見出し画像

ひとつを変えれば、ほかの多くのことが変わる。


トナカイを追う人々の元へ
魔法使いの使いの者があらわれる。

酷い皇帝グロズニによって
北の地は奪い尽くされている。
世界が滅びようとしている。助けて欲しい。
彼らは魔法使いにそう訴える。

魔法使いはその願いを受け入れない。
変化を受け入れなければならないと。
そして、年老いた魔法使いは見習いを残し
死者の世界へ旅立っていく。

残された見習いシンジビズは心を痛める。
そして、魔法使いの言いつけを聞かず
魔法使いの妹の元ではなく皇帝の元へ向かう。
北の地を救うために。



『ゴーストダンス』
   著者   :スーザン・プライス
   訳者   :金原瑞人
 出版社 :サウザンブックス
   ISBN  :9784909125170


1巻目の『ゴーストドラム』は
魔法使いに引き取られ魔法使いになった子
2巻目の『ゴーストソング』では
引き取られず魔法使いにならなかった子の話だった。

この3巻目の『ゴーストダンス』は
修行を終える前に魔法使いが旅立ってしまった
魔法使い見習いシンジビズの物語。

見習いといえど魔法を学んでいるので
皇帝の元へ行くまではサクサク進む。
けれど見習い魔法使いでは
皇帝を変えることはできないし
年老いた魔法使いの言ったように
思いもよらない結果を招いてしまう。

皇帝は人を信じず残酷で死を怖れる。

そんな皇帝の元にも魔法使いがいる。
奴隷の子を使って魔法が使えると
皇帝に信じこませているペテン師ジェンキンズが。


ジェンキンズは自分の邪魔なものを排除し
自分だけが皇帝の味方であると信じこませて
わが身を守り、良い地位や富を得ようとする。


彼はシンジビズも狙う。


変えることが出来ない皇帝、
わが身を狙うジェンキンズ。


シンジビズは立ち向かう。


『ゴーストドラム』のときと変わらず
皇帝はポンポン処刑してしまう残酷さなのだけど
皇帝という残酷な存在が機能するときほど
ひとは正直に生きるという皮肉さが印象的。


ひとは隙あらば不正を働き、
他のひとのせいにしてしまう。


変わり続ける世界の中で
加害者が被害者になることもあり
被害者が加害者になることもある。


世界は淡々と残酷。


やさしいひとに世界は厳しい。


そんなふうに感じた。




この記事が参加している募集

読書感想文

サポートしていただけたら生きる支えになります。