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【旅エッセイ67】曇り空のカモメ

 アクアラインを渡って東京から千葉へ行った時のこと。

 途中、パーキングエリアの海ほたるに立ち寄った。空は曇りで、今にも雨が降りそうだった。

 晴れていれば展望デッキから東京湾の様子がキレイに眺められたのだろうけど、目の前に広がるのは灰色の雲と海。カメラを向けたけれど海の写真は撮らなかった。

 天気ばかりはどうにもならない。遠出する日に限って雨が降る時もあるし、キレイな景色が見たい時に曇り空の時もある。昔は「なんでこんな時に限って雨が!」とか、そう思って自分の不運を嘆いていた。大人になって色々な景色を見て思うのは、曇りには曇りの美しさ、雨の日には雨の美しさがある。 

 あの日は手すりに停まるカモメが、冷たい海風に耐えていた。

 彼(か、彼女かはわからないけれど)は何を想って海を眺めているのだろうか。鳥だから何も考えていないのだろうけど。私の目には、海風に吹かれる彼の目が何かを想っているように見えた。

 だから海の代わりに、東京湾を眺めるカモメの写真を一枚撮った。


また新しい山に登ります。