doriokun/綴る料理人

40歳(男) 妻と娘と三人暮らし。 イタリア料理をベースに、現在は肉料理店シェフ。…

doriokun/綴る料理人

40歳(男) 妻と娘と三人暮らし。 イタリア料理をベースに、現在は肉料理店シェフ。 お酒、映画、音楽、読書、座禅が好きで、 高い所と早い乗り物が苦手です。 日常の中で感じた出来事を料理人目線で発信していきます。

最近の記事

月とビールとおじちゃんと

異常に暑かった夏が終わり、シャインマスカットが非常に安かった秋も終わり、いよいよ冬がやってきます。 だいぶ空気が乾燥してきたので、そろそろ手荒れしないようにハンドクリームを買わないといけません。 家の中も乾燥してきたので、寝る時は濡れたタオルを寝室にかけなければなりません。 カンカンカン、火の用心、カンカンカン、火の用心。 そして、何より気をつけないといけないのは火の元です。 心の火種はそのままに、火事の原因となる火の元だけは徹底的に始末しないといけません。 カン

    • 歳をとるのも悪くない〜40になって知った新しい楽しみ〜

      今から40年前、私は後に通うことになる小学校のすぐ近く、やや古めかしい雑居ビルの3階にある小さな産院で産声をあげました。 2700gと、やや小さめでこの世に生み落とされた私でしたが、40年の月日を経て、今や身長169cm、体重58Kgにまで成長し、体脂肪率は20%超えと、スリム体型に見せかけてしっかりと懐に脂肪を溜め込むタイプ、「やや肥満」というハンコを押されるまでに至りました。 都会に産まれたとは思えないくらい純朴に育ってしまったせいか、初対面の相手にお金を貸して、その

      • 嗚呼、中年クライシス〜うねるリズムのその先へ〜

        その日の朝は、家族がいない静かな朝でした。 「早く歯磨きしなさいよ」と小学生の娘に言う妻の大きな声も、つけっぱなしの子供番組から聞こえてくる騒々しい笑い声も聞こえません。 そこにあったのは、もう10年以上使っている冷蔵庫のモーター音と、上の階の住人がまわす洗濯機の音くらい。 私は久しぶりに静かな朝だと思いながらも、さて世の中はどんな感じかなと、なんとはなしに朝の情報番組をつけてみました。 しかし特に気になるニュースもなく、星座占いのコーナーもまだ始まらなそうだったので

        • 哀愁のスパイスカレー

          そのカレー屋さんは、私が生まれ育った街にありました。 狭いバス通り、私がまだ小さい頃からある古い一軒家の一階部分で、ひっそりと営業しているスパイスカレー屋さんです。 路面店にも関わらず、そのあまりにもひっそりとした佇まいのせいで、私は無意識のうちにお店の前を通り過ぎてしまっていました。 途中、漂ってくるスパイスの香りがだんだん薄まっていることに気がつき、鼻をクンクンと効かせながらもと来た道を戻ってみると、地図に書いてあった通りの場所にそのお店はちゃんとありました。 店の

        月とビールとおじちゃんと

          今宵、私はあべこべに酔う

          いつからか、夕方、娘が小学校の宿題や学習プリントでの勉強を始めるのと同時に、私はキッチンに立ち夕飯の準備を始めるようになりました。 それは小学2年生の娘が勉強しているというのに、その傍らでゴロゴロしながら本を読んでいたり、はたまたギターを弾きながら調子っぱずれの歌を歌っている父親の姿というものが、なんとなく申し訳なく思えてきたからです。 この日も娘が漢字の学習プリントを始めるのと同時に、私はキッチンに立ち夕飯の準備を始めました。 娘はリビングにあるテーブルの上をちゃちゃ

          今宵、私はあべこべに酔う

          初めて西日暮里を訪れました。 そして、そこにある素敵な本屋さんで入手してきました。 今年の梅雨はこれで乗り切ります。

          初めて西日暮里を訪れました。 そして、そこにある素敵な本屋さんで入手してきました。 今年の梅雨はこれで乗り切ります。

          ウズウズ渦巻く、刺激たっぷりカレーパスタ

          私が働いているレストランには、常連のおじいちゃんがいます。 いつもお洒落なハットを被っていて、風のように現れて、そして差し入れをくれます。 男性スタッフが多い日にはウィスキー、女性スタッフが多い日にはシュークリーム。 暑い日にはハーゲンダッツ、寒い日にはタコ焼き。 はたまた高級食パンやドーナッツなどなど。 しかも最近に至っては差し入れだけに留まらず、自ら率先して食器やグラス拭きまでやってくれる優しいおじいちゃんです。 おしゃべりしてる時はいつもニコニコ楽しそうで、冗談

          ウズウズ渦巻く、刺激たっぷりカレーパスタ

          焼肉よりも君にラブ

          娘が生まれる前、私は妻とあることを誓い合いました。 それは、「我が家は子供ファーストにはしない」ということです。 家で流す音楽も、テレビ番組も、映画も、旅行先も、食べるものも、私たちが子供に合わせるのではなく、子供が私たちに合わせるような家庭にしようと決めたのです。 それが今やどうでしょう。 テレビのリモコン権は7才の娘が独占し、リビングでCDをかけようものならうるさいと一喝されて、見にいく映画は「すみっコぐらし」です。 さらに娘は極度の偏食なので、家でも一人だけ

          焼肉よりも君にラブ

          木にハム、気になる、あの子の未来

          「パパ、木にハムでしょ」 台所で夕飯の支度をしている私に、7才の娘が大きな声で言いました。 私は何のことかわからずに聞き返します。 「木にハムってなんのこと」 すると娘は言いました。 「これだよ、これ」 そう言って娘が指差した先には漢字の練習帳が。 そしてそこには「松」の文字が書かれているのでした。 「あぁ、なるほどね。確かに木にハムだね」 私がそう言うと、娘は「木にハム、木にハム」と言いながら、「松」の字を何度も書き写していきました。 さすがは料理人の娘

          木にハム、気になる、あの子の未来

          そのカフェ飯よ、大気圏を突破して

          その日、私にしては珍しく、あるオシャレな街にちょっとした用事がありました。 その用事は本当にちょっとしたもので、特に時間がしっかりと決まっているわけでもなく、お酒を飲んでから行ってはいけないという類のものでもありませんでした。 そこで私はせっかくオシャレな街に繰り出すのだからと思い、以前から気になっていたオシャレなアジアンカフェで、ランチを洒落込むことにしたのです。 そのお店は駅から続く商店街をしばらく進み、電気屋さんのある角を右に入った路地にありました。 注意してい

          そのカフェ飯よ、大気圏を突破して

          Nの悲劇〜愛と悲しみのBBQ〜

          「近場で、温泉があって、BBQできるところがいい」 そんな私のわがままを叶えられる旅先を妻が見つけてくれたので、小学2年生を目前にした娘との思い出を作るべく、私たちは春休みを使って1泊2日のグランピング旅行に出かけました。 最寄りの駅から電車と新幹線を乗り継いで約1時間。目的の温泉地に到着します。 そこから送迎車に乗り込んで山道を登ること15分。あっという間にホテルに到着です。 チェックインを済ませると、私たちは一つ下のフロアにある裏口から外に出て、グランピングエリアへ

          Nの悲劇〜愛と悲しみのBBQ〜

          お気楽中華でつかまえて

          ある休日のお昼時、私は家の近所にある中華料理屋さんを訪れました。 そのお店はお気楽な性格のマスターが一人で切り盛りをする、とても小さな中華料理屋さんです。 そのお気楽な性格故に、営業中にも関わらず大きなあくびが聞こえてくることもありますが、いつもとっても美味しい中華料理を作ってくれます。 特に五目あんかけ焼きそばは絶品です。 何回食べても飽きることはありません。 しかし、今日の私は新しいメニューに挑戦すると心に決めていました。 新年度も始まったことですし、心機一転、

          お気楽中華でつかまえて

          未来が見える整骨院

          去年の10月からしばらくの間、私は整骨院に通っていました。 首のコリが原因とされる頭痛に悩まされていたからです。 治療の内容は主に首、肩まわりのマッサージと鍼治療で、多いときは週2回のペースで通っていました。 治療を担当してくれている先生が言うには、料理人という仕事はどうしても下を向いている時間が長くなってしまうので、首や肩にかかる負担が大きくなってしまうのだそうです。 通い始めてから数回目の治療中、私はその先生から「腰は痛くならないんですか」と質問を受けました。

          未来が見える整骨院

          ザ・スキマジックアワー 〜隙間時間にだけ訪れる光の調べ〜

          スキマジックアワー。 それは隙間時間にだけ現れるという、世界がキラキラと輝いて見える瞬間です。 一度その瞬間を目にしてしまったが最後、それは心に焼き付いて離れることはありません。 温度、湿度、音、心、香り。 様々な条件が合わさった時にしか見ることのできないその瞬間は、追い求めれば追い求めるほどに遠くへ逃げっていってしまうものなのです。 午前9時。 私は美容室に到着しました。 友人夫婦が営む小さな美容室で、私はもう何年も通っています。 さっそくカットをしてもらう

          ザ・スキマジックアワー 〜隙間時間にだけ訪れる光の調べ〜

          作ってあげたいカルボナーラ

          春から小学2年生になる娘は、カルボナーラが大好きです。 なので、夜ご飯に何が食べたいかと聞くと、カルボナーラと返ってくることがよくあります。 カルボナーラはシンプルな料理であるが故に、なかなか奥が深い料理でもあります。 ベーコンを使うのか、パンチェッタ(塩漬け豚バラ肉)を使うのか、グアンチャーレ(塩漬け豚頬肉)を使うのか。 卵は全卵を使うのか、卵黄だけを使うのか、またはそのミックスか。 生クリームは入れるのか、入れないのか。 などなど、それぞれのシェフの考え方や学んで

          作ってあげたいカルボナーラ

          ロック・ステップ ・モスコミュール 〜綴る料理人が語るロックへの愛〜

          私は今、整骨院の治療台に乗っています。 約3ヶ月前、首の凝りからくる頭痛に悩まされて以来、定期的に通っているのです。 担当の先生が言うには、料理人という仕事上、どうしても下を向いている時間が長くなってしまうため避けては通れない道なんだそうです。 この日もいつものように、うつ伏せになってマッサージを受けていたら、店内のスピーカーからある懐かしい曲が流れてきました。 ガンズ・アンド・ローゼズのノーヴェンバー・レインという曲です。 ガンズ・アンド・ローゼズは1980年代に

          ロック・ステップ ・モスコミュール 〜綴る料理人が語るロックへの愛〜