見出し画像

心理的安全性でつくりだす『学習する組織』

組織づくりにおける心理的安全性に関する書籍のご紹介をしたいと思います。

その前に、

2020年8月にチューリッヒ生命がビジネスパーソンを対象にストレス原因などについて調査した結果、ストレスの要因第1位は「収入面」だったようです。

これは、働き方改革による残業時間の減少や、新型コロナウイルス感染症の影響により収入面への不安が募ったことなどが考えられています。

一方で、人間関係はというと3位のようです。

画像1

ん🤔?

でも、よくよく見てみると人間関係と紐づくような文言がそこら中にあるような…。

ちなみに、社内の人間関係の数値を単純計算してみると31.7%もあるので、結局は人間関係なのだな…と。

■『人間関係』は退職理由でも常に上位

画像2

調査時期は不明ですが、リクナビNEXTが転職経験者へ行った調査でも人間関係は1位のようです。

ちなみに、労働政策研究・研修機構の「若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状:平成25年若年者雇用実態調査」においても、初職が正社員であった人の離職理由として

1位:「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」29.2%
2位:「人間関係がよくなかった」22.7%
3位:「仕事が自分に合わない」21.8%

の順で多く、ここでも人間関係を理由に退職する若年者が多いようです。

それらを背景に、新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、新規高卒の就職者39.2%、新規大卒の就職者は32.0%と、大卒の約3人に1人が3年以内の早期離職といった状況にあります。

若者の離職率の高さについては、厚生労働省(2019年10月発表)「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」にて確認することができます。

といったように、ビジネスパーソンというより人間である以上、人間関係・対人関係で悩むといったことは日常であり、それに悩んでいない方は非常に稀な存在という事が言えます。

かくいう、私もチームの人間関係は常に悩んでおり、結果として対人関係を半分の理由に退職をした経験もあります。

結局のところ、コミュニケーション不足といったことが考えられるのでしょうけど、では人間関係が築かれている=心理的安全性がある、あるいはそうでない職場とはどのような職場なのでしょうか?

■心理的“非”安全性な職場とは

画像3

人々はチームとして働く中で、どんな時に『対人関係のリスク』を感じるのでしょうか。

対人関係のリスクとは、自分の発言やアウトプットにおいて以下のようなリスクが考えられます。

【心理的“非”安全性な職場の例】
●何か悪い風に思われるかもしれない
●何か仕打ちをうけるかもしれない
●良かれと思って行動しても、罰を受けるかもしれない

ちなみに、ここで言う罰とはちょっとしたもので、その一つ一つは小さな言動や行動のことを指し、実際に働く上でのリスクは以下のようなやり取りが考えられます。

【リスクの事例】
●率直に意見を言うと、空気が壊れたり、自分が嫌われたりするリスク(だから、何も言わなかった)
●現場から離れて長い上司の感覚と、現場を見てきている自分の感覚では、かなりの乖離があるので、率直に意見をしたいが失礼な奴だと思われるリスク(だから、今回も上司の方針にしたがった。後日「やっぱり」と思う出来事があった)
…etc

エドモンドソン教授は、人は対人関係のリスクとして四つのカテゴリ「無知・無能・邪魔・否定的」だと思われる事がリスクと感じる、と整理しています。

このように対人関係のリスクとは、「チームの成果のためや、チームへの貢献を意図して行動すると、罰を受けるかもしれない」という不安を感じている状況といった事が分かります。

そのため、行動しても罰せられるのだったら、行動しない方がまだマシといったように、リスクに怯える心理的“非”安全性な職場では、メンバーは必要最低限な行動、あるいは行動すらしなくなっていきます。

行動しなくなる心理的”非”安全性な職場は、『チームの学習』という観点で問題が生じ、チームというよりも分断された個人の集合体として存在するだけで、

そこから個人の学びがチーム・組織へ共有されることはなく、創造性といったことに繋がることはありません。

一方で、『心理的安全性が確保されている職場』では、罰や不安と戦ったり、忖度することにエネルギーを注ぐ必要がないので、

「健全な意見を戦わせ、生産的でよい仕事をすること、成果を出すことに力を注げる」チームへと昇華していきます。

■心理的安全性な職場は『学習する職場』

画像4

「心理的安全性って、ただ許容範囲を広くして失敗を許すことでしょ?」と、字面や表面だけを捉えると誤解を生みがちです。

(実際、私もそう思ってました)

その誤解の最たるものが「ヌルい」職場といったもので、つまり人間関係は和気あいあいとしているが、締切りも守らないといったコンフォートゾーン(居心地がいいだけ)の中にいる職場です。

その誤解を解くカギとして「仕事の基準(スタンダード)」という考え方が必要となりますが、それは単純に『高い目標を設定すること』ではなく『妥協点を高くすること』が重要となります。

ちなみに、これらの心理的安全性と仕事の基準の4現象(職場)について下図のようなマトリクスでまとめることができます。

画像5

1、ヌルい職場
仕事の基準も低く目標未達成でも「まっこのくらいでいいか」というフレーズが人々の頭に浮かぶ組織。充実感はあまり感じられない。成長志向のビジネスパーソンは危機感を覚え、転職を考える。

2、サムい職場
リスクを冒してまで他者と積極的に関わる必要がない、というお互いに無関心なカルチャーがある職場。自分の弱さを隠すことに注力し、言われた以上の仕事はしない。

3、キツい職場

一見、士気が高いように見えるが反対意見を述べたり、根本的な意義について問い直したり、目的を確認することは忌避される。「余計なことは考えず、成果をだせ」というような風土がある組織。

4、学習する職場

成果が出ていない時もサポートがある。仕事に大義や意味を感じることができ、充実感がある。成果に至らずとも望ましい努力には承認や感謝といった、みかえりがある。適材適所で十分なパフォーマンスが発揮できる。

(これだけ見ても『学習する職場』がダントツでいいし、目指したいですよね…)

心理的安全性が高く、仕事の基準も高い「学習するチーム・組織」では『健全な衝突(ヘルシー・コンフリクト)』が促進されるといった特徴があります。

また、心理的安全性が向上すると、メンバーの離職率が低く、収益性が高く、多様なアイディアを効果的に活用できると言われています。

さらにチームへの認識という観点からも、心理的安全性はチームへの満足度、エンゲージメントを向上が期待できるようです。

■まとめ【書籍紹介】

この『心理的安全性』が広まった理由ですが、Googleが2012年に立ち上げたプロジェクト・アリストテレスの中で「効果的なチームの特徴」について調査した結果、

収益性が高く、離職率も低いといったハイパフォーマンスを続けるチームの協力の仕方で圧倒的に重要だったのが『心理的安全性』だった、と結論づけているようです。

ここから、一気に心理的安全性が組織にとって重要であるかが認知されていくことになっていったそうです。

【今回参考にさせていただいた書籍】

今回の記事では、心理的安全性に関する組織の概念をまとめましたが、

本書ではその他に、実際の導入方法リーダーシップとしての心理的柔軟性行動分析でつくる心理的安全性といった参考になる内容となっていました。

1on1の書籍は割と存在するんですけど、そもそも論で心理的安全性が伴わないと上手くいかないと思っており、とりわけ心理的安全性に関する書籍は少ない傾向にあったので、9月の発売後すぐに購入しました。

チーム・組織のエンゲージメント向上を考えている方にとってはオススメ書籍かな、と思いご紹介させていただきました。

最後に、

これを読んでいて、私が以前勤めていた職場は『ヌルい』と『サムい』職場の中間あたりに該当してたかもなぁ…なんて思いました。

例えば、大学でいえば学生募集が上手くいっている所に限って(長年、地域で寡占市場にある場合に)起こりやすい現象だとも思います。

ある意味でコンフォートゾーンにいるけど、目標も成果も曖昧で、個々の専門性も磨かず、言われた以上の事はしないといった風土があったような記憶があります。

今は、現在の職場で心理的安全性に関する導入をチームで始めており「学習する組織」を目指し、個々の強みの認知や価値観の共有といった所から心理的安全を図り、職場の意識改革に取り組んでいる最中です。

また、チーム力向上の関連記事として、スタッフへの『問いかけの作法』についても書いておりますので、ぜひご覧ください。

最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。
Twitterもやっています。@tsubuman8

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?