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私は誰にいい子?

2015年製作、121分、邦画、配給:アークエンタテインメント、呉美保監督「きみはいい子」。

誰にでも事情があって、話したくないこと、言いたくても言えないことがある。こちらの気遣いが、図らずも土足で相手に踏み入っていたり、逆鱗に触れたり、傷口に塩を塗っていたり。

その逆もあって、無意識でちょっと手伝ったことが、相手にとってすごく心救われることだったり、助けられたと感じることだったり、感謝されることもある。そういう社会って良いなぁって、優しいよなぁと思いました。

人生って、いつの間にこんなに複雑になっていくのかっていうのも同時に描写されていると感じました。映画のスタート時って、こちらの情報も白紙。で、どこからかのタイミングで他人事と思っていた問題が知らぬ間に自分の背中に迫っていて、津波のごとく問題が押し寄せられて、巻き込まれて…いつの間にか映画がふと終わってました。そこに惹かれました。

小学校の先生と生徒、母子家庭の母と息子、夫は居るけどワンオペ母と娘、地域のおばあちゃんと小学生等々、各家庭内の事情単体で見ると解決策がありそうなものの、いろんな人が絡むと複雑になるのかな。人生の壁であり、超えていくしかないし、でも超えられない時もあったり。問題や壁をどう捉えて、付き合っていくか。ただただ、自分の選択を信じるのみ…では限りがあるし、しんどいなぁ。

共感したのは、母娘のシーン。母が娘をちょっとしたことで叱ったり、叩いたり、夫に相談しても聞いてもらえず、孤独な描写。母も、娘も、父も、それぞれの立場でつらいよなぁ…。自分も同時に子供2人が話しかけられてイライラしたり、何でも無いことで叱ったり、叩いてはないけど掛ける言葉で近いことをしてしまってるかもな…と思いました。

最後のとあるシーンが台本はなかったんじゃないかな。すごく良かったな。演者による演技じゃなくて、演者のリアルの声だと思う。

『抱きしめられたい。子どもだって。おとな だって。』

社会問題を厳選して、一例をぎゅーっと詰め込んだような映画でした。

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