、皮膚や筋肉に栄養できなくなり、身体は瘦せ細っていきます。
胃の熱は、胃の内容物の水分を奪い、結果的に、大便が黒く硬くなりがちです。
これが中消とよばれる状態であり、漢方や鍼灸では、清胃瀉火、養陰増液という治療方法を用いて、燥熱が激しければ清熱、陰損及陽であれば陰陽を同時に補うようにします。

8-3.腎の弱り(腎陰虧虚、陰陽両虚)

腎の臓は、水分代謝に深くかかわり、畜尿、排尿を行う働きをします。
腎の臓の弱りにより、蓄尿・排尿のコントロールができなくなると、頻尿・多尿がおこるようになります。
頻尿・多尿により、本来、身体にとって必要な栄養の一部も排出されしまうことから、尿が軟膏状に混濁して、甘い匂いがするようになります。
さらに、身体にとって必要な水分・栄養が排出されてしまい、のどの渇き・唇の乾燥・手掌と足底の熱感・心煩が出やすくなります。
やがては、全身の潤いが不足した状態となり、顔色・耳が黒くなり、足腰が重だるく力が入らなくなり、寒さに敏感になります。
これが下消とよばれる状態であり、漢方や鍼灸では、滋陰固腎という治療方法を用い、体内の潤いを補いつつ腎の弱りを改善させます。

9.まとめ

今回は糖尿病について、症状と原因のメカニズム、西洋医学・東洋医学の両面からのアプローチについて解説をしました。

東洋医学(漢方や鍼灸)においても、糖尿病に対する治療が可能なことはご理解いただけたでしょうか。

なお、糖尿病および血糖値のコントロールを鍼灸治療により行う場合の注意点としては、医師によるインシュリン注射や投薬を自己判断で中止したり減らしたりすることは絶対にしてはいけません。
自己判断による減薬・断薬は、症状の急激な悪化だけでなく、時に生命の危険に及ぶこともありえます。
必ず、訪れた先の鍼灸院の先生に、医師の診断、投薬・養生内容を伝えたうえで、鍼灸治療を受けるようにしましょう。

では、食べすぎ・飲みすぎに気を付けて、楽しい年末年始をお過ごしください!

今回はここまでとなります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!

鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132


画像の出典:https://www.photo-ac.com/

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