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縁起の間 -⽩梅・⽯楠花・彫刻・⾦⽊犀

彫刻家の大黒貴之です。

2020年、東京のMARUEIDO JAPANで開催された個展に合わせて執筆したテキスト「両義の間にある揺らぎ「間-振動」-⾃然 時間 ⾔葉 数字 縁起 ⽣命彫刻、ドローイング、インスタレーション 」から抜粋したものです。

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10 代、20 代の頃は、⾃宅にある庭の樹にはそれほど愛着も無かったが、近年、何故か急に⼼を惹かれるようになっている。

中でも⽩梅と⽯楠花、それと⾦⽊犀の 3 本の樹々が特に気に⼊っている。⽩梅については、私が幼少の頃にはすでにあったので、少なくとも40 年はここで我が家を⾒守っているのだろうか。

最近、⺟親にそのことを尋ねる機会があった。彼⼥が⾔うには、私の誕⽣を記念して、祖⽗が⽩梅を植えたのだという。そうすると 2020 年で 44 年になる。何故それらの樹に魅了されているのかよく分析できていない。しかし、⾃分のこれまでの歩みに加えて、祖⽗がそれらの樹を植えた事がリンクしているのは事実である。

毎年 5 ⽉頃には、この⽩梅の隣にある⽯楠花がピンクの花を咲かせる。13 年前に他界した⽗親が残した⽯楠花。

ドイツのラーテノウ市に住んでいた部屋の前にあった花壇にも⽯楠花が植えてあった。

⼤家さんが⼤切に世話をしている姿が鮮明に残っている。その⽯楠花が開花するたびに⽗の⽯楠花のことを想った。

2016 年の帰国後は、ラーテノウで眺めていたその⽯楠花のことを思い出し、かつて住んだドイツの街や友⼈知⼈に想いを馳せている。

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2020 年秋、庭にある⾦⽊犀のオレンジ掛かった⻩⾊の花びらが今年も姿を⾒せてくれた。そのことは、⾵に乗ったほのかな⽢酸っぱい⾹りで気づいた。

その枝の⼀部を室内に持ち帰り、⿊と⻘の⼩さな丸い花瓶に⽣けた。部屋に私の好きな⾦⽊犀の匂いが薄っすら漂っている。

私の⽬前にあるテーブルの上の⼩さくかわいい花びらと⾹りを感じながら、その⾦⽊犀を植えた祖⽗の限りなく微かな姿を思い出している。

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作品が誰の⼿に渡って⾏くのかは、私が⽩梅や⾦⽊犀、或いは⽯楠花に感じた「起こり」のようなものなのかもしれないと近頃改めて感じている。

誰かがそこに⽊を植え、⻑い時間の経過があり、そして、それを良いと感じる瞬間がある。その対象が本当に良いかどうかがわかるまでには⻑い時間がかかるのだと感じている。

彫刻家を志して 20 年以上が経つが、そのような縁という出会いの不思議さに⼈間賛歌のようなものを感じている。

私はその縁起という刹那の時間の狭間で、ただただ作品をつくらせてもらっているだけなのかもしれない。

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