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陶淵明をよみくらし。
年明けて陶淵明をよみくらしてゐる。詩人が亡くなった63を私も迎へ(満だと三月尽に)、また停年前の退休を決めたことで、にはかにこの有名な隠棲詩人が慕はしくなり、手持ちの蔵書に加へて色んな先生方による訳書を机上に並べては読み比べをしてゐるものである。
いったいにこれまでも「漢詩と親しむにはどんな方法がよいのか」考へてきたことだが、ひとつには自分しか知らないやうな地元詩人の詩集を手元に置いてかじり
『感泣亭秋報』終刊号
昨年の晩秋、『四季』の血統を関西で継いできた同人詩誌『季』が115号をもって尻切れ蜻蛉のやうに廃刊しました。そして一年後の今秋、たうとう『感泣亭秋報』も18年18号の歴史を閉ぢることとなりました。
秋のひとつ星フォーマルハウトのやうに、寥々たる抒情詩文芸界のなかでひときは存在感を放ってゐた年刊雑誌だっただけに、巻を追ふごとにページ数を増やしてゆき、そのさきに終刊を迎へたことも何かしら“星の一生
『詩と思想』2023年7月号「特集:抒情詩の学び」
『詩と思想』2023年7月号は「抒情詩の学び」とのことで、『四季』に集った伝統派の抒情詩が特集されました。趣旨は「四季派詩人を中心に、今抒情詩をどう学ぶか」。
「学び」とあるやうに、この度は戦後詩史のかなたに水没した「四季派抒情詩の大陸棚」の詩情を、書き手意識から探るべく、令和の実作詩人たちからの考察と感想とが集められてをり、拙サイトからもデータ引用して頂いたやうで感謝です。
最初に掲げられ
前田英樹著『保田與重郎の文学』
【紹介文】 前田英樹著『保田與重郎の文学』2023.4 新潮社788ページ
全37章の浩瀚な書物ですが、晩年の萬葉集評釈を導入部として、第1章から9章までは順次、時代を遡りながら書かれてゐます。
敗戦を前に書き遺された「鳥見のひかり」等の文章を保田與重郎が到達した境地を示したものとして、それ以前の、大伴家持、後鳥羽院、芭蕉に関する著作群を通じて探られた「隠者文人の系譜」、そして江戸後期の国
小網恵子詩集『不可解な帽子』
このたび刊行された小網恵子氏の詩集『不可解な帽子』を拝読しました。
前詩集『野のひかり』より7年余。踏襲されたのは清楚な装釘だけでなく、純度を一層増したやうにも感じられる、若々しい抒情詩のもたらす読後感。
巻頭の「春」から続けざまに「水の道」「下山」「バスを待つ」、下って「苺ジャム」の各詩篇の調べに惹かれました。
水の道
山から流れ出て
いくつもの橋の下を通り
この町にやってきた
かつて
『棟方志功 装画本の世界 ──山本コレクションを中心に』
2013年の「高志の国文学館(富山県)」企画展の図録から十年。このたび現時点で可能な限りの集成といふべき、棟方志功の挿画本の総カタログ『棟方志功 装画本の世界 ──山本コレクションを中心に』が刊行されました。
A4サイズ、296pオールカラーといふ充実の内容を編著されたのは、前回図録『「世界のムナカタ」を育んだ文学と民藝(79p)』と同じく、棟方志功本のコレクターとして知られる「山本コレクショ
香川児童文化研究會発行『こどもの國』
田中克己旧蔵書から、四国丸亀の戦後雑誌『こどもの國』を紹介する。
現在ネット上にて、
プランゲ文庫に 5号(1947年6月)-16号(1949年6月) (欠:12,13号)
大阪府立中央図書館国際児童文学館に 4号(1947年5月)
の所蔵が確認される。
田中克己が寄稿した創刊号、3号は、地元図書館にも未所蔵の貴重資料であると思はれ、全画像を公開することとした。
『こどもの國』香川児童文化研究會