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「明智光秀のありふれた日常」一章

本能寺の変の前後数日間を、明智光秀の娘婿・明智秀満の視点で描きました。

現代語で書かれたライト文芸寄りの歴史小説です。

昔も今も、みんな人間関係で悩んでた。

#創作大賞2023 #オールカテゴリ部門

戦国時代が英雄の時代だったと思っていたいのかもしれないけどね、立派な英雄がたくさんいたなら百年も殺し合いが続くわけないんだから、そりゃどいつもこいつも独善的で被害者意識だけ強いろくでもないやつばっかりだったよ、今と同じで。
なんだか納得いかないような顔をしているね。いいだろう、時間はたっぷりあるんだ、ゆっくり話してやろうじゃないか。

***

まっすぐワタシの目を見て
「信長様を殺す算段がついた」
と光秀様が穏やかにつぶやいた。

殺す相手を様づけで呼ぶのはこの人の根っからのマジメさのあらわれなのか、決意の曖昧さを意味しているのか。

ワタシは光秀様と視線をあわせたままとりあえず
「ずいぶん唐突ですね」
と返してみた。

それでも光秀様はワタシの目を見たまま黙っているものだから、居心地が悪くてつい質問してしまう。
「信長様を殺したとして、その後どうするつもりなのですか?」

光秀様はやっと視線をそらして少し考えてから静かにいった。
「それは考えもしなかった。軍勢を動かして本能寺を囲むならどう動くべきか、万が一にも討ちもらすことがないようあらゆる状況を想定して頭の中でシミュレーションしていたが、その先のことなど考えてなかったな」

ここ数日なにやら深刻そうな顔で考えこんでいると思ったら、ずっと信長を殺す策をめぐらせていたのか。
この人のことだから、さぞ細かいところまで緻密な計画を練っていたのだろう。
それなのにまだ信長といわず信長様と呼ぶのはいったいどういう感覚なのか。

「殺した後のことを考えてないというのは、殺すのが手段ではなく目的だということですね?」

ワタシの言葉に光秀様が不思議そうに小首をかしげて
「どういう意味だ?」
と問い返した。

「信長を殺して天下を取りたい、というなら殺すのは天下を取るための手段です。ただそれなら当然、殺した後のことを考えるはずでしょう。殺した後のことを考えてないというならば、何かのために殺したいのではなくただ殺したい、殺すこと自体が目的だとなるでしょう」

「そんな考え方もあるか。やっぱり秀満はおもしろいね」
光秀様は楽しそうに笑っている。
知らない人が見たらまさか人を殺す相談をしているとは思わないだろう。

ワタシは現実感を取り戻すために質問を重ねた。
「いったいなぜ急に信長様を殺す気になったのです?」
こっちは信長に様をつけたりつけなかったりしてみるが光秀様は特に気にする様子もなく静かにこたえた。


「私はこれまで誰よりも信長様に尽くしてきた。しかしそれはそれが仕事だからであってあんな気分屋の威張り屋に尽くしたくて尽くしてたわけじゃない。そりゃ誰だってそうだろ。忠誠心なんてのはあくまで自分自身のためのものであって、どんなやつであれあいつに従うしかないとなれば忠誠を尽くすし、今はあんなやつに忠誠を尽くしてる場合じゃないってなったらその時はその時だ」

「信長様はわずかな供しかつけずに京に滞在しているのですから討ち取るのはたやすいでしょう。周辺に大規模な軍勢もいませんし。すでに天下の主になったつもりですっかり気が大きくなって配下の忠誠を永久不変のものだと勘違いするようになったのは信長の慢心ですから、そこを突くのは何も間違えていません。スキを見せたら殺されるのは戦国の世の常ですし。しかし殺した後のことを考えずにただ殺すというのは、いささか軽はずみではないでしょうか」

「そうは言うがな、こんなチャンスはめったにない。それにこういうチャンスがいつ訪れるかあらかじめ知る方法などないのだから、事前に準備をしたり根回しをしたりなんてことは不可能だろう」

「それはその通りなのですが、ここ数日の光秀様のご思案に殺した後のことがまったくなかったというのは……殺せるから殺すのではなくやはり殺したいから殺すのだとしか思えないのですが」

「信長様の配下で信長様を殺したいと思ったことがないやつなどいないさ」吐き捨てるようにつぶやかれた言葉にどう返してよいか分からない。

広間に二人っきりだからワタシが黙ると静寂が訪れてしまう。
何か言わねばと言葉を探していると、光秀様がゆっくりと語りだした。

「戦国の世で人を殺すのに理由などいらんだろうが、あえて理由を探せというならいくらでもある。まず信長様は乱世を勝ち抜く特異なバイタリティーの持ち主ではあるが、平和な世を治める能力とか器量とかは持ちあわせていない。戦のない世になって商業が盛んになれば自分のフトコロに入る税収が増すってくらいにしか考えてないのだ。どう統治してどんな社会を築いていくかっていうビジョンを持ってないどころかそんなものが必要だとすら分かってない。ただ最高権力者として気ままに威張っていればいいとしか思ってないんだ。今も贔屓の部下とそれ以外には扱いが違うだろ。みんなを同じルールで統治するって発想すらない。気に入った部下を重用したかと思うと急に忘れ切ったみたいに放置したりもする。何か深い考えがあってああいうことをやっているのかと思って見ていたが、どうやらあれは本当にただ忘れてるんだよ。興味を失うと視界に入らなくなるんだろうな。林秀貞がほとんど言いがかりみたいな理由で追放されただろ。いま自分の役に立つやつは使えるだけ使って、その役もういらないんだってなったら簡単に使い捨てたりほったらかしたりするんだ。ということはいま重用されてる我々も天下を統一してしまえば用済みになるってことだ。使い捨てにされて、信長様が築く無秩序な社会に裸同然で放り出されるんだぞ。想像するだけでゾッとするだろ」

「たしかに林秀貞と佐久間信盛が追放されたのにはワタシも驚きました。しかし今おっしゃったのは信長を殺す大義名分であって理由ではありません。ワタシがききたいのは光秀様が信長を殺したい理由なのです。チャンスさえあれば殺してやるぞと思ったきっかけというか。信長様の配下で信長様を殺したいと思ったことがないやつなどいないとおっしゃったその部分を詳しく聞かせてほしいのです」

「林秀貞と佐久間信盛を一緒にするのは違うな。林秀貞に落ち度はなかったが、佐久間信盛にはいろいろ落ち度があっただろ」
光秀様は私の質問ではなく前段の部分に言葉を返す。
「対本願寺戦の総司令官だったのにただ膠着こうちゃくさせるばかりで何もしなかったし、徳川の援軍に派遣された時も武田の騎馬軍団にビビって戦わずに逃げ帰ってくるし。領地を加増されても金ばっかりためて兵を増やそうとしないし。信長様もはっきりそう言ったんだ。その上で、行いを改めるか出ていくかどっちか選べって。信長様はやり直すチャンスを与えたつもりだったろうに、逃げるように出て行った。しかもあいつ、明智光秀の讒言ざんげんのせいでもう織田家にはいられないってあちこちで言いふらしてから出ていきやがった。佐久間信盛のどこがダメか信長様があれだけはっきり示したのに、讒言が原因なわけないだろ。信長様があげつらったのはぜんぶただの事実なんだから。それをムリヤリ私のせいにして。あんまりバカバカしくて反論する必要もないと思って放置してたら、織田家中でも佐久間信盛は光秀の讒言で放逐されたってことになってしまって、本気でそう信じてるやつがいっぱいいるんだ。どいつもこいつもアホみたいに信じたいことだけ信じやがって」

「それだけ光秀様が出世したってことです。優秀な人間がのし上がると嫉妬されるんですよ」
ワタシがなだめるためにいった言葉が逆に光秀様に火をつけた。

「そうなんだ。あいつら自分の能力が劣っていると認めたくないものだから、光秀はズルいことをして出世したに決まってるって、そういうストーリーを捏造せずにはいられないんだ。バカらしい。同じ境遇の秀吉はピエロを演じて嫉妬されないように立ち振る舞うがな、私にはあんな恥知らずな生き方はできんよ。結局どこかでいつかこういう日が来ると思ってたんだ。信長様のもとで出世するのも信長様をひねり殺すのも、どっちも明智光秀なのさ。あいつらがやりたくてもできないことをぜんぶやってのけるのがこの私なんだ」

「つまり、信長様を殺したいというだけでなく、何もかもぶち壊してやりたいってことですか。しかもその後のことは考えてないと。光秀様、それは自暴自棄というやつのです。いろいろバカバカしくなってしまうのは分からないでもないですが、やはりワタシは賛成しかねます」
光秀様は小さくため息をついて黙る。

ワタシは続けていった。
「それに同僚が気に食わないっていうなら、信長様を殺した後にどうやってあいつらを追い詰めて屈服させてやろうかって考えるはずでしょう。そこを考えてないということは、本当の理由は別にあるんじゃないですか」

いつものことだがこの人はなかなか本心をあらわさない。
あるいは自分でも自分の本心がどこにあるか分からないタイプなのかもしれない。
現実的な仕事ぶりの人が自らの心を客観的に把握しているとはかぎらない。
世の中、自分のことだけ分かっていない人は案外多い。
光秀様が黙っているからワタシはさらに言葉を重ねた。

「光秀様がすべてぶち壊してやりたくなる理由はきっとひとつではないのでしょう。今あげられたのも理由の一部ではあるのでしょうが、いちばん大きな理由は別にあるのではないですか?」

「あいつら私がツマキ殿を差し出して、信長様に女をあてがって出世したって陰口たたいてやがるんだ。ツマキ殿が乳母として織田家に入ったのは私が信長様に仕えるよりずっと前なんだから私が差し出したわけないだろうに。勝手に時系列入れ替えやがって」ワタシの質問を無視してさっきの話の続きをしている。とにかく核心に触れさせたくないらしい。「そもそも信長様は子作りのために女を抱くことはあるが、女が好きなわけではないからな。だいたい、信長様に息子や弟を差し出して出世しようとしてるやつらがどの口でいうんだ。あいつらは自分の立ち位置からしかものを考えられないバカだから、何が事実かなんて考えもせずに信じたい話だけを信じて、とにかく私が実力でのし上がったと認めたくないだけなんだ」

光秀様の言うことは正しいのだが、光秀様の出世の陰にツマキ殿の存在があったのも事実ではある。
ツマキ殿というのは光秀様の奥方の妹で、美濃の妻木家の出身と称しているからツマキ殿と呼ばれていた。

最初は乳母として織田家に入ったが、あまりにもよく働くものだからそのまま奥で働くようになっていつのまにか奥のことを取り仕切るようになっていた。
そのうち奥まわりのことにとどまらず信長の相談相手をつとめるようにもなった。
信長の側室たちもツマキ殿には一目置いていたというし信長の小姓たちもツマキ殿には頭が上がらなかったという。そしてそのツマキ殿は昨年、突然倒れてそのまま亡くなってしまった。

「ツマキ殿が亡くなったのは残念でした」
ワタシの言葉に光秀様は小さくため息をついて力なく同意した。

「まったくだ。信長様からのあたりがキツくなったのはツマキ殿が逝ってしまった頃からだしなぁ。あそこから信長様に使い捨てられるってのが急速に現実味を帯びてきたんだ。まわりは私の陰口を言うやつばっかりで味方なんてほとんどいないし。このままの流れにまかせてたら、遅かれ早かれ窮地に追い込まれるのは目に見えてるんだ。そうなる前に流れを変えるチャンスを見つけたなら、やるしかない。我々は、明智光秀とその軍団は、実はとっくに追い詰められているんだぞ」

たしかに光秀様の言にも一理ある。今の延長線上を流れにまかせて生きていたら、おそらくおぞましい未来しか待っていない。
やっと話が核心に近づいたなと思いながらワタシは大きく踏み込んでみた。

「つまり蘭丸を殺したいということですね」

「それもある」
即答するのに部分的にしか肯定しようとしない。
我が主は本当に難しい人だ。

「先日、那波直治の件で安土に行かれたのですよね。稲葉一鉄のところから那波直治を引き抜いたと稲葉一鉄が訴えたのを信長様が仲裁してくださったと。その場に蘭丸も同席していたのですか? あの直後からですよね、光秀様が難しい顔で何やら思案にふけり出したのは」

「蘭丸は同席したが、それはあんまり関係ない。それよりも信長様が本能寺に小姓しか連れずに滞在するという話を聞いてな。刀を帯びているとはいえ美少年が三十人だけで完全武装の兵は一人もいないんだぞ。そりゃ誘惑を感じるだろ。でな、先に上洛して妙覚寺にいる信忠様の方を探らせたんだが、こっちも兵はたったの五百ほどだというんだ。そりゃ考えるだろ、どうやって殺すのが確実かって。何か見落としはないかと徹底的に検証してみたが、どう考えても落とし穴はないんだ。間違いなく殺せる」

ワタシはあえて光秀様の発言をふまえずに一方的に言ってみた。
「ツマキ殿がなくなって信長様から光秀様へのえこひいきがなくなったというだけなら不自然ではないのです。しかしツマキ殿が亡くなった直後から光秀様へのあたりがキツくなるというのは、ツマキ殿がいないのをいいことに誰かが信長様に良からぬことを吹き込んでいるということでしょう。ではその誰かとは誰か、考えるまでもなく森蘭丸です」

光秀様は感情のない表情で黙っている。
ワタシは続けた。
「信長様に小姓はたくさんいますがどいつもこいつも人形みたいな中身からっぽの美少年ばかりです。中身が生々しい人間でいやらしい嫌がらせをするような陰湿な知能を持ちあわせているのは蘭丸だけですから。それは光秀様も分かっているはずなのに、執拗に蘭丸の話を避けるのはいったいどういう機嫌なのですか」

「まったく、秀満は見て見ぬふりをしてくれないね」
光秀様はそれだけつぶやいて言葉を切るが、こちらが黙って続きを待っているとゆっくりと語りだした。

「実はツマキ殿が亡くなった少し後、信長様を待つ時間があって蘭丸と二人きりで話す機会があったんだ。あいつだしぬけに『ツマキ殿と光秀殿は直接に血が繋がっているわけではないのに、ずいぶん気が合うというか似たところがあったのでしょうね』と言ってきやがってな。言葉自体はなんという内容ではないのだけど、言外に嫌悪とか侮蔑とかをわざと匂わせるような言い方をしやがるんだ。なんというか私はピンときたんだよ。要は蘭丸の兄の森長可が稲葉一鉄とか肥田忠政とか、そのあたりと集まっては私のことを悪く言ってるわけだ。蘭丸はそれを聞いているものだから、明智光秀というのはみんなに侮られているくだらない人物だっていう前提から始めやがるんだ。私のことなど本当は何も知らないくせに、身近な内輪での評判から出発してそのイメージの上に目の前の明智光秀を置いて、それで人物像を掴んだつもりでいやがる。私だけでなくツマキ殿のことも軽蔑したがってるのがありありと伝わってきてな。たぶん想像するに、ツマキ殿は誰にでも分け隔てのない人だったから、蘭丸にも他の小姓と同じように接してたんだろうな。でも信長様に寵愛されてる蘭丸にとっては特別扱いされるのがあたりまえだから、公平に扱われるだけで不当に貶められてるような気になったんだろう。主君でもなんでもない女に特権を剥奪されたって屈辱みたいに感じてたんだ。だから弟の坊丸と力丸と三人でツマキ殿の悪口ばかり言ってた。で、蘭丸が言ってるツマキ殿の悪口を兄の森長可が持って帰ってだな、肥田と稲葉が私の悪口言ってる場で融合するんだろうな。それで、『光秀とツマキ殿が結託してあることないこと信長様に吹き込んでる』ってなるんだよ。結局どいつもこいつも佐久間信盛と似たようなことを言ってるだけで、自分への評価が低いのは自分の能力が低いからだと認めたくないだけなんだ。屈辱的な出来事とか絶望的な現実とかに直面すると人は誰でも無意識に記憶を塗り替えるだろ。自分の能力の限界で結果的にこうなったと認めるかわりに、あいつのせいでこうなったと思いこむんだ。記憶を塗り替える作業の一環として誰かの讒言のせいで自分は正当に評価されてないんだって思いこもうとして、その誰かにあてはめやすい成り上がりの新参者をズルいやつだってことにしておきたいだけなんだ」

あいつのせいでこうなったと思いこみたがっている人たちが光秀様を『あいつ』に選んでしまう理由は成り上がりの新参者だからというだけではない。
きっと光秀様には生きているだけで他人の心の柔らかい部分を刺激してしまう何かがあるのだろう、と思いつつも口には出さずに聞き役に徹する。

「あいつらはもう、どこまでが事実でどこからが誰かが想像で言い出したことなのかって区別もつかなくなってるんだろうな。蘭丸も自分が作った悪口がグルっと回って還ってきただけなのに、もうそれが客観的事実と区別がつかなくなってしまって『やっぱりツマキ殿は評判の悪い人なんだ』って納得してやがるんだ。そういう気配を感じてなんだか無性に腹が立ってな、わざとすっとぼけて『私と違ってツマキ殿は悪く言われるような人ではなかったはずですが』って言ってやったんだ。そしたらうかつにも『それはあなたにとっては、ということではないですか』と返すものだから言ってやった。『たしかに私のまわりの評判がすべて正しいわけではないでしょうね。もちろんあなたの周りの評判がすべて正しいわけでもないでしょうが』って。そしたら黙りこんだんだけどな。なんとも憎らしげな目で私を見るものだからイラついて、つい『私は陰口を言う者と言われる者なら言う側が劣ると思いますが、あなたは陰口を言われる側を侮るのですね』って追い打ちをかけてしまったんだ。信長様からのあたりが急にキツくなったのはその直後からでな。きっとあいつが全力であることないこと吹き込んでやがるんだ。あいつらは勝手に『光秀とツマキ殿が結託して自分たちに不利なウソを信長様に吹き込んでた』って思いこんでるから、自分たちには同じことをやり返す権利があるはずだって信じてるんだろう。まぁ今にして思えば私も大人げなかったと思うんだが、今さら『キツい言い方して悪かったな』なんて言っても水に流してくれるようなさっぱりした気象は持ってないだろうし。きっとこの先、信長様が私を追放するまで蘭丸がその手を緩めることはないと思うんだ」

「ほとんど光秀様の想像なのに、たぶんだいたいその通りなんだろうなって、なんか不思議な説得力のある話ですね」

ワタシが納得してうなずくと光秀様は申し訳なさそうにいった。

「負けたふりしてあいつのプライドを満たしておいてやればこんなことにはならなかったんだ。とっくに窮地に追い込まれてるなんて言ったけど、そうなったのは私の責任だ」

「実際、古参の武将達まで蘭丸の機嫌をとろうと必死になってますけどね。あんな思いあがったガキにへりくだってみせても、いずれどこかで限界が来るのは間違いありません。ましてやむこうは最初からツマキ殿を憎んでてその義兄の光秀様を侮りたがってるんですから、遅かれ早かれこういう状況になったんですよ。そもそもあんな性根のひん曲がったガキを、顔がカワイイからって理由だけで偏愛して重用する信長が悪いんです。そう思うとあれですね、とりあえず信長と蘭丸をまとめてぶっ殺すってのが正しい選択なのかもしれませんね。なんか反対する理由が見あたらなくなってきました」

「言っても伝わらない話なんじゃないかと思ってたから、分かってくれて嬉しいよ」

光秀様はホッとした様子でやっとリラックスした顔を見せてくれた。


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