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中国の素晴らしき才能に溺れる「折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー」

<SF(74歩目)>
中国の素晴らしき才能に溺れる。

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー
ケン リュウ (編集), 中原 尚哉 (翻訳), 大谷 真弓 (翻訳), 鳴庭 真人 (翻訳), 古沢 嘉通 (翻訳)
早川書房

「74歩目」は、ケン・リュウさんによるアンソロジーでとてもおススメです。沢山の極上の作品がおさめられています。
鼠年/陳楸帆
麗江の魚/陳楸帆
沙嘴の花/陳楸帆
百鬼夜行街/夏笳
童童の夏/夏笳
龍馬夜行/夏笳
沈黙都市/馬伯庸
見えない惑星/郝景芳
折りたたみ北京/郝景芳
コールガール/糖匪
蛍火の墓/程婧波
円/劉慈欣
神様の介護係/劉慈欣
エッセイ/劉慈欣、陳楸帆、夏笳

7人の作家の才能に出遭えてうれしかった。そして、「中国SFを中国たらしめているものは何か? 夏笳」がエッセイとして秀逸です。

どれも素晴らしかった。心に突き刺さったのは「鼠年/陳楸帆」「麗江の魚/陳楸帆」「沙嘴の花/陳楸帆」「百鬼夜行街/夏笳」「童童の夏/夏笳」「龍馬夜行/夏笳」「折りたたみ北京/郝景芳」「円/劉慈欣」「神様の介護係/劉慈欣」
殆どじゃないかと思いました。

陳楸帆さん、夏笳さん、郝景芳さん、劉慈欣さんはこれから新刊が出るたびに読んでいると思います。

冒頭にケン・リュウさんが「中国SFだからといってすべてを現政権や経済至上の開発に対する批判と受け止めるのもどうやら違う」とのこと。

どうしても、結び付けて読んでしまう私たちに対してけん制があった。
でも、現政権等に関係なく「これは率直に言って素晴らしい」と思えるものばかりでした。

「折りたたみ北京」
経済格差の中での3階層あり。ここまではよくある話なのですが、郝景芳さんは「空間」と「時間」の格差をSF的に表現しているところが秀逸です。
この世界観はなかなか出てこない。特に「時間」について。そして、この世界観を実現させるために「折りたたみ北京」なる構造あり。ここが短篇ながらスゴイ。

この世界観での異なる作品の刊行を待っている自分がいます。

「運命は雲のようだ。一時的にそれとわかる形になっても、もっとよく見ようとする頃には、その形は消えている。老刀(ラオ・ダオ)は、自分がただの数字であることを知っていた。ただの平凡な人間で、自分と似たような五千百二十八万人のひとりにすぎない。そこまでの正確さが必要なく、ただ五千万人と表現するなら、自分は四捨五入で切り捨てられ、存在していないのと同じになる。塵ほどの意味もない。老刀は草をつかんだ」
SF作品ですが、中国古典に通じる壮大な世界観。スゴイです。

現代の中国自体が遅れる日本の近未来SFの様な状態。その中で、中国SFを読むと突き刺さるものが多い。

続編も読みます。

これははずれなしのアンソロジーです。

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