『自己の放し飼い』

　ある短歌賞に送っていないも同然の連作です。 表裏それぞれに「天使」か「屑」と書き人と会うとき財布から出す 怒らせた上司に叱られることに不満を抱く放し飼いの自己 雑談もソシャゲもしない僕だけが、あの隕石に気付き、逃げられる。 研ぎ澄ました誠意の剣で斬りつけろ客の笑顔は傷と捉えろ 居眠りをしているだけの中年が詩人に悲劇の素材にされる なぐさめに買ったアイスの底面に、疲れた僕がまだ凍ってる。 天井をじっと見つめて、ないはずがないギロチンに処されてから寝る。 現実に

『うたよみん』という短歌投稿サイトに登録しました。 　狗蛆津恥眀の短歌│うたよみん http://www.utayom.in/users/1297 　ノートにまとめたり短歌賞に送ったりするわけにはいかないやつを投稿してあります。よろしくお願いします。

空日一（くうじつはじめ）という名前は、初見で読み方がわからないし言いづらいので変えたほうがいいと思いますね。

小豆色の石

　小豆色をした、いびつなひょうたん型の鉱石が、白くて安っぽい石の台座に置かれている。その周囲は豆電球で薄黄色にライトアップされている。そこから二メートルくらいしか離れていないこちら側はもう暗い。暗闇から鉱石を見つめる。 　パイプ椅子がたまに軋む以外には何も音がしない。あまり静かだと、衣擦れの音や、靴と地面が擦れる音すら、耳が明確に拾うようになる。聴覚が鋭敏になるにつれて音を立てないよう気づかうようになり、より精度の高い無音になっていく。 　なにもしていないわけじゃない。ま

ただひとり私が自由律俳句だと信じている

仕事帰りに買ったハーゲンダッツを食べて幸福をわかりやすく消費する 他人の悪口を言わない人にほめられた 必ず自分からの返信で終わらせる 本当に好きな人に気付くために一端付き合う用の相手 三つとも一年以上前だけど若干日にちが古いのから食べる だがしかしおにぎりをもらう前にぶっ倒れて死ぬ可能性がある 改善できないので次からは謝るのをやめる 痔の軟膏にも味は付いてる タメ口でいいと言わない先輩 訂正する前の注文が来る 冷蔵庫と電子レンジがある前提の節約術 そうい

ンンンン

本当は大量虐殺したいけどミュージシャンで妥協している せめてもの手向けに彼の愛してた小動物に遺骸を食わす 心スポに行きたがらないあいつらは俺が死ぬのを覚悟している 核の火に包まれ愚かな人類は恋をしてない者のみ滅ぶ ゴミ拾う刹那、終末くるのなら僕は良い子で生涯終える チョークサインの精霊がいなくなり、人は残らず青白くなる。 通り魔に刺されるくらいなら、どうせなら裁判所で死刑にして。 数日後死ぬやつにならこのあざを魔族の証と嘘を吐ける 過去でなく未来でもない静止し

2015/8/2

　この日のととととライブというイベントで付け句大会をやっていたんです。ある短歌を虫食いにして、そこに文章を入れて別の短歌にする大会です。お題は「そうだとは知らずに～すき」でした。私も参加していました。提出したものを覚えている分だけ以下に載せます。 そうだとは知らずにホラー映画見せ二度と会わないところがすき そうだとは知らずに疑いもせずに一人で苦しむような人がすき そうだとは知らずに神様を殺し、知らないままのヒーローがすき そうだとは知らずにカチカチし続けて切れたのにつ

カンカン

空白の今日がウザくて面倒な今日に切り替わる。カーズよりマシ。 将来は社長になろう。気配りや思いやりとか面倒だから。 かっ課長数百件のクレームが届いていますかゆいところに 明日死ぬ予定を今日に早めますそれでどうにかお願いします うれしくて自動ドアにお辞儀する。彼に感謝し明日も生きる。 逆ギレもできない奴が街中を歩いているぞ恥ずかしげなく 自転車を置いたところがすぐわかる、おもしろくない用事の帰り。 飲み会は通路近くの席ついて「ありがとうございます」の係 かわいく

自動販売機

　仕事帰りで夜道を歩いていると、その暗がりに街灯と一緒に明かりを灯す自動販売機を見つけた。夜中とはいえ真夏の蒸し暑さに汗で濡れるワイシャツと、対照的に渇くのどを潤すため缶ジュースを買うことにした。 　硬貨を三枚入れ、ジュースを選ぶ。甘味が好きなので、桃のイメージが描かれた清涼飲料水のボタンを押す。下の取り出し口から缶が落ちる音がするかと思ったが、聞こえてきたのは薄い金属が切断されるような嫌な音と、液体が吹き出て辺りに飛び散るような音だった。 　思わず眉をしかめ、何事かと取

タンタン

この町で石を投げると上島か肥後か南部か寺田に当たる つめ先の垢の記憶を四六時中読み取っているサイコメトラー 4番のボタンを押せば四階に着くしBなら仏壇に着く 弾丸に「ヒゲ剃りの気持ちよさ」を込め、サンタクロースに百発放つ。 過去三月ひとりも宿題してこないことから闇のクラスと呼ばれる カーテンの柄を必死に見続けて自分に何か暗示をかける 我こそは足して二で割る能力者真逆のふたりセットで集え 丁寧に束ねたひもをくくらずに、普通の顔でそのまま放る。 プレゼントをした直