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戦略の教科書 vol2. -良い戦略と悪い戦略[ブックレビュー込み]-

※この記事にはアマゾンアソシエイトのリンクがあります。

前回の記事に引き続き、筆者が戦略とは何かを探求していく中で得た学びをアウトプットしていく連載の第2弾。

今回はリチャード・P・ルメルト氏著の”良い戦略と悪い戦略”を元に要点をまとめていきます。

前回の記事はこちらなので気になる方は読んでみてください。

ターゲット
戦略について学んでいきたい方
戦略を学上でのナレッジ良い教材に出会いたい方

今回の記事でわかること
書籍”良い戦略と悪い戦略”の重要ポイント

想定読者

経験からくる戦略の健康診断

”良い戦略と悪い戦略”はリチャード氏の多くの戦略をみてきた事例を元に書かれています。
そして、その事例から帰納法的に戦略を考える上での行動や良い戦略、もとい、悪い戦略が持ち合わせる特徴を整理してくれてます。

個人的には、自身が戦略を考えていく上で”悪い戦略”を作ってしまわないために意識しておくべきことの健康診断的なチェックリストとして使うのが良いと感じました。

良い戦略の基本構造

良い戦略の基本構造

まずは良い戦略が持つ、あるいは、作るための基本構造を見ていきます。(書籍ではカーネルとも書かれています)

良い戦略においては上記のイラストの”診断・基本方針・行動”の3つがしっかりとあります。


診断:現状を診断(分析)していき、何が取り組むべき課題、つまり、取り組まないと本質的な解決にならなかったり、ビジネスにとって死活問題になる課題であるかを解きほぐすこと

基本方針:特定した課題にどのように取り組んでいくかの大きな方向性を提示すること

行動:基本方針を実現していくために設計された一貫性のある行動を実際に行っていくこと


医者の診断で例えるなら、病気の原因を突き止め(診断)、治す方針を医師が決め(基本方針)、方針に沿って処置を行う(行動)といった感じです。

これだけを見れば、なんだシンプルじゃないかと感じるくらいですが、
実際にビジネスの中にいるとこれらの基本構造がうまくなされていないケースはよく出会います。

そして、これらの書籍の秀逸なところはこの基本構造が行われない、ないし、悪い戦略が生まれる原因を紹介していることです。

なぜ、悪い戦略がはびこるのか?

では、どうして良い戦略の基本骨格がなされず、悪い戦略がはびこってしまうのか。書籍では以下の理由が紹介されていました。

なぜ悪い戦略が蔓延るのか

1:困難な選択を避ける

先ほどの良い戦略の基本骨格を考えると、調査・分析をして現状を把握する作業は必要です。
ただ、この調査・分析する作業は往々にしてめんどくさいものであるので、それを避けてしまうケースが多くあります

また、いくつかの選択肢が生まれた場合、その選択肢同士は両立しなかったりすることがあります。そんな中でリーダーはどれを行うかを選択、あるいは、優先順位をつける必要がありますが、その意思決定がなされないケースもあります。

実際に、仕事をしていても各部署の現状の把握であったり、あるいは、うまくいっていない場合にその原因を特定するのは大変です。

各部署の中心人物にヒアリングしにいくとしてもその部署数が10-20、大企業であれば相当数の部署があり、全てを洗い出すだけでもかなりの時間と労力は必要だったりします。

また、意思決定自体も組織になると各所との関係性もあったりなど、周りを見てしまう要因が多くあったりするため、リーダーがすぐに意思決定するのが難しくなる場合も感じられます。

個人的には個人の心理的な面倒臭さだけではなく、組織で動く上での構造的な枷も良い戦略が生まれにくくなる要因になるんだろうなとは感じました。

2:穴埋めチャート式で戦略をこしらえる

コンサルタントが提供するようなミッション・ビジョン・現状、
そこから見えるギャップから戦略を書いていくテンプレート(ないしフレームワーク)に沿ってただ当てはめるだけのやり方が悪い戦略を量産していると書籍では指摘しています。
(書籍で書いてしまうのがすごいなと感じます)

書籍を通して、ここでの伝えたかった意を解釈すると、
おそらくテンプレートに沿うこと自体は悪いとは考えていないのだと思います。

ただ、当てはめていく上で、会社の現状や課題を見極めなかったり、
どうしてそうするのか、どのようにして対処していくのかを考え抜かないまま手順に沿って当てはめる。
こういった裏付けの弱いままのテンプレート戦略が悪さをしてしまうとのことです。

3:ポジティブ・シンキングに依拠する(成功すると考えたら成功する)

ポジティブシンキングそのものを否定するといったわけで著書で書かれている訳ではありません。

ただ、良い戦略を考える上で、現状を分析し、何が必要であるかを考える必要がある中で、希望だけに依拠して批判的に考えることを放棄するのはよくないとしています。

書籍ではこれら3つが悪い戦略がはびこってしまう原因として書かれています。

そして、どれもふとすると何気なく行われてしまっている場面を目にしますし、自分もやってしまいそうになるものでもあります。
意識するといえば安易ですが、気をつけていきたいですね。

悪い戦略の特徴

良い戦略を作るための基本骨格と悪い戦略が量産されてしまう原因を整理してきました。

その上で、自身が作る戦略が悪い戦略に陥らないために、
書籍にある悪い戦略が持つ特徴をまとめると以下のようになります。

悪い戦略の特徴

書籍の中では具体事例を交えながら悪い戦略が持っている特徴を書いてくれているのですがここではその特徴に焦点を当てて見ていきます。


1:空疎である

空疎な戦略とは例えば
”顧客中心で考えたマッチングプラットホームを実現する”
といったような専門用語などを使っており、一見壮大に見えるが、
実際に何を実現するのかの内容がなかったり、実は当たり前のことを書いているだけの戦略
を指しています。

例えば、顧客中心は最近いろんなところで言われており、これだけでは差別化は図れません。

またマッチングプラットホームもこれはサービスの形態やビジネスモデルの一部をさしてはいますが、ここから具体的に何を実行していくのかが伝わってはきません。

こういった、見た目はそれっぽいが実は中身が詰まっていない、そういったのが悪い戦略の特徴の中にはあるみたいです。

2:重大な問題に取り組まない

戦略は本来乗り越えなければいけない課題をどう乗り越えるかを示すものであるのに、そもそもその問題に目を向けなかったり、問題が見えていない。そういった特徴を持つ戦略のことを指しています。

3:目標と戦略を取り違える

これは例えば、”この会社の戦略は毎年売上高を20%ずつのばすことである”といったような本来目標となるものが戦略として語られている場合です。

このパターンも、売上を毎年20%ずつ伸ばすためにどうするのかの方針やとるべき行動が見えないとまずいですが、目標数値が戦略としてなってしまうとそこが見えず、良い戦略とは言えません。

4:間違った戦略目標を掲げる

タイトルからは分かりづらいですが、書籍で言いたいことは2つあり、
1つ目はやることを寄せ集めたリストを戦略とせず、集中して取り組むことを1-2個に絞ること、2つ目は現実的な目標を立てることです。

やることを寄せ集めたリストは大企業でも見受けられますが、施策を10こ20こと並べている一方でどれからやっていくのが優先順位がついていなかったりするものです。

良い戦略はやるべきことを絞り、そこにリソースを集中的に投下して達成することが必要らしく、ただのやることリストは戦略ではないとしています。

また、著書では良い戦略は、現状持つリソースで取り組み実現する可能性が高く、次に取るべき行動が見えてくるものだとしています。
そんな中で非現実的で願望を並べただけの目標は次の行動が見えてこず、前進しないので悪い特徴であるとしています。


これらの悪い戦略の特徴を踏まえると個人的には良い戦略とは
・進むべき方針と次にやるべき行動を示してくれるもの
・方針に基づき、やるべきことを絞っている
・やるべきことが現状の分析の結果から見えてくる課題に紐づいており、

 その戦略をとる裏付けがなされている
といったものだと捉えてます。

良い戦略の特徴

良い戦略の特徴・悪い戦略の特徴をしっかりと理解した上で、
実際に戦略を作成する際には悪い戦略になっていないかを確認していく。

そういった健康診断的なチェックとして今回の内容が使えると良いのかもしれません。

書籍の方では実例を交えて今回の内容を書いてくれていたり、
良い戦略の考え方や他に持っている特徴を書いてくれていたりと、
戦略を考える上での学びは多いので気になる方は是非読んでみてください。

また、同じ著者の”戦略の要諦”の書籍の最後には経営陣と戦略を決めていく際の作業の流れを戦略ファウンドリーという名称で紹介してくれています。
まだ私自身も実践で試せていないので有用性は定かではないですが、
どのように経営陣を巻き込んで、戦略の整理を進めていくかの参考になるのでこちらも気になる方は読んでみてください。

まとめ

今回は良い戦略と悪い戦略をもとにその特徴をまとめてみました。

前回は戦略が持つべき要素についてでしたが、今回はその戦略が悪い戦略に陥らないために悪い戦略はどういう特徴を持つのか、また、やってはいけない行動についてまとまった記事になったかなと思います。

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