見出し画像

ぽかぽかしば中華(下町の柴犬のラーメン屋さん)


最近急に寒くなったね


街ゆく中年のサラリーマンが呟いた


そうですね。温かいものを食べたくなる季節ですよ


隣を歩く、新入社員の若い男性が、ランチで入るお店の提案をしながらこう答えた


課長、あそこに中華屋さんがありますよ。暖簾の名前はぽかぽかしば中華ですよ


そうだな、最近お財布も寒いし、高いお店に入ったら奥さんに怒られるから、お昼はここにするか?


2人は、木製の引き戸をガラッと開けた


いらっしゃいませ!!
ぽかぽかしば中華へようこそ!!


店の大将である、イケメンのしばコックが威勢よくお出迎え


お寒い中ようこそ!!


エプロンと頭巾姿のスカートをはいた、しばウェイトレスが、ホットほうじ茶とおしぼりをさっとテーブルに座った2人に提供


中華そば2つお願いします


後輩男性が上司の代わりにファースト・オーダー


かしこまりました


しばウェイトレスはしばコックに注文を伝えた


お待たせ致しました


柚子の香りがほのかに漂う
天然塩と薄口しょうゆで味付けされた、シンプルで上品なお味


麺はほっそり、透明感がありそれでいてしこしこ食感


トッピングは、卵と海苔とメンマとねぎと柴犬顔のなると
これらにおいては、定番の真髄は一途に守り抜いている


スープを一滴残さず飲み干した


そのくらい、美味しすぎる一杯だった


ごちそうさま


課長は、2人分の会計をレジで済ませた


また来るよ
今度は奥さんと子どもを連れて行くから


しばウェイトレスが満面の笑みで答えた


そうですね、美味しい食べ物は、みんなで分かち合ったらより美味しくなりますからね


後輩も、今度の給料日に両親にごちそうしたいと言った


しばコックとしばウェイトレスが


お客さまは、世界一幸福な人たちです


何でも自分で独り占めしても、いつか幸せは枯渇します
幸福は、誰かにおすそ分けするからこそ、更なる幸福の輪として広がるのですから


私たちの中華そばが、ささやかなお手伝いをさせて頂いてラーメン職人冥利に付きます


またのご来店、心よりお待ち致しております!!


2人が店を出てからも、姿が見えなくなるまで見送った


課長、僕たち世界一の幸せ者ですって!!


世知辛ない世の中だけども、心のオアシスは必ずあるから!!


心のオアシスか
詩的な表現ですね課長!!


今度の新商品の企画書に書いたら、会議は通過かもな!!


課長頑張りましょう!!


幸福のよつ葉のクローバーは、一番身近なところに落ちている


今日も、あなたの心のオアシスの詩集の1ページごとに丁寧に栞里(しおり)を綴りながら












この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?