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「そして人生は続く……」──漫画家あすなひろしと小沢健二のことなど
「あすなひろし」という名をご存知ですか?
漫画家さんです。
ついこの間まで、知りませんでした。
知ったきっかけは、ぼくの作品『Buffering-errors in the youth』に対してのコメントだ。
きむらしんいちさんよりこんなコメントを頂いた。
てな経緯で、あすなひろしという名を知り、マンガを数冊購入したわけだ。
ネットでちょろっと調べてみたところ、
2001年にお亡くなりなってい
連載青春小説『Buffering-errors in the youth』(1/7)
(全7話)
第一章 予備校、あるいはオランピア
これ、ちょっとした発見だと思う。
男子と女子のあいさつには独特な感じがあって、男子どうしや女子どうしのとはちょっと違ったニュアンスがあるってこと。
たとえば、ぼくと幼馴染のスミレの場合はこんなふう。
まずタイクツそうに机に突っ伏す!――タイクツっていうのが重要なポイント。その加減は人それぞれ時と場合による。今までで、ぼくのオスカー級のやつは
連載青春小説『Buffering-errors in the youth』(2/7)
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第二章 記憶
スミレとぼくは小さい頃から近所で、母親どうし知り合いだった。幼稚園も同じ。よく一緒に通園した。あるとき、ぼくが幼稚園の前の道から、春の訪れを告げるぺしゃんこの蛙の死体――春になると蛙の死体を見かけることが多いような気がしない? 冬眠から覚めてすぐの蛙は、きっとまだ寝ぼけていて車に轢かれやすいからなんじゃないかと仮説を立てているのだけど、だからぺしゃんこの蛙を見る
連載青春小説『Buffering-errors in the youth』(3/7)
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第三章 草上の昼食
しばらくしたある日。
午前の授業が終わり、いつものようにコンビニの弁当を買いに行って戻ってくると、黒板の前にスミレがいる。小鹿みたいにきょろきょろしていた。ぼくに用とは思えなかったし、妙に意識し始めていたこともあって、自分から近寄って声をかける勇気はないくせに話はしたかったから、あわよくば発見されるようにと意図的に目立つ感じで、いかにも
連載青春小説『Buffering-errors in the youth』(4/7)
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第一章 第二章 第三章
第四章 死せる男
それは何の虫の知らせもなくやって来た。どうしてこんなことになっているのか。うまく飲み込めない。
こんなクソ暑いのに、みんなおそろいで黒い服を着て、うつむいている。ぼくは数ヶ月ぶりに高校の制服をひっぱり出した。胸から空気が抜けていくような感じがして苦しい。すすり泣きが聞こえる。みんな親しい誰かが死んでしまったみたいに悲し
連載青春小説『Buffering-errors in the youth』(5/7)
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第一章 第二章 第三章 第四章
第五章 夜
しばらく雨が続いた。
家を打つ雨粒の音が遠近感に欠けたデジタル音のように部屋に響く。外を確認するまでもなく雨だとわかると、毎朝ほっとしてしまった。カーテンを開けると外は牛乳を飲んだ後のグラスみたいに白く霞んでいた。
この雨は今のぼくにとって幸いだった。模試の結果は散々だったし、ケンジ叔父さんの葬式以来胸に鈍い痛
連載青春小説『Buffering-errors in the youth』(6/7)
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第一章 第二章 第三章 第四章 第五章
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第六章 海辺にて
家族の話では、最近のぼくは覇気がなく顔色も悪かったので、倒れたときはそれなりに心配してくれたようだった。結局外傷はこぶ一つで、だいぶ眠れるようにもなって、顔色は良くなってきてたから、あっという間にみんなの気がかりは姉ちゃんの結婚式へと戻り
連載青春小説『Buffering-errors in the youth』(7/7)
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第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 第六章
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第七章 バルコニー
結局、遅れを取り戻すために猛勉強して、姉ちゃんの結婚式ではうかつにもセンチメンタルになって、アキオが男でよかったよ、と娘の結婚式に疲れきった親の言葉に同意し、そしてまたさらに受験勉強に奮起して見事第一志望に合格、とは世の中は甘くなくて、なんとかすべり止めにひっかかる