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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜をまとめました!
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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(10)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(10)

 屋敷に戻ると玄関からオモチとカワセミが雪崩のように駆け出してくる。
「アケ様!」
 オモチは、表情こそ変わらないが赤い瞳を輝かせる。
「ご無事で何よりです。奥方様」
 カワセミは、冷静に右手を左肩に当てて頭を下げる。
 しかし、水色の尾羽はパタパタと嬉しそうに小刻みに震えている。
「2人とも心配かけてごめんね」
 アケは、身を小さくして恐縮する。
「奥様・・・ご無事で・・」
 玄関の中でアヤメが

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(10)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(10)

「もう、人前で何してんのよ」
 青猿の腕の中から降りたウグイスは、愛し合う2人を見て気恥ずかしくなって左手で顔を覆う。
「はははっお盛んだねえ」
 青猿は、笑いながら折れたウグイスの手にアズキをくっつける。
 アズキは、身体を燃え上がらせ、癒しの炎を発する。
 違う方向に曲がっていたウグイスの手が少しずつ戻っていく。
「愛を伝えるのに下手くそな言葉なんていらない。必要なのは行動だ」
 青猿は、そう

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(9)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(9)

 生まれてから数え切れないくらいに味わった落下に伴う重力がウグイスの身体を襲う。
 ハーピー であるウグイスが重力による落下を恐れることなど本来はない。
 しかし、それに抗う翼を失い、アケとアズキを抱えたウグイスは初めて重力と落下に恐怖、絶望する。
(ふっ2人を!)
 ウグイスは、アケとアズキを痛みのない左腕で引っ張り胸の中に抱える。
 アケは、アズキを守るように胸にぎゅっと抱え込み、身を縮ませて

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9羽 汚泥(8)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9羽 汚泥(8)

 アケは、草の上に座り込んで竜魚によって荒らされた重く暗い空を見つめていた。
 足を数歩伸ばせばそこはもう霧に覆われ、地面すらも見えない断崖絶壁。岩壁にぶつかった壁が舞い上がり、アケの真っ直ぐな長い黒髪を掻き上げる。
 アケの膝の上ではアズキが着物の端を噛んで力一杯引っ張っている。崖から飛び降りるとでも思っているのだろうか?
 アケは、苦笑を浮かべてアズキの頭を撫でる。
「大丈夫だよ。そんな事しな

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(7)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(7)

 青い壁が艶かしく蠢き、空を舞うウグイスに激突する。
 ウグイスの周りを囲う風の壁が身体への激突こそ防ぐがその力と衝撃は凄まじく、ウグイスの身体は簡単に吹き飛ばされてしまう。
 ウグイスは、旋風に舞い上げられたこの場のように回転するも、黄緑色の翼を大きく広げて体制を整えるも、その背後から赤い壁がのたうちながらぶつかって、さらに吹き飛ばされてしまう。
「もう・・・っ」
 吹き飛ばされながらウグイスは

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜 第9話 汚泥(6)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜 第9話 汚泥(6)

(愚か者、愚か者、愚か者!)
 胸中で何度も繰り返し叫びながらツキは森の中を走る。
 アケが飛び出した時間とツキが追いかけ始めた時間に大きな差はない。しかし、森のどこを探してもアケの姿は見当たらない。
 アケが猫の額に来てまだ半年と3ヶ月程。
 しかし、その短い時間の間にアケは何度も森の中に入り、山菜や果物、薪の材料なんかを仕入れてきた。恐らく、彼女しか知らない独自のルートもあり、もはや長年の住ん

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(5)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(5)

 アケの泣き叫ぶ声が響き渡る10分程前に遡る。
 ツキは、混沌に散らかった状態の居間のテーブルで冷めてしまった粉だらけのコーヒーを口にしていた。
 ざらつく食感が果てしなく気持ち悪いがそんなことは些細なことだ。
 ツキの脳裏に浮かぶは今朝から現在に掛けて妻の様子。
 明らかにおかしい。
 昨日の怒涛の出来事と、よくは分からない"大人の階段を登る勉強会"を差し引いてもアケがあそこまで取り乱す、いや錯

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(4)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(4)

 ウグイスは、早くも心が折れそうだった。
 アケは、直ぐに見つかった。
 屋敷のとんがり屋根の屋根裏、家精のアヤメが普段過ごしている部屋の隅で両膝を抱えて縮こまって座っていたのだった。
 教えてくれたのはアヤメだった。
 アケがアヤメのいるとんがり屋根の屋根裏部屋にやってきたと聞いた時は思わず耳を疑った。
 アヤメに対して並々ならぬ嫉妬心を抱くアケが行くだなんて考えもしなかった。
(つまり正常な判

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(3)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(3)

 空が艶やかに蠢く。
 この時期特有の重い雲が青空を隠し、今にでも雑巾を絞るように雨が降りそうだ。しかし、青猿が深緑の双眸で見つめるのはそれではない。
 青猿が見つめるのは思い雲の荒波を荒れ狂うように泳ぐ青と赤の2匹の巨大な魚であった。
 遥か上空にいるはずなのにその巨大な身体は変身したツキや自分と同じくらいにあるように見える。つまり本来はもっと大きいのだ。そしてその巨体を今にも落ちてきそうな程に

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜 第9話 汚泥(2)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜 第9話 汚泥(2)

「てっ言うのが男と女の営みだよ」
 ウグイスは、掛けてもいない眼鏡がさもあるように右耳の脇をくいっと動かす真似をして少し偉そうに言う。
 ウグイス、アケ、そして青猿は、ツキの屋敷から少し離れた森の中にあるハーピー 兄妹の家にいた。家と言っても家具がある訳ではない。食事も日中を過ごすのもほとんどがツキの屋敷なのでこの家にはほとんど寝に帰るだけだ。それならもう一緒に暮らしてしまえば良いと思うかもしれな

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(1)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第9話 汚泥(1)

 夜が明けると同時にアケと胸に抱かれた火猪のアズキは、ウグイスとカワセミの家から住み慣れた屋敷へと戻り、自分のもう仕事場とも言うべき厨へと向かう。
 全ての戸を閉じられた厨は、ひっそりとして肌寒い。小窓の隙間から薄い灯りが溢れてくる。
 アケは、小窓と外に繋がる扉を開けて冷気の含んだ空気を入れて換気する。そして外に出て薪を取ってきて釜戸の中に放り込む。羽釜に米を入れて丁寧に洗って水に浸し、味噌汁の

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第8話 慈愛(7)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第8話 慈愛(7)

「邪教の神殿?」
 ツキは、コーヒー飲む手を止めてアケを見る。
 アケは、大きく頷く。
 慌てて風呂から出てきたので着替えはしたものの髪はまだ少し濡れていて雫が垂れている。
 その後ろでウグイスと青猿が何故か同情的な目で自分を見てくることにツキは,少し気になった。
「私も赤ちゃんの頃、邪教の神殿に攫われてそこで実験をされた」
 アケは、黒い布に覆われた本来の目のあった部分を触る。
「もし、邪教が子

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第8話 慈愛(6)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第8話 慈愛(6)

 アケの唇が極寒にいるように青く震えている。
 青猿は、アケが何を言わんとしているのか分からなかった。
 アケは、厚手の布に覆われた本来の目に触れる。
「子どもたちが邪教に攫われたと聞いた時、思ってしまったんです。その子たちが私と同じ目にあったらどうしようって。私と同じように親に捨てられてしまうのではないかって」
 アケの蛇の目から涙が流れる。
 アケの言葉に青猿とウグイスの表情が凍りつく。
「私

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第8話 慈愛(5)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第8話 慈愛(5)

 その言葉にアケとウグイスの表情が青ざめ、固まる。
「先天的なものだ。誰が悪いわけでもない。それでも子が授かれないと言われた時は荒んだものだ。5柱の王達からも破壊神と揶揄されるほどに」
 その当時のことを思い出してか、青猿は、自虐的な笑みを浮かべる。
「そんな時にな。赤ん坊を拾ったんだ」
「赤ちゃん?」
 アケは、目を丸くする。
 青猿は、頷くと両手を持ち上げ、赤子を抱くような形をして作る。
「こ

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