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令和5年版 犯罪白書 にみる少年犯罪

令和5年版の犯罪白書に少年犯罪をみていたら・・・。令和5年はまだ少年の定義は20歳未満でしたったのでその点を踏まえてみてみます。
なお、添付した図表は特段の表記が無いものは犯罪白書(令和5年版)より転載したものである。


|刑法犯の検挙人員

少年による刑法犯、危険運転致死傷及び過失運転致死傷等の検挙人員並びに人口比の推移(昭和21年以降)は下表のとおりである。

これまで大きな3つの波(ピーク)を感じる。
昭和においては、
・昭和26年の16万6,433人をピークとする第一の波
・昭和39年の23万8,830人をピークとする第二の波
・昭和58年の31万7,438人をピークとする第三の波
があった。

平成に入ってからは、平成8年から10年及び13年から15年にそれぞれ一時的な増加があったものの全体としては減少傾向にあり、昭和24年以降戦後最少を記録し続けていた。

令和に入ってからも戦後最少を更新し続けていたが、令和4年は前年からわずかに増加し、2万9,897人(前年比0.3%増)であった。

|検挙人員等の成人と比較

下表は少年による刑法犯の検挙人員及び人口比の推移(昭和41年以降)を20歳以上の者と比較して見たものである。

少年による刑法犯の検挙人員は、平成16年以降、減少し続けていたが、令和4年は19年ぶりに前年から増加し、2万912人(前年比2.5%増)であった。

少年の人口比についても、4年は前年と比べて上昇し、193.3(同6.8pt上昇)であったが、全体としては低下傾向が見られ、最も高かった昭和56年(1,432.2)の約7分の1になっている。

20歳以上の者の人口比と比較すると依然として約1.3倍と高いものの、20歳以上の者の人口比にそれほど大きな変動がないため、その差は縮小傾向にある。

|刑法犯:年齢層別検挙人員・人口比の推移

少年による刑法犯の検挙人員及び人口比の推移(昭和41年以降)を年齢層別にみると、下表のとおりである。

年少少年の人口比は、昭和46年から平成27年までは中間少年及び年長少年の人口比を上回っていたが、28年以降は中間少年のそれを下回り、令和元年以降は、年長少年のそれを下回っている。

|刑法犯:非行少年率

下図は、出生年(推計)が昭和55年から平成15年までの者について、6年ごとに世代を区分し、各世代について、12歳から19歳までの各年齢時における非行少年率(各年齢の者10万人当たりの刑法犯検挙(補導)人員をいう。)の推移を見たものである。

昭和55年~60年生まれの世代は、ピークが16歳の2,281.2となっている。
昭和61年~平成3年生まれの世代も、ピークは16歳であるが、2,303.0とわずかに上昇している。
平成4年~9年生まれの世代は、ピークが15歳になり、1,656.2に低下している。
平成10年~15年生まれの世代は、ピークが14歳と更に下がり、750.6に低下している。
同世代の非行少年率は、12歳から19歳までの各年齢時において、全世代の中で一貫して最も低い。

|刑法犯:男女別動向

下図は、犯罪少年による刑法犯の検挙人員及び人口比の推移(昭和41年以降)を男女別に見たものである。

女子比は、平成20年以降低下し続け、29年からは上昇に転じていたが、令和4年は前年と比べて低下し14.7%(前年比1.2pt低下)であった。

|刑法犯:就学・就労状況

令和4年における犯罪少年による刑法犯の検挙人員の就学・就労状況別構成比を見ると、下のグラフのとおりであり、高校生が最多、次いで有職少年、中学生となっている。

|刑法犯:罪名別動向

令和4年における少年による刑法犯の検挙人員(男女別)及び少年比を罪名別に見ると、下表のとおりである。

なお、特殊詐欺による少年の検挙人員について見ると、令和4年は473人(前年比40人(9.2%)増)であり、特殊詐欺による検挙人員全体の19.2%を占めている(警察庁刑事局の資料による。)。

|刑法犯:共犯事件

令和4年における刑法犯の検挙事件(触法少年の補導件数を含まない。また、捜査の結果、犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件を除く。)のうち、少年のみによる事件(少年の単独犯又は少年のみの共犯による事件)での共犯率(共犯による事件数(共犯事件であるものの、共犯者の人数が明らかでないものを含む。)の占める比率をいう。)

共犯者数別構成比を主な罪名別に見ると、下図のとおりである。
総数では、少年のみによる事件での共犯率は26.9%であり、20歳以上の者のみによる事件(20歳以上の者の単独犯又は20歳以上の者のみの共犯による事件)での共犯率(12.5%)と比べて高い

|少年による特別法犯の検挙人員

犯罪少年による特別法犯(平成15年までは交通関係4法令違反(昭和36年までは道路交通取締法(昭和22年法律第130号)違反を含む。)を除き、平成16年以降は交通法令違反を除く。以下この項において同じ。)の検挙人員の推移(昭和31年以降)は、のとおりである。

その総数は、38年(1万8,967人)と58年(3万9,062人)をピークとする大きな波が見られた後、平成3年から18年にかけて大きく減少した。
19年に増加に転じ、24年から再び減少し続けたが、令和元年以降は増減し、4年は4,639人(前年比6.1%減)であった。

罪名別に見ると、薬物犯罪(覚醒剤取締法、大麻取締法、麻薬取締法、あへん法及び毒劇法の各違反をいう。以下この節において同じ。)の人員は、昭和57年(3万2,129人)をピークとする大きな波が見られた後、平成26年(190人)を底として、翌年からは増加し続けていたが、令和4年(1,050人)は8年ぶりに減少した。

|特別法犯の検挙人員の罪名別構成比

令和4年における犯罪少年による特別法犯の検挙人員の罪名別構成比は、下図のとおりである。平成18年から令和3年までは軽犯罪法違反の人員が最も多かったが、4年は児童買春・児童ポルノ禁止法違反が最も多く、次いで、大麻取締法違反、軽犯罪法違反の順であった。

|特別法犯:薬物犯罪

犯罪少年の薬物犯罪においては、昭和47年に毒劇法が改正されてシンナーの乱用行為等が犯罪とされた後、同法違反が圧倒的多数を占め、その検挙人員は、昭和57年にピーク(2万9,254人)を迎え、その後は大きく減少し、令和4年は6人であった。

犯罪少年による覚醒剤取締法、大麻取締法及び麻薬取締法の各違反の検挙人員の推移(昭和50年以降)は、下図のとおりである。
覚醒剤取締法違反は、昭和57年(2,750人)及び平成9年(1,596人)をピークとする波が見られた後、大きく減少し、令和4年は103人(前年比11人減)であった。

大麻取締法違反は、平成6年(297人)をピークとする波が見られた後、増減を繰り返していたが、昭和26年から令和3年までは増加し続け、平成27年以降は薬物犯罪の中で最多を占め、令和4年は884人(前年比71人(7.4%)減)であった。

麻薬取締法違反は、昭和50年以降、おおむね横ばいないしわずかな増減を繰り返しており、令和4年は57人(前年比14人増)であった。

|交通犯罪

犯罪少年による道路交通法違反の取締件数(軽車両以外の車両等の運転によるものに限る。ただし、教唆・幇助犯は除く。)は、昭和60年に193万8,980件を記録した後、減少傾向が続き、令和4年は10万280件(前年比13.0%減)であった(警察庁交通局の資料による。)。

令和4年における犯罪少年による危険運転致死傷の検挙人員は72人(前年比15人増)であり、そのうち、致死事件の検挙人員は5人(同7人減)であった(警察庁の統計による。)。

暴走族の構成員数及びグループ数の推移(最近20年間)は、下図のとおりである。

|さいごに

犯罪白書のおける少年犯罪の状況は上記のとおりであるが、少年人口の減少等に伴い刑法犯や特別法犯の検挙人員等が減少してきたが、令和4年にあっては罪種等によって増減はあるものの増加に転じてる状況も伺えるところだ。

成人年齢の見直し等の影響が令和5年、つまり令和6年版の犯罪白書にどう影響するか関心を覚えるところである。

いずれにしても、将来を担う少年の犯罪の防止と健全育成に努めていかなければいけない。

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