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加速主義

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#東浩紀

2023年読んでよかった近世以降の哲学、言語学、心理学などの本

2023年読んでよかった近世以降の哲学、言語学、心理学などの本

2023年読んでよかった本まだまだある。本日は中世哲学とかキリスト教以外の人文書を。

2020年以降、医療とか生権力にまじでうんざりしている、ということが読んだ本のリストからわかる。

これは哲学者の宮野真生子氏が乳癌の治療において困惑した「医療の正しさ」について忌憚なく著したもの。
生きるとは、ただ健康であることではないし、医療とはただ正しくあることではないと教えてくれる。

そこで宮野氏が引

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鈴木健『なめらかな社会とその敵 ──PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論』読んだ

鈴木健『なめらかな社会とその敵 ──PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論』読んだ

やっと読んだ。

民主主義の未来について語るときしばしば引用されるのが本書である。初出は2013年だが、今年に文庫版が出た。10年間の変化を踏まえた補論も付されておりお得感満載。

そもそもなめらかってどういうことかというと、カール・シュミット的な友と敵に分断されていないことである。たいていの人とそこそこ仲良くできるし、ほどほどに対立するのが人間というものだが、国境とか国籍とか壁ができると、ゼロイ

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東浩紀『観光客の哲学 増補版』読んだ

東浩紀『観光客の哲学 増補版』読んだ

2017年に出版された『観光客の哲学』の増補版がでたので読んだ。

世界がナショナリズムとグローバリズムに分断されている現状において、観光客こそが永遠平和や世界市民への道になるというのが本論。たんなる概念の提示ではなくて、著者はチェルノブイリ原発跡地へのツアーを実現しているし、福島原発のツーリズムを真面目に企画したこともある。

増補版では、家族についての論考が追加されており、先日出版された『訂正

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東浩紀『一般意志2.0』読んだ

東浩紀氏の新著が出そうということで、今更ながら過去の著作を読んでいる。

最近はこれを読んだ。

Kindle Unlimitedだった。嬉しい。
また文庫版には宇野重規氏との対談も収録されていて、これがまた面白かった。

まずルソーの紹介から始まるのだが、社会契約論において、個人(特殊意志)は全体(一般意志)に無条件で従うべしと書いているらしい。自由を称揚した思想家として知られるルソーがこんなこ

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東浩紀『サイバースペースはなぜそう呼ばれるのか』再読

東浩紀『サイバースペースはなぜそう呼ばれるのか』再読

だいぶ前に読んだ東浩紀氏の著作だが、まもなく新著が出るということで再読。

そもそも20世紀末の『InterCommunication』が初出であるからずいぶん古臭い記述も目立つ。ていうかこの雑誌もいまや知らない人のほうが多いだろう。
いやそれ以前にサイバースペースなんて単語を使うひとはもういないだろう。
2000年ころの東氏はまだ『批評空間』にもよく登場していたし、執筆陣の重なる『InterCo

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ゲンロン12、無料と自由と公共性と持続性と訂正可能性について

ゲンロン12、無料と自由と公共性と持続性と訂正可能性について

ゲンロン12面白かった。

まず創業者の東浩紀氏の論考「訂正可能性の哲学、あるいは新しい公共性について」と、それに関連して、東氏と政治学者宇野重規氏の対談。かなり興味深く、詳しいことは後述するが、東氏の論考から一節を引用しよう。

アーレントは、ひとがたえず新しく生まれ、新しい思考の可能性とともに参入してくることこそが、公共性の条件だとも語っていた。彼女は、子が生まれ、増えるという単純な事実が、思

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