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すべては永遠に変わり続けるんだよ


奴隷の猟師マリュータと妻イェフロシニアの間に
生まれた男の子を迎えに魔法使いがやってくる。

魔法使いはマリュータにいう
その子は自分の弟子になる子、引き渡せと。

マリュータは断る。息子は絶対に渡さないと。


クズマを追い返したマリュータは
わが子にアンブロージと名付ける。

トナカイを追う人々の村に魔法使いが訪れる。
村人たちは魔法使いを恐れ、もてなす。
魔法使いは礼だといってある話を聞かせる。

そして、弟子にするはずだった子の代わりに
その村の子どもをひとり差し出せという。

狐にかまれた子は魔法使いに
村の子は誰ひとり渡さないとナイフを向けた。

魔法使いは呪文を唱える。
一族に呪いをかける呪文を。



 『ゴーストソング』
  著者  :スーザン・プライス
  訳者  :金原瑞人
  ISBN :9784909125163
出版社:サウザンブックス


ゴーストシリーズの2巻目。


ゴーストドラムの逆の物語。


ゴーストドラムでは女の魔法使いが
女の子を迎えにきて母親が差し出す。
魔法使いになった女の子は
塔の上の孤独な皇子を救出する。
魔法使いになることが受け入れられる物語。

ゴーストソングでは男の魔法使いが
男の子を迎えにきて父親が断る。
魔法使いにならなかった男の子のために
トナカイを追う人々は呪われてしまう。
魔法使いになることを拒む物語。



共通するのはみんな過酷な目にあうということ。



ゴーストソングでも
やっぱりみんな穏やかな生は送れない。
誰かを不幸にすることで
誰かが幸せになるなんてこともなく
みんなしっかり不幸になる。

ただ愛するものと暮らしたい。
愛するものを守りたい。

そう思っただけなのに。

ひとの子どもをもらいにきたり
呪いをかけたりしたクズマが
完全に悪なのかというとそうでもなくて
クズマはクズマで自分がそうして育ったように
自分だけの弟子をしっかり育てて
自分のすべてを受け継がせるという
普通の人生を望んだだけだったりする。
肉体的に辛い目にあってないけど
しっかり不幸の中にいる。


なので憎みきれない。


少しくらい幸せな人生があってもよいのに。



アンブロージがクズマに言った言葉が
この物語の数少ない救いだと思う。




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