人にも環境にもやさしく高品質なものづくり_新会社「エシカルファクトリー」の立ち上げ背景
人件費の安さから海外の工場でOEM生産を行う企業は多い。海外での生産は最小ロットでも500〜1000個ほどが一般的だが、バングラデシュの革工場BLJ Bangladesh Corporation Ltd.(以下、BLJ)は、最小ロット50個から対応する。
「背景には、『最初はみんな小さく始まる 。徐々に大きくなっていけばいい』というファルク工場長の思いがあります。」
そう話すのは、BLJの日本法人として設立された新会社「エシカルファクトリー」代表の安藤晶美さん。なぜ最小ロット50個という少量の生産でも受注するのか、エシカルファクトリー設立に込められた思いとは。
今回は、代表の安藤晶美さんとセールスディレクターの鈴木タリタさんに話を聞いた。
遠い国で働く一人ひとりに人生がある。バングラデシュに行って変わった仕事の意義
ものづくりの知見を深めるためにBLJを訪れた時、自分が仕事のインパクトの大きさを肌で感じ、視野が広がったと安藤さんは振り返る。
安藤:ボーダレスには、社会起業家を目指すため新卒で入社しました。学生時代から、ジェンダー問題に関心があり、ジェンダーレスな下着ブランドをつくりたいと考えていました。
入社してすぐOEM事業に携わり、ものづくりのいろはを学びました。8か月が過ぎたころ、初めてバングラデシュの工場(BLJ)を訪れたんです。そこでの出会いが今回の新会社設立に大きく寄与しています。
BLJの特長は様々な理由で他社では雇用されず生活が厳しい人々を最優先で採用し、ゼロから技術を教えて未経験者を「職人」として育成していること。仕事に就くことが難しかった貧困層をこれまで700人以上雇用している。
安藤:工場を訪れた時、貧困層の家庭に雇用を生み出すことの意義を痛感しました。一生懸命商品をつくる職人たちの姿、工場内の託児所にいる職人の子どもたちを見たときに、『この人たちのための事業なんだ』と思ったんです。バングラデシュで生産される高品質な革製品の販路を拡大することは彼らが希望を感じられる未来につながっていると思います。
バングラデシュ人の父を持つセールスディレクターの鈴木さんも特別な思いをもって事業にジョインした一人だ。エシカルファクトリーでの仕事を通して、「バングラデシュと日本の懸け橋になりたい」と語る。
鈴木:新卒でアパレル商社に入社したのですが、大量生産・大量廃棄が当たり前の環境で、働く人々のことを考慮していない事実にショックを受けました。
持続可能な形で、バングラデシュと日本をつなぐ仕事を探していた時に見つけたのがJOGGO(バングラデシュに雇用を生むカスタムオーダー革ブランド)でした。絶対に入社したいという強い思いで、選考を受けジョインできました。JOGGOでは、生産管理を担当しBLJにも何度も足を運びました。私は、BLJで働く仲間が大好きです。BLJで働くという選択肢を多くの人につくっていきたいという思いを持って、今回は自ら手を挙げてエシカルファクトリーにジョインしました。
お客様に寄り添う提案でつながるリピート、生まれる新たな雇用
エシカルファクトリーは、「人にも環境にもやさしいものづくり」をコンセプトに、BLJのOEM生産における窓口を担う。
一般的なOEM事業では、顧客側がアイデアを固め、提案書を作成してから生産を工場に依頼することが多い。しかし、エシカルファクトリーは、お客様の要望を丁寧にヒアリングし一緒に商品開発を進める。安藤さんは、具体的なイメージをいくつも見せ、細かく擦り合わせながら、商品を形にしていくと話す。
安藤:お客様から要望をいただいて、生産が完了するまでの期間は、3か月から半年。その間、工場のメンバーと一丸になって商品を丁寧につくり上げていきます。一度注文をいただいたお客様からのリピートは何よりの励みになります。お客様と私たちが一つになり、新たなプロダクトが生まれ、工場にも雇用が創出される。ものづくりを通じた良い連鎖に大きな喜びを感じます。
新会社設立の背景。信頼関係を築く新たなOEMのかたち
バングラデシュで雇用を増やしていくため、日本からのOEMの受注に注力していきたいという思いから設立された「エシカルファクトリー」。その強みはどこにあるのだろうか。
安藤:これまでは、BLJの日本語が話せるスタッフが窓口となり、日本企業とのOEMに取り組んできました。しかし、細部に関するコミュニケーションが難しく、商品開発における修正が何度も続くことがあったんです。また、海外送金における為替の影響に対する日本企業側の不安もありました。
エシカルファクトリーでは、日本人スタッフである私たちが一気通貫でOEM生産をサポートします。また、日本法人があることで円で支払えることも、お客様にとって大きなメリットとなり、取り組みやすいかたちを実現しています。
エシカルファクトリーのもう一つの強みが、最小ロット50個から生産ができるという点。海外生産では異例のロット数だ。小ロットの発注も受ける背景には、工場を0から立ち上げた工場長ファルクさんの思いがあるという。
”最初はみんな小さく始まっていくもの。小さく始めて成功すれば、それから徐々に発注は大きくなっていく。お客様と長いお付き合いをしていくために、最小ロット50個という体制は続けていきたい”
安藤:エシカルファクトリーには、商品を販売する企業様だけでなく、記念品として初めて革製品を製作される法人のお客様もいらっしゃいます。小ロットの生産は、そういったお客様にも革製品の良さを知っていただける機会であり、長いお付き合いを見据えて信頼関係を築けるようにベストを尽くすのが私たちの姿勢です。
リスペクトしあえる関係を築き、エシカルなものづくりが当たり前の社会へ
最後に、エシカルファクトリーの今後の展望を二人に聞いた。
安藤:OEMでつくる商品は、BLJの職人たちがこれまでの経験と磨き上げてきた技術を駆使して仕上げていきます。一つの商品の背景を知ってもらうことで、エシカルなものづくりへの理解を広げていき、お互いにリスペクトしあえる関係が築けると信じています。私たちの思いに共感してくださる企業様との出会いが楽しみです。
鈴木:セールスディレクターという仕事は、お客様とバングラデシュをつなぐ架け橋になれると思います。商品の背景にある物語を知ってもらえるような提案を行っていきたいです。一人でも多くの人にバングラデシュとバングラデシュで働く仲間のことを知ってもらい、エシカルなものづくりが当たり前の社会を、エシカルファクトリーを通してつくっていきたいと思います。
エシカルファクトリーについて、詳しくはこちらをご覧ください。
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