信長に翻弄された武将、信長さえいなければ天下を取れていたかもしれない武将、信長に人生を狂わされた武将、などを書いた短篇集。取り上げられるのは

・今川義元（今川家大名）
・真柄直隆（朝倉家の武将）
・六角承禎（六角家大名）
・三好義継（養父は大名三好長慶）
・佐久間信栄（織田家古株佐久間信盛の息子）
・百地丹波（伊賀忍者の頭領）
・織田秀信（信長の嫡男、信忠の息子。幼名三法師）

六角承禎あたりのチョイスが嬉しい。
個々の能力が優れていようと、戦略を間違えていたり、時勢に乗れなかったり、信長の悪運が強過ぎたり、生まれた時代が遅すぎたり。それぞれの事情で信長に敗れたり、脇役にしかなれなかったりした人たちの物語。

天下人など目指したことはなかったが、自分もとっくに脇役、引退する側の人間になっている。六角承禎や百地丹波の側の気持ちがよく分かってしまう。
周辺から浮き彫りにしていくことで、信長の台頭から織田家没落までの流れが頭に入りやすくなっている。

脇役にスポットをあてた作品として同作者の「有楽斎の戦」もお勧め。
ちなみに作者のデビュー作「桃山ビート・トライブ」では、信長の付き人である元黒人奴隷弥助が太鼓でリズムを刻む破天荒な話。いろいろお勧めの好きな作家。