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加速主義

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ニック・チェイター『心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学』読んだ

ニック・チェイター『心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学』読んだ

一昨年くらいから時間とか意識についてチマチマと本を読んでいる。

だから一部で話題のニック・チェイターを読んだのである。

本書の原題はThe Mind is Flat、つまりマインド(知性、意識、心、、、どれもしっくりこない訳だ)はツルペタということだ。

私達は主に視覚情報から、意識において外界について稠密なコピーを作っていると考えている。ところが様々な実験から、人間の視覚は中心窩でしかまとも

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納富信留『世界哲学のすすめ』

納富信留『世界哲学のすすめ』

納富信留先生シリーズ。

ちくま新書の世界哲学史シリーズの成果をもとに、より普遍的な哲学を模索するという内容。

まず言葉、地図、暦などを例にとって、私達の思考がいかに自国中心あるいは西洋中心主義的であるかを解説する。

また西洋の哲学者がいかに西洋中心にものを考えているかも紹介されており、ポストモダニズムやらカルスタポスコロを経てもまだそれかよってやや呆れた。

現在欧米で主流となっている分析哲

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納富信留『プラトンとの哲学―対話篇をよむ』読んだ

納富信留『プラトンとの哲学―対話篇をよむ』読んだ

このところ出版ラッシュの納富信留先生。。。全部読みたいのだが、なかなか追いつけないっていう。

とりあえず読みやすそうなこれを手にとって見たのだ。

主題はプラトンはなぜ対話という形式にこだわったか、対話によって何を言いたかったかを、ガチプラトニストである著者自身がプラトンと対話を試みるという形式である。

まず師であるソクラテスが街中で論争をふっかけて論破しまくるという危険極まりない行為を続けた

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【日記】23/24チャンピオンズリーグRound 16 2nd Leg/維新の会、万博など

【日記】23/24チャンピオンズリーグRound 16 2nd Leg/維新の会、万博など

寒の戻りって感じで風邪ひきそうですね。

今週と来週のミッドウィークはCLである。

一昨日は早朝覚醒してソシエダ対PSGを拝見した。

アウェーで2-0で負けているソシエダは2点差つけないといけないが、エンバペのえげつないシュートで先制を許した。これでトータル3-0となりかなり厳しい情況に。
PSGはプレスが厳しいだけでなく、ビルドアップも良くて、何度もエンバペにクリーンにボールを届けていた。

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ジュリアン・ジェインズ『神々の沈黙』読んだ

ジュリアン・ジェインズ『神々の沈黙』読んだ

いやあこれは面白かった。

原著は40年以上前、邦訳は約20年前に出ているが、まだ読んでなかったなんてもったいないことをしていた。

意識はいつ、どのように生じたかというありふれたテーマだが、大胆な仮説を立てて検証した意欲的な作品だ。

まず意識とはなんでないかから始まる。

意識は学習に必要でない。概念の習得、形成に必要ではない。意識は経験の複写ではないし、知覚されたものを貯蔵しているのではない

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【日記】納富信留先生のセミナー/アジアカップ終了など

【日記】納富信留先生のセミナー/アジアカップ終了など

昨日はシラスで古代ギリシャ哲学の大家であるところの納富信留先生のセミナーを聴講した。

古代ギリシャ哲学というと、ある一時期のアテナイのことばかり連想しがちだが、西はイタリア半島とその周辺、東はパキスタンくらいまで広がっていたと考えるべきらしい。まあ確かにミリンダ王のエピソードとかもあるしな。

時代的には中世にまで及んでいるが、アウグスティヌスのようなキリスト教哲学は含めないというのが暗黙の了解

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山内志朗先生『天使の記号学』読んだ

山内志朗先生『天使の記号学』読んだ

山内志朗先生はセカイ系とスコラ哲学の相関をしばしば指摘されている。

わかるようなわからないような論点だ。だからもう少しそれについて知りたいと思ってこれ読んでみました。

存在の一義性については相変わらず理解できなかったが、現代のグノーシス主義のことはちょっとわかった気がする。

そういうわけで以下はポエムであって、内容の要約とかではない。

序章においてリアリティとはなんぞやという問答から始まる

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スティーブン・クーニン『気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか?』読んだ

スティーブン・クーニン『気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか?』読んだ

いまごろ読んだ。

大雑把にいうと、メディア、政治家、科学者は気候変動の影響を誇張しすぎという内容だ。

過去数十年、地球が暖かくなっているのは事実だが、それにどれほど人類の活動が影響しているかはなかなか確定しがたい。というか長期的な自然変化のほうが大きくて、人類の影響はあったとしても極小ではないか、、、と指摘されている。

さらには、人類の影響を人類の努力でどれほど相殺できるかも、かなり心もとな

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『ストーリーが世界を滅ぼす』読んだ

『ストーリーが世界を滅ぼす』読んだ

一部でちょっと話題になっていた本を読んだのだ。

内容としては『反共感論』とほぼ同じ。

古来よりナラティブのもたらす破壊的影響力は知られており、プラトンが『国家』において、詩人を追放しようとした事例などが引かれている。

他の例としてはキリスト教があげられている。言うまでもなくイエス・キリストとその物語は世界で最も影響を及ぼしてきたナラティブである。その一神教的な不寛容さが理由の一つである。

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2023年読んでよかった近世以降の哲学、言語学、心理学などの本

2023年読んでよかった近世以降の哲学、言語学、心理学などの本

2023年読んでよかった本まだまだある。本日は中世哲学とかキリスト教以外の人文書を。

2020年以降、医療とか生権力にまじでうんざりしている、ということが読んだ本のリストからわかる。

これは哲学者の宮野真生子氏が乳癌の治療において困惑した「医療の正しさ」について忌憚なく著したもの。
生きるとは、ただ健康であることではないし、医療とはただ正しくあることではないと教えてくれる。

そこで宮野氏が引

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2023年読んで良かった本 ギリシャ哲学・教父哲学・中世哲学編

2023年読んで良かった本 ギリシャ哲学・教父哲学・中世哲学編

2023年に読んだ本の振り返り、まだまだ続く。

幸運なことに昨年は素晴らしい書籍に出会う確率が非常に高かった。

本日はとりあえず古代とか中世の哲学、およびキリスト教関連の本を厳選して挙げていく。

まず私にとって決定的に重要だったのが『個の誕生』である。

キリスト教に古代ギリシャ哲学、具体的には新プラトン主義が分かちがたく絡んでいること、さらには中世や近代の西欧の思想に浸透していることがよく

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八木雄二『神を哲学した中世』読んだ

八木雄二『神を哲学した中世』読んだ

中世哲学入門シリーズ。

読みやすくてよかった。

形而上学や論理学的なこと、というか悪い意味でのスコラ学的なところに深入りしないで、どうしてあのような煩瑣な理屈を必要としたのかに力点が置かれている。

したがって、中世の人々の思考に入り込むことになる。大衆がふつうに神の実在を信じていたこと、修道院や大学の学者たちの理屈の組み立て方など。

なぜ中世の人々の思考を学ぶ必要があるかというと、あの時代

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山内志朗『中世哲学入門』読んだ

山内志朗『中世哲学入門』読んだ

ぜんぜん入門書じゃない入門書。むりやり2回読んだ。

今年の初夏にラテン語の勉強を再開したとき、ちょうどよいタイミングで山内志朗先生のシラスのチャンネル『ラテン語が一瞬で身につく夢の哲学チャンネル』略して夢ラテが始まったのである。

私は山内先生はお名前しか存じ上げなかったのだが、朴訥とした語り口に一瞬で魅せられてしまい、そのときちょうど発売された『中世哲学入門』を購入したのである。

しかし日本

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井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』読んだ

井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』読んだ

ヨーロッパ中世について知り始めると、やはりイスラーム世界についても学ばなくてはならないような気がしてくる。

日本においてイスラーム哲学の結節点となったのは井筒俊彦先生であるらしいので、先生の著作の中でもいちばん読みやすそうなのを手に取ってみたのである。

これは講演集であるからとても読みやすい。

イスラームの哲学というか思想において非常に重要なのは、アヴィセンナでもなければ、アヴェロエスでもな

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