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【学校】先生の話を信じてはいけない。

私は中学校で社会科の教員をしています。
授業などで、ここぞという時に、いつも生徒に対して真剣に言っていることがあります。それは「私の話を信じてはいけない」ということです。

年に数回ですが、これをめちゃくちゃ本気で真剣に生徒たちに語ります。生徒たちは、ふざけずに、いつも真剣に聞いてくれます。

1.生徒に伝える話

中学生には以下のような感じで話をして伝えています。
「私の話を信じてはいけない。学校の先生の言うことを、なんでもすぐに信じる人になってはいけない。先生の話を疑って下さい。
 それはなぜだと思う?
それは、世の中に正解はないからです。私が言っていることが、本当に正しいか、わからないです。だから、あなたは私の話をそのまま信じるのではなくて、まず疑って下さい。そして自分で考える力をつけて下さい。「疑う力」「疑問を持つ力」「自分で考える力」が大切なんです。

 だってさ、例えばどうすれば、今のウクライナの戦争が終わるの?、どのようにすれば日本の経済がもっと良くなるの?、それを世の中の偉い人たちがいろいろ考えても、うまくいってないんです。つまり世の中に、正解なんてないんですよ。だから学校の先生の話や、新聞、テレビ、ネットの話をそのまま信じるのではなくて、疑って、自分でちゃんと考えるんです。

 勘違いしないで欲しいのですが、だから先生の話にすべて反発しろ、言うことを聞くな、と言っているわけではないです。私も反発されても困るから、まず一度は先生の話を素直に「受け取って欲しい」です。
 でもそれはあくまで、学校の先生としての私の一つの考えに過ぎないです。だから一度素直に受け取ったあと、自分で調べたり、考えて、自分の考えと違う、と思えばいいんです。
 私の言うことを、「ああ、そういう考え方もあるんだな」と一度素直に受け取って、後から「でも自分は違うと思うな」と思うことが大切なんです。

例えば、学校では、言うことを聞け、と言われるよね。
だけど将来、社会で働いたら、「言われたことだけしかできない人は使えない」って言われます。つまり、仕事においては、自分の頭で考えて工夫していく力が、すごく大切なんです。先生の言うことを聞けるだけでは、まったくダメなんです。

 だから、自分で考えて、本当かな?と「疑う力」が必要なんです。まず学校を疑う、学校の先生の話を疑うんです。だから私の話を信じてはいけないです。
 でも学校は、みんなに従って欲しいから、良かれと思って様々なことを要求します。勉強しろ、提出物を出せ、こうした方が良い、ああした方が良い、それがあなたの将来の幸せに繋がる、などと言います。私も言います。でもそれが本当かは、誰にもわからないです。みんな良い子だから、先生が言ったことが正しいと思ってしまうことがあるかもしれない。でもそれは違う。先生の言うことが正しいわけではない。あくまで一つの考え方です。だからあなたは、先生の言うことをそのまま信じるのではなくて、疑わないといけない。それがとても大切なことだと思います。
 だからまず、いま私が言った話を、本当かな?と疑うんだぞ。すぐ信じちゃだめだぞ。笑 」

私が生徒にする話

2.目的

こんな感じで、生徒たちに話をしています。
 私は、生徒が大人になった時、上から言われたことを疑問を持たずに、そのまま信じるような人になって欲しくありません。役職が上の人や権力権威のある人の話を、そのままうのみにする人になってはいけないと考えています。

にも拘わらず、小中学校の学校教育は、意図せず、無意識的に、「言うことを聞く、素直な良い子」を積極的に育てていると思います。もちろん学校を運営する上では、素直で良い子が多いに越したことはありませんし、良い点も多くあります。しかし、これからの日本社会にとって、本当にそれでいいのか?学校教育として本当に良いのか?と心の中で疑問を持っています。

 世の中では、盛んに「正解のない時代」「VUCA(予測困難)の時代」だと言われています。世の中や社会全体がそのようになっている時に、学校教育が量産している人間が、それに対応できる力を持っているのか、教員自身がもっと自覚的に考えていく必要があると思います。

 だからこそ、私は上記のような考えを、真剣にきちんと生徒に説明をします。きれいごとや建前だけでなく、本音を言います。一人の大人の本気の意見を聞いて、何も考えない生徒はいません。私の話を真剣に聞いて、それぞれが何かしら考えています。それでいいのです。

 私のこのような話は、生徒たちからは、一定の納得感があるようで、好評のようです。
 また、ぶっちゃけ教育現場で、「先生の話を信じるな」なんて本気で言う教員はほとんどいないと思うので、私の話は生徒たちにとっては、新鮮で、人間として対等に見てくれているという印象を持つようです。
 「私を信じるな」と言うことによって、私は教員として、逆に生徒から信頼を得ている気がします。

3.最後に

 最近の生徒や子供たちを見ていると、本当に素直で、良い子が多いです。先生の言うことを良く聞き、疑うことを知らず、優しい子たちばかりです。感覚的に、昔よりもそのような生徒が増えているような気がします。
 しかし、本当にそれで良いのか、自問自答しています。

 私にできることは、せめて、物事を疑う力、疑問を持つ力、自分で考える力を、生徒が少しでも持てるようにすることだと考えています。そのため、今回はまず生徒にとって権威である教員を「疑ってみる」ことを、一つの方法として紹介しました。(もちろんこれは、学校や教員を信頼しない、のとは全く別のお話です。)

生徒が上記の力をつけることこで、これからの日本社会を良くしていけると、私は考えています。




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