マガジンのカバー画像

エッセイ

15
だいたいまんなか付近のことば
運営しているクリエイター

記事一覧

書くということの根っこにあるもの

編集者を長く続けている方とお話をしたことがある。 そのときあるベテラン作家さんの話になっ…

うたたね

寝てしまう。 午後、光がだんだん和らいでくるころ、ぼうっとしてくる。 なにもすることがない…

織る

はじめて機織りをしたのは、八丈島に行ったときだった。 黄八丈という、伝統的な布地を機で織…

ちいさく灯る、あわのような時間と

小さいころお盆になると近くのお寺からお坊さんが来て、お経をあげるとしばらく茶の間でお酒を…

じゅずつなぎ

祖母が亡くなって、もうすぐ一年になる。 私は父母とうまく心を通わすことができなかったこと…

雨をうけとめて咲く

山奥にあるお寺に行った。 行くといいよ、と人に言われて、理由もなにも言われなかったし、私…

日々は泡

ときどき海の夢を見る。 青くてしずかな海。とぷん、と行くときもある。 ゜ ゜。 泳ぎたいな、と思って、水につかった。 水はやわらかくて、水泡がゆらゆらとのぼっていって、魚のようになって泳いだ。 水のなかにいると、お腹のなかにいたころとか、生まれるまえのこととか、魚だったことをうっかり憶い出しそうになる。 存在の深いところで相手を呼んでしまう歌。私も一介の水泡だと思う。 水のなかは、夢のなかと似ている。 やわらかくて、あいまいで、とけそう。水につかったままのような気持

雨のふる日は

しとしと雨のふる日は外ばかり見ている。 雨がしずかにふると、ふだんの音が遠ざかる。白い線…

草木と言葉

草木瓜 土手に咲いた花の写真を撮っているとき、通りかかった人に、それはなんの花なんですか…

漕ぎだす

昔からどうにもならないときはよく水辺に行った。 海から遠いところに暮らしていたので浜辺に…

生きている

お盆になると、提灯をもってご先祖さまを迎えに行く。 田んぼ道、子ども用のちいさな提灯をぶ…

かすか

写真展を見るためにひさしぶりに都内に出て都心を歩いた。 ビルのあいまに咲く夾竹桃の白い花…

147

あくがる

昔よく、父といっしょに蛍を見に行った。   用水路に水の流れる音を聞きながら、田んぼの畦道…

雲のはたて

石牟礼道子さんの全集を、よく読む。 ふれるたび、思い出すということを思い出す。 石牟礼さんは古いことばをよくつかう。 (能く遣う、とも言える。能力として、とき放っているというか) 好んでつかわれている印象的なことばが「はたて」。 はたてとは、果てのこと。漢字としては、涯をあてたりもする。 遠ざかったはるかむこうの果ての果て、いちばん遠くにあって、見えなくなってゆくような、消え果ててしまうような奥の奥、そんな場所。 石牟礼さんが「はたて」というとき、その果ては深遠な響きを持