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『君の隣の中学生が突然走り出した理由』

だぶんだけど――

・・・

――それは、漠然としていて…
だけど、とても大きな悲しみで…
例えば…そう、あと1時間で世界が終わるって…
それは実際に起こりえる「未来」で…
だけど、それを知っているのは世界中で僕だけで…

どんなに声高に叫んでみても、
誰一人信じてくれない…

そうして、そのまま世界が終わってしまう。

そういう手に負えないほどの
大きな悲しみを背負って…
生まれてきてしまったのような感覚。

こういうの、「宿命」っていうのかな?

一生懸命、今を明るく笑って生きてみるんだけど、
世界の終わりが常に背中に張り付いていて、
氷みたいに冷たい空しさが
どんどん僕の中に降り積もっていく。

いっそ絶望の海に飛び込んで、
世界が終わる前に「じぶん」を終わらせたい、
って気持ちになる。

だけど… まだ、どこかで信じてる。
もしかしたら、
世界を救う方法がどこかにあるんじゃないかって。
まだ1時間あるじゃないかって。
あきらめちゃダメだって。

でも、どうやって?
わからない…

ただ、走り出してみる。
その先に答えがあるかどうかなんてわからない。
でも…
もう一度、
普通に「ただいま」って言える世界にしたいから。
みんなに「おかえり」っていってほしいから。
それだけは、「本当」のことだから。

今、誰にも見えない最果ての世界で、
僕は一人、走り出す。

「未来」を変えるために――

・・・

――ってことを考えて、走り出したんだと思う。
ずっとぶつぶつ言ってたし。

・・・

1時間後、誰にも信じてもらえないまま
世界は滅んだ。

間に合わなかった。

ごめん。

僕だけ生き残って。

「ただいま」「本当」
「おかえり」「未来」

ごめんなさい。


水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。