2019年7月の記事一覧
月の砂漠のかぐや姫 第51話
自分の周囲に何もなかったところから、両側が高い面で区切られた狭間の中に急に飛び込んだせいか、何かが頭をぐっと押さえてくるような感じが、羽磋にはしてきました。
ゴビの荒地と地平線で結びついていた空は、頭上と前方にしか見えなくなってしまいました。
馬を走らせながら左右の壁を見上げると、北側の岩壁はほとんどまっすぐに立っていて、人が隠れる場所は無いように思えましたし、壁の上で待ち伏せをしてその壁を
月の砂漠のかぐや姫 第50話
「空風(ソラカゼ)っていうのか、あのオオノスリ。しかし、上手く操っているよな、小苑(ショウエン)。いったいどうやってるんだ」
「へへっ、空風は、雛の時から俺が育てた相棒っすから。指笛の音で指示を伝えることが出来るんす。長音一声が来い、二声が進め、探せ。単音一声が太陽の方角、二声が太陽に向かって右、三声が反対、四声が左、などなどって寸法っす。もちろん俺の指笛にしか反応しないっすけど」
「ははぁ、だか
月の砂漠のかぐや姫 第46話
大伴が使っていた短剣は、長い年月を彼と過ごしたことが一目でわかる、使い込まれたものでした。そのような愛刀を羽磋に差し出すという行為自体が、この羽磋の肸頓(キドン)族への旅立ちの重大さや困難さを示しているのでした。
「わかりました。必ず、阿部殿にお会いします。そして、父上、俺はもう決めています。竹が消えることなど、俺は絶対に許しません。俺が絶対にそれを止めて見せます」
しかし、羽磋は大伴の短