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本当の「男らしさ」とは

大物ルーキー相手にオール直球勝負。相手もフルスイング。結果は空振り三振。これですよ。いまのセ・リーグに、そして日本文化に足りないのはこれなんです。

楽に勝とうと思ったら変化球を打たせてゴロにすればいい。一球で済みます。もちろんシチュエーションに応じてそういう組み立ても必要。プロである以上、結果を数字で出さないと生きていけないから。

書店員の仕事が本の売り上げを伸ばして店を儲けさせることであるように、投手の仕事は打者を抑えてチームを勝たせること。そこは大前提。でもだからこそ目先の結果「だけ」で満足したくない。

数年前「新潮45」という論壇誌がLGBTを差別する記事を載せて休刊になりました。あの少し前から右寄りになり、売れ数が急激に伸びていました。件の号も話題になる前から即完売。世間の声がどうであれ、喜んで買う人が大勢いたわけです。

当時の私は雑誌担当。店の数字を伸ばすために事前指定をして入荷数を増やすか、追加発注をするべき立場です。でもあえてしませんでした。

「男らしさ」という価値観は嫌いじゃありません。でもこれは違う。男尊女卑は断じて「男らしさ」ではない。むしろ男の弱くて卑怯な一面の発露です。それよりも儲かるとわかっていてもこういう本をむやみに売らない方が、本当の「男らしさ」に近いのではないか。そんな気がしたのです。私が清原和博さんや藤川球児さんから教わったのはそういう生き方だったから。

本当の「男らしさ」は、マイノリティや自分とは異なる見解の持ち主、あるいは立場の弱い相手ともフランクにフェアに接することのできる器の大きい人にこそ宿ると思っています。そして他人に優しく己に厳しい。勝てば何でもいいなんて姑息なプロセスを許さない。

藤浪投手のピッチングには、清原さんや藤川さんに感じた「男らしさ」が見えました。ぜひこのまま突き進んで欲しい。励みにします。もちろん理想通りにいかないのは世の常ですが、せめて気づいたときに微調整と反省をためらわぬ謙虚な己でいたいものです。






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