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#キリスト教

リチャード・ルーベンスタイン『中世の覚醒』はすぐれた哲学入門書であり歴史書だ

リチャード・ルーベンスタイン『中世の覚醒』はすぐれた哲学入門書であり歴史書だ

一部で絶賛されている『中世の覚醒』を読んだのだ。非常に面白かった。

原題はアリストテレスの子どもたち、みたいな感じだ。

レコンキスタの開始とともにトレドやシチリアにて、西洋人はアリストテレスを再発見する。そしてアリストテレスがいかに受容されていったかの物語であり、中世哲学の入門書として最適である。

歴史的背景を抜きにして神学論争だけ紹介されても困るのだが、本書はそのあたりも含めて解説されてい

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岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』読んだ

岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』読んだ

また哲学の入門書を読んでしまった。

薄くて読みやすかった。

本書は見ての通り西洋思想史の入門書なのだが、なにがいいかって半分以上がギリシャ哲学、ヘブライズム(ユダヤ教とキリスト教)に割かれていることだ。なお著者はギリシャ哲学やレヴィナスを専門としていたらしい。

普通はカントとかヘーゲル以降の近現代に力点が置かれるのだが、本書では古代ギリシャについてえんえん書いている。ギリシャで展開された普遍

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田川建三『キリスト教思想への招待』読んだ

田川建三『キリスト教思想への招待』読んだ

この本で紹介されていた田川建三氏の著作を読んでみる。ほかに読んでみようと準備しているものもあるが軽めのものから。

著者自身はクリスチャンではないのだが、キリスト教2000年の歴史にはいいこともいっぱいあって、それは知らないのは損であるというスタンスだ。

そういう立場から平易にいろいろ紹介するという筋書きであり、非常に読みやすい。。。読みやすいのだが、米帝批判、環境問題、Gender gapなど

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田川建三ほか『はじめて読む聖書』読んだ

田川建三ほか『はじめて読む聖書』読んだ

先日のこの本があまりにも難解だったので、お口直し的にもっとわかりやすいのも読んだのである。

メインは田川建三氏のインタビューであり、なかなか面白かった。

聖典ではなく文書として聖書を読むのが彼のスタンスであるけど、当たり前だが聖書の矛盾点なども躊躇なく指摘することとなり、護教派からは大変に評判が悪い。
特に近年になり、ギリシャ悲劇のような古典的ギリシャ語ではなく、ローマ帝国期の口語のギリシャ語

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坂口ふみ『個の誕生 キリスト教教理をつくった人びと』読んだ

坂口ふみ『個の誕生 キリスト教教理をつくった人びと』読んだ

この本は私が学生のころからかなり話題になっており、いつか読まないといけないなあと思っていたのだが、けっこうなお値段だったので二の足を踏んでいた。最近になって文庫版が出たようなので購入したのであった。

世界史的にも、哲学史的にもほとんど話題になることがない、ニケイア公会議、カルケドン公会議前後の神学論争が主題である。

こちらの記事でも触れたように、自殺が禁じられるようになるのもこの時期であり、教

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佐藤優『神学の履歴書』読んだ

佐藤優『神学の履歴書』読んだ

サブタイトルに初学者のためのとあるが、全く初学者向きではなかった。

現代人と価値観を共有している神学者ということで、自由主義神学とか弁証法神学とかが取り上げられている。

近代以降、自然科学などの発達にともなってキリスト教の教理も変わらざるをえないという現実があったわけである。

またキリスト教と国家とのかかわりも、特に第二次大戦終了以降のドイツにおいては重要であった。そういう問題はローマ帝国の

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沼田和也『街の牧師 祈りといのち』読んだ

沼田和也『街の牧師 祈りといのち』読んだ

昨年発売された沼田和也先生(ぐう聖)の新著をようやっと読んだのである。

沼田先生がかかわった弱者についてまとめたもので、かわいそうランキングの高い人も低い人も含まれている。そこには言うまでもなく沼田先生の優しさ誠実さが溢れ出ており、やはりぐう聖だなあと感じるのであった。
特に自身の過去の過ちを苦渋とともに振り返りつつ、自分も赦されてあるのだから他者も赦さなくてはと語る。しかし同時に、他者に赦しを

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