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本好きのこれが病ひでいよいよとなるまで下らぬ書物すら捨てかねるのであつた
今年3月4日の note に俳誌『九年母』に掲載された大岡龍男を引用した。 ………それを曲らずに右へ戻ると精進堂つて本屋がありますから https://note.com/daily_sumus/n/n9…
二藍・葡萄染などのさいでの、おしへされて草子の中などにありける
少し前に『枕草子 紫式部日記』から紫式部日記のごく一部を引用したが、今回は枕草子のなかで栞の登場しているくだりを引いてみたい。
まずは二十三段に夾算(けふさん)が二度出てくる。天皇が女房たちに古今和歌集の歌をどのくらい暗記しているかテストするというお話。先日、ある人気歴史学者がTV番組で、昔の人は古今集なんか全部覚えてましたというようなことを発言していた。まさか、そんなはずないでしょう、とテレビ
美しい古書を破いて包装に使いはじめるような、堕落退化した破壊的な時代なのですね。
『チャリング・クロス街84番地』をまた久しぶりにもとめた。これまでの版については以前のブログに書いておいたので参照していただきたい。
チャリング・クロス街84番地
https://sumus.exblog.jp/19555406/
以前のブログでは江藤淳の古本屋体験を紹介するだけで本文にはほとんど触れていない。そこで、今回は少しばかり本文から引用してみる。
改めて確認しておくと、1949年か
あの絵は御覧の通り署名することが出来ませんでした。病床には、いつも自分の画を置いて、見詰めておりました
京都のみやこめっせで開催されている春の古書大即売会へ。初日につづき二度目。雨の初日とは打って変わった快晴。汗ばむ日和だった。初日に迷って買わなかった木版画を探して見つけ出す。幸にも売れていなかった。セット版画をバラした一枚なのでためらったのだが、そのセットを買うとすれば、きっと何万円もするのだろうと思い直した。
これで目的は達したので、ゆっくり、のんびり、ぶらぶら歩き。来場者はかなり多いが肩が触
「少年倶楽部」の発行日には、学校から家に帰ってランドセルを投げ出すように置くと、硬貨をにぎってその本屋に走ってゆく。
吉村昭『その人の想い出』には「私と書店」というエッセイが収められている(初出は『日販通信』1976.7)。吉村は東京の日暮里町に生まれた。小学校の近くの本屋で『少年倶楽部』を買うのを楽しみにしていたという。
この書店の描写は案外と貴重ではないかと思う。そして戦争が激しくなると新刊本が少なくなった。すると、吉村少年は古本屋をめぐり歩き、本を買い漁るようになる。
本を疎開したり、空襲で焼かれてしま
本好きのこれが病ひでいよいよとなるまで下らぬ書物すら捨てかねるのであつた
今年3月4日の note に俳誌『九年母』に掲載された大岡龍男を引用した。
………それを曲らずに右へ戻ると精進堂つて本屋がありますから
https://note.com/daily_sumus/n/n969c62986950
小生、大岡龍男ファンとは言いながら主著四冊のうちの『なつかしき日々』しか架蔵しないのでたいしたファンではない。それはそれとして、本書から「銭湯」の一篇を丸写しして大岡龍男
どうかしてシャトレエを逃げ出して、命のあらん限り、僕はお前を救ひ出す事に力を尽さう
『マノン・レスコオ』は、7巻からなる自伝的小説集『ある貴族の回想と冒険』(Mémoires et Aventures d'un homme de qualité qui s'est retiré du monde)の第7巻に当たる『騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語』(Histoire du chevalier des Grieux et de Manon Lescaut)が一般にそう呼ばれ
もっとみる本を読んでいた 庭にたき木がほしてあった すると 雨が降り出した
『全日本児童詩集第一集』(川端康成編、むさし書房、1958年10月20日9版、そうてい考案=竹中郁)を均一コーナーの棚に見つけた。編集責任者の名前がビッグ。川端康成、林芙美子、与田準一、丸山薫、村野四郎、梅木三郎、阪本越郎、久米井束、井上靖、安西冬衞、小野十三郎、竹中郁、坂本遼、足立巻一。
《さしえはこどものすきな絵の先生がたにかいてもらいました》とあってその先生方がまたなかなかの人選。小磯良平
まなぶことがあるだろうか 平和はありえないし、戦争はおわらないことを
ボブ・ディラン「SLOW TRAIN COMING」(CBS SONY, 1979、日本盤)を行きつけのレコ屋エンゲルスガールにてもとめる。やはりジャケ買い。8年ほど前にフランスのCBSからリリースされたシングル盤「Animals (Man Gave Names To All The Animals) / Trouble In Mind」(CBS, 1979)を買ったことがあったのだが、それと同じ
もっとみるおお、おお、これはわたくしとあの方との秘密でございます。
『未定』VII を古書善行堂で発見。たまたま前の日に矢川澄子の略歴を調べていて《1954年、同人誌「未定」に参加》という記述を読んだばかりだった。買うしかない。
『未定』は学習院大学の人たちを中心にドイツ文学やフランス文学などの翻訳、評論あるいは詩や小説などの創作を掲載していたようである。澁澤龍彦と交際を始めた矢川は『未定』へ澁澤を誘った。
その結果、以下の作品が『未定』に発表されている。
両親は、4歳のぼくにはじめて大人向けの本、『美しい花とその育てかた』をくれたのだった。
デレク・ジャーマン(1942-94)は映像作家であり、舞台美術も手がけた画家、作家である。個人的には、独特な艶かしさをもった映像が非常に印象的だった映画「カラヴァッジョ」(1986)の作家として認識している。メープルソープらとともにエイズ・カルチャーのスターの一人だったと言っていいかもしれない。洗練の果てにたどりついた退廃といった雰囲気がいかにも80年代的だった。
そのデレクがエイズを抱えながら
大阪は今も"喫茶店ワンダーランド"であり続けているように思う
田中慶一氏による三都喫茶店案内が完結! 『神戸とコーヒー 港からはじまる物語』、『KYOTO COFFEE STANDARDS』につづく待望の大阪編が刊行された。『大阪 喫茶店クロニクル 個性に満ちた憩いのワンダーランド』(淡交社、2024年4月14日)。
読みどころはやはり「第一章 大阪の喫茶史を紐解く 1868-1945」であろう。幕末から太平洋戦争での敗戦まで激動の近代を大阪の喫茶店やカフ
いいか悪いか、意義があるかないか、作家には決してわからない。一流作家にも。
ポール・オースターはわりと好きな作家なのだが、フランスでの貧乏話がいちばん面白い。小説は、自分の好みから言えば、まずまずの面白さ、だ。本書には小説家になる前の評論家、書評家としての原稿が集められており、フランスを中心とした世界文学が対象である。それはそれで悪くはないが、読んで面白いのは巻末にまとめられたインタヴュー集であろう。
父親の死によって生活苦から抜け出し、小説家になることができた、など具