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書籍レビュー

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本を読んで学んだ知識や、普段思ったことをまとめます。
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今こそビジネスマンは『おぢいさんのランプ』を読むべきかもしれない

『ごんぎつね』『手袋を買いに』で有名な新美南吉の作品。 多くの人は教科書でしか読む機会のない作家だと思う。 (自分もそうだった) 自分はたまたまSNS上でこの作品を知り、読むに至った。 80年前の作品だが、物事の本質を突いた作品なので紹介したい。 この先はネタバレありで書評をしてきたいと思う。 1.未知との遭遇この話は、技術の進歩によって職を失う人間の心情をリアルに描いている。 巳之助(主人公)は、町でランプの存在を知り、行燈の時代が終わることを知る。 文明開花を肌で感

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2024.04)

01.活字本01.人間はどこまで家畜か 現代人の精神構造 https://amzn.asia/d/5hCYqkn タイトルに惹かれて購入。 序盤は面白いのだが、中盤以降が冗長気味だった。 この本で初めて知ったのがイスラエルのキブツで行われた実験。 子どもを一箇所に集めて、集団で育てるというもの。 一見合理的に見えるが、このシステムで育った子達は成長すると情緒不安定な傾向が見られた。 つまり、0歳から預けられる保育園というのは愛着障害のリスクは多少ありそうだ。 02.恋

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2024.03)

01.活字本01.スタープレイヤー https://amzn.asia/d/czy549X 『ヘブンメイカー』の前作。 自分は勘違いして2作目から読んでしまったが、こちらが1作目。 30代無職の女性が異世界へ飛ばされ、好きな願い事を10個叶えてもらう話。 2作目と比較すると願い事の使い方がラフ。 話のスケール感も小競り合いメインでコンパクトだった。 個人的には『ヘブンメイカー』から読むことをオススメする。 02.こちらあみ子 https://amzn.asia/d/

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2024.02)

01.活字本01.ヘブンメイカー 人気ホラー作家の描く異世界モノ。 異世界へ行った者は10個の願いを叶えることができるのだが、話の広げ方が面白い。 なろう系のような設定でありながら、1つ1つのエピソードに厚みを感じた。 宗教問題や民族差別といった要素も上手に組み込んでいると思う。 02.世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~ 少し前に話題になったビジネス本。 タイトルは胡散臭いが、ビジネスにおける美意識の必要性をロジカル

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2024.01)

01.活字本01.スローターハウス5 山田玲司がYou Tubeで絶賛していたSF。 『タイタンの妖女』と同じヴォネガット作品。 古いSFということもあって文章は読みにくい。 そして、時間が頻繁に跳躍するため話がわかりにくい。 称賛すべき点は、トラルファマドール星人という過去と未来を同時に見ることが出来る宇宙人を描いたこと。 この設定は最近のSFの『メッセージ』でも出てきたし、ジョジョ第6部のプッチ神父の目指した世界にも通じるところがある。 02.逡巡の二十秒と悔恨の

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.12)

01.活字本01.正欲 フェチズムがテーマの作品。 無機物に欲情する性癖(水フェチ)に悩む人達が出てくる。 2次元界隈の業の深さを見てきた身としては「そんなに悩むことかな?」と言った感じで共感は出来なかった。 水をテーマにしたのは、過去のエピソードを美しく描く理由もあったと思う。 個人的には、検事が自分のフェチズムに気付くところと、逃げ恥カップルが最後まで互いを信頼するシーンが良かった。 浅井リョウ作品は、現代人の葛藤の言語化がすごく上手いのだが、刺さりすぎるのでメンタル

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.11)

01.活字本01.アマニタ・パンセリナ 中島らものヤク中エッセイ。 今風に言うと『麻薬を色々やってみた』系。 作者はアル中として有名だが、薬物にも造詣が深いことに驚いた。 また、色々な薬物に手を出しながら、シャブだけは否定するところに優しさを感じた。 ペヨーテ(幻覚剤)の為に買ったサボテンに愛着を持ってしまい、切るのに躊躇する所も良い。 アルコール耐性がない人がヤク中になるそうなので、下戸の自分は気をつけたい。 02.ツインスター・サイクロン・ランナウェイ3 百合SF

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.10)

01.活字本01.ツインスター・サイクロン・ランナウェイ(2) kindle unlimited無料。3巻からは931円。 濃厚SF百合マシマシ。 冒頭からヒロイン?の元カノ(クレイジーサイコレズ)が登場し、ドロドロの展開に突入して驚いた。 ベテランのSF作家でありながら、最近の作品も研究しているのはホント偉いと思う。 ガンダム『水星の魔女』でヒロイン同士の絡みが物足りなかった人にはオススメ。 02.奇書の世界史2 歴史を動かす“もっとヤバい書物”の物語 1作目と比

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.09)

01.活字本01.トキオウィルス 都市伝説をまとめた短編集。 SFのあとがきで紹介されていたのを読んで購入。(伴名練) 人から聞いた噂という形で語られる。 1つの話が数ページしかないため、スキマ時間に読めるのが良い。 個人的には『祈りの箱』という出稼ぎ外国人を救うコインロッカーの話が良かった。 僅かなお金でも人の人生を変えるきっかけになるのは良い。 02.はぐれ宮司の 事故物件 お祓い事件簿 1500件超の現場を浄化! 事故物件を祓う宮司の事件簿。 心霊体験を中心に活

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.08)

01.書籍 01.推し、燃ゆ ★★★☆☆ 電子書籍で安くなったので購入。 (以前は1,000円以上) 推しというテーマで芥川賞を受賞した作品。 文章は一文が長くてやや読みにくいが、内面を掘り下げた描写が上手かった。 主人公はADHD(注意欠如・多動症)っぽいところもあり、飲食店でマルチタスクが出来ないところはリアリティがあった。 また、不向きながらも推しの為にバイトを頑張る姿は、信仰のために身を粉にする聖職者に近いものを感じた。 日本人は神様の代わりにアイドルを崇拝している

【書評】文学性高めの短編マンガ

Discordでオススメされていた短編マンガのリンク集。 人に勧めたいのにタイトルを忘れることがあるので、忘備録として残しておきたい。 ほとんどスペリオール新人読切なのだが、どの作品も私小説のようで胸に刺さりまくった。 若い作家が繊細な感性を作品として表現しているのが良い。 読むときはメンタルが健全な時がオススメ。 病んでる人は読んじゃダメ。 1.わたしひとりの部屋/udn発達障害っぽい子が主人公。 (遅刻の多さや計画性のなさとか) ネットゲームが趣味で、承認欲求をゲーム

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.06)

01.書籍01.プロジェクトヘイルメアリー 火星でのんびり農業ライフをする『オデッセイ』の作者の新作。 地球のピンチに1人の科学教師が立ち向かうというスケールの大きい話。 久しぶりの上下巻構成だったので、読むのに時間がかかった。 特に上巻の終盤は、状況が脳内で想像しづらくて苦労した。 下巻まで行けばスラスラ進むのだが、SF初心者には翻訳文のハードルが高いと思う。 主人公の相棒が大変かわいい存在なのだが、ネタバレになるので語れないのが残念。 登場人物も意外と少ないので読みやす

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.05)

01.書籍01.ゾンビ3.0 国産ゾンビ小説という珍しいジャンル。 世界中が同時多発的にゾンビパンデミックに襲われた世界。 ただし、舞台は予防感染研究所内を中心に展開される。 ゾンビというとB級映画の代名詞のような存在だが、この作品は感染症に重点を置いており、科学的な側面が強かった。 他の方のレビューにも書かれているが、日本版『ワールド・ウォーZ』と呼べると思う。 映像化向きなので、是非とも邦画でお願いしたい。 (日韓同時刊行なので、韓国の方が上手く映画化しそうだけど)

中小企業・勤続10年目の企業分析 Part2

勤続10年目で社内が内戦状態に突入したので、記録用に残しておく。 現在、社内改革に躍起になった上層部によって現場の混乱は続いている。 最近起きたビックイベントは、事業部制の導入である。 本来は大企業で、本社部門の負担を減らすのが目的の制度なのだが、150人規模の会社で実施する意図は謎である。 これによって、小さい組織の強みであるスピード感と連携力は見事に失われた。 ゼロ戦に重武装を積んで機動力を失った感じである。 さらに、事業部化後のルール作りは自分たちで考えるという丸投