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#21 ジャスト・イン・タイムによって現れる数字

こんにちは、こんちやまんです。

この記事は#20の記事と深く繋がった記事です。
#20を読んでない人はこちらから読むとよりこの記事が面白くなります⇩


当ページを閲覧いただき誠にありがとうございます。簿記や会計について興味のある方や、この記事を読んで興味を持ってくださった方は、ぜひ#1から読むことを強くオススメしております。


それでは本編に入りましょう。


前回のおさらい

前回はジャスト・イン・タイムの概要やメリット・デメリットについて解説をしました。
今回はそのジャスト・イン・タイムが実際トヨタにどのような効果をもたらしているのかについて、決算書をもとに解説していきます。


棚卸資産とは

ジャスト・イン・タイム生産方式を数値から読み解くためにはまずこの単語から理解しなければなりません。
「棚卸資産」とは、要するに商品の在庫です。

在庫は3種類に分類されます。
・すでに完成した製品(売れ残り・未発送、簿記では「商品」)
・今作っている最中(未完成品、簿記2級以上では「仕掛品」)
・材料を仕入れただけ(まだ作り始めていない、簿記2級以上では「材料」)

日本基準の決算書ではそれぞれ分けて表示され、IFRS(国際会計基準)では3つをまとめて「棚卸資産」と表しています。ご自身で棚卸資産について数値を調べるときは注意してくださいね。


決算書ではB\Sの資産の項目としてカウントされています。それでは実際にトヨタの棚卸資産を見てみましょう。

トヨタはIFRS基準なので「棚卸資産」

だいたい2.9兆円です。数字だけ言われてもよくわからないので、全ての資産のうちのどれほどを占めているのかを割合で見てみましょう

棚卸資産(¥2.9兆) ÷ 総資産(¥62.3兆) × 100% = 4.65%

総資産のうち棚卸資産が占める割合

全ての資産のうちの4.65%だそうです。そしてこれは「連結決算書」なので、「トヨタ自動車株式会社」の子会社である数多くの部品等のメーカー企業の資産も含まれます。
主な子会社として以下の企業が挙げられます。
・デンソー
・豊田自動織機
・アイシン
・ジェイテクト
・豊田通商
・トヨタ紡織
・豊田合成
・愛知製鋼

これらは「トヨタ主要8社」と呼ばれる企業ですね。8社中「豊田通商」を除く7社がメーカー企業です。さらにもっと多くの子会社の全ての資産を合算しても在庫は4.65%しかないのです。

でも、トヨタの話だけではこの4.65%がどれくらい低いのかわかりませんよね。もちろんトヨタに限らない「独立系」企業も準備しています。

・日本特殊等業株式会社…16.45%
・小糸製作所     …  9.42%
・DMG森精機    …21.69%
・日本精工      …12.85%
・ユニプレス     …11.72%
・曙ブレーキ工業   …  9.17%

いかがでしょうか?トヨタだけに限らない様々な自動車メーカーと取引をしている企業を6社挙げましたが、その6社の平均を取ると13.55%です。
トヨタの4.65%と比べると3倍近い量の在庫が割合を占めています。


在庫を抱えること自体が悪いことではない

ただ、ここまで話をして勘違いしてほしくないことは、「在庫を抱えることが必ずしも悪ではない」ということです。独立系の企業は、トヨタ以外にもニッサンやホンダ、マツダ、さらには海外の自動車メーカーとも多く取引をしています。そんな会社がトヨタのように自分の決めた範囲で生産を止めてしまったら需要に対する供給が追いつかなくなってしまいます
また、作ったり販売したりしているモノにもよっても影響します。
先ほど挙げた「DMG森精機」は工場の機械を造る製造業です。非常に大きなものを製造しているので仕掛品の金額も大きくなりがちです。

医薬品業界の在庫量

また、自動車業界から離れれば、ドラッグストアの在庫も肥大化してしまいがちです。想像してみてください。風邪気味で頭痛がしてなんとかドラッグストアにたどり着いたのに店員さんに「すみません、今ロキソニンの在庫切らしてて・・・」なんて言われたら大変ですよね。頭痛ならまだしももっと重たい病気に対する特効の在庫が切れていたらお客様の生命に関わります



トヨタがジャスト・イン・タイムを実現できる理由

さて、他社との在庫率の違いを見てきましたが、なぜトヨタはこのように「わざと」在庫僅少を維持できるのでしょうか?

トヨタは自動車を製造するために必要な素材の製造、部品の製造、組み立て、物流、販売までをほぼ全て自社内で完成させることができます。
そのため、自社のことだけ考えればいいので、必要な分がどれほどなのか、グループ全社で連携を取って需要量を管理できるため、必要な供給量をほぼ正確に予測できます。

そのため、トヨタだからこそ、自動車を製造するという長いステップを踏んでもこれほどの在庫僅少を意図的に創り出すことができるのです。


いかがでしたか?2部構成でジャスト・イン・タイムという生産方式についての理解と、その効果が数値の面からも確認でき、さらにはトヨタのすごさについて理解いただけたのではないでしょうか。

会計にはビジネスの良くも悪くも理由が数字で証明されています。僕が伝えたい「会計のおもしろさ」はここにあります。少しでも興味を持ってくれたら幸いです。

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それでは、また。


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