見出し画像

伊坂幸太郎の世界観

今日は私の好きな作家のひとり、伊坂幸太郎について語りたい。

とはいえ、ドハマリしたのは10年以上も前の事で、ここ最近の作品は読んではいない。

学生たちの微妙な心理を描いた「砂漠」を皮切りに、図書館で借りまくって狂ったように読み漁った時期があった。
私は、これはという作家に出会ったら、作品を片っ端から読みまくるへきがある。

彼の作品は過去に何度も映画化されてはきたが、今年「マリアビートル」がなんとブラッド・ピット主演でハリウッド映画として生まれ変わり、日本での公開は9月1日との事。

https://www.bullettrain-movie.jp/

よくぞ、伊坂幸太郎作品に目をつけた!と感心してしまう反面、正直、観るかどうかは決めあぐねている。
というのも原作の雰囲気を壊さずに仕上がっているか疑問に思うからだ。

ガッカリしてしまうか。
拍手喝采を送るか。
両極端だろうなぁ。

私の友人で読書好きの子がいて、堺雅人さん主演で映画となった「ゴールデン・スランバー」の原作についての話題になった時、

「何が言いたいのかよーわからんし、難しいわぁ。」
と言うので、私はすかさず、
「あれは友情の話やねん。お互い立場は変っても変わらないものはあるってことやねん。」
と即答した。

どうも彼の作品の評価は2極に分かれてしまうようなのだ。

そんな伊坂幸太郎作品の魅力の理由を私なりに分析してみたい。


※ネタバレはほぼありません。あくまでも感想が主体です。


宮沢賢治が好き?

伊坂さんは宮沢寛治がお好きなようで、「魔王」では「生徒諸君に寄せる」を引用している。

諸君はこの颯爽たる
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか

宮沢賢治「生徒諸君に寄せる」


~未来圏・透明な清潔な風~

このフレーズに釘付けになり、全文を読んだあと、心に爽やか風が吹いたような感覚になり、同時に司馬遼太郎の「21世紀に生きる君たちへ」と同じことを言っていると思った。

どちらもこれから未来を生きてゆく者たちへの希望に満ちたメッセージであり、現代の若者たちにありがちな無気力さを刺激している。

どれかは失念してしまったが、確か他の作品にも宮沢賢治の詩が引用されていたので、よほど影響を受けているだと感じた。
どうりでなんとなく、言葉選びがちょっとシュールな感じが似てなくもない。



心に沁みる言葉選びが独特

少し滑稽な言い回しではあるが、独特な説得力を感じる名言が、効果的に登場する。

楽しそうに生きてれば、地球の重力なんてなくなる

重力ピエロ」より

その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ。

砂漠」より

部分だけの引用なので、これだけをみたら、え?何言ってるの?となるのですが、物語の中で最も相応しいタイミングで名言が登場している。

その表現はユニークでありながら、どれも前向きなもので、自分の心を鍛えて信念を持ち続けることで、奇跡を起こすこともできると説いているのだ。

他人に期待して待つという受け身ではなく、向上心を持って努力するという自ら攻めるスタンツで、その姿は他の人間をも動かすのだという、りっぱな哲学が込められている。

それは人生において、様々な挫折に出会っても悲観するのではなく、楽しいことにベクトルを向けて生きていくことこそが最も大切だという教えでもあるのだ。



会話がイカしてる

個性の強い登場キャラクターによる会話はかなり魅力的で、その中には知的要素も垣間見え、ユーモアのセンスに富んでいる。

たとえシリアスな展開の中であっても軽妙でユニークな会話とのギャップが、核心に迫る心情を描写しており、思わず唸るようなやり取りも散見する。

それは時には社会風刺であったり、痛烈な批判であったりするのだが、そんな辛口なセリフにも根底にはしっかりした人間像を描いているので、妙に共感できてしまう。

彼の作品は、好いた惚れたのだけで終わるような甘ったるい恋愛小説からは程遠く、むしろそのような類のものからは対極にあり、世の中の全ての矛盾に挑戦しているように感じる。

私はそんな辛口要素も好ましく思っている。



展開と構成が絶妙

必ずと言っていいほど、複数の視点から物語は進み、同時進行するのだが、最後は繋がってくる。

え?それ何の関係がある?
いったい何の話だ?
と思わせながら盛大に伏線をばらまいておいて、最後にはしっかり小気味よく回収してくれているのだ。

まとまりのないドタバタ劇かと思いきや、様々な名言を織り交ぜながら、しっかりと芯のあるストーリーに仕立てであるのには感心してしまう。
その構成パターンを知ると、他作品を読んでいても信頼して読み進めることができてくるから不思議だ。

また作品内容が微妙にリンクしていて、たとえシリーズ外のものでも、なんとなく繋がっていいるところも魅力の一つである。


ただ、当時読んだ中で、ただひとつ「あるキング」だけはオチがわからなかった。
これはいったい何が言いたかったのか?
私にとっては「なんやこれ作品」である。

細かい内容は忘れているが、
もしどなたか読んだ方がおられたなら、軽く解説してほしい。


数々の過去の作品が映像化されて、人気のある作家ではあるが、
当たりかハズレか。
ストーリー内容もギリギリのきわどさがあり、読み手によって良いか悪いか大きく好みが分かれてしまうところが、かえって一番の魅力であるかもしれない。

その辺りの伊坂幸太郎の世界観をハリウッド映画はどう捉えているのだろうか。



🔺伊坂幸太郎全作品はコチラ





いつもありがとうございます。




この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

サポートいただけましたら、歴史探訪並びに本の執筆のための取材費に役立てたいと思います。 どうぞご協力よろしくお願いします。