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生徒のために尽くしすぎるとどうなるか?②

この文章は主に
自己犠牲的な働き方をやめられない教師向けに書いています。

理想や情熱は人一倍あるのに、なぜか報われず心身を擦り減らすような感覚のある人は、ぜひ最後まで読んでください。

また「教師」を主なターゲットにしていますが、自己犠牲的な働き方はどんな職種にもあてはまりますので、適宜ご自身の仕事のやり方にあてはめて、振り返るきっかけになればさいわいです。
価値あるコンテンツになっています!

さて、前回のコラムでは、
教師になりたての頃の自分の失敗談を紹介しました。
Kくんという生徒が、突然、クラスの子に壁をつくり、
何を聴いても答えようとせず、態度も改めないままだったので、
僕が「怒った」というところまででした。

Kくんはますますクラスに壁をつくり、
僕のことも遠ざけるようになりました。

Kくんの突然の変化の意味がわからず、
僕は、片っ端から他の職員や生徒たちから情報を集めることにしました。
当然、保護者にも電話をしました。

すると次第にわかってきたのは、
Kくんの変化は、
以前から交際していた隣クラスのMさんと関係しているのではないか、
という憶測。
わかるのはそこまででした。

KくんとMさんは軽音楽部で同じバンドメンバーです。

二人がケンカしているのか?
あるいは、バンド間、部活間で揉め事があるのか?
・・だとしたら、よくある話です。

自分は、Mさんを呼んで話を聴くことにしました。
ところが、Mさんも真相はわかりません。
「Kくんがなぜ、人を避けるようになったのかはわからない」
という答えで、ケンカも特段してはいない、と言います。

しかし、話を聴くうちに、
Mさんが次第に涙目になってくるのです。
そして、思わぬ方向に話が展開していきました。

Mさんの両親が離婚したということ。
両親は親権を争い、今は父親のもとにいるということ。
そして、一番衝撃だったのは、
父親に暴力を振るわれている、という訴えでした。

このことをKくんも知っている、というのです。

怒りが湧いてくるのを感じました。
Mさんの父親に対して、です。
すぐにでもMさんの苦しみを緩和してあげたいと思いました。
そして、Kくんの反抗的な態度は、このこととも関係しているはずだ、
この問題に自分が介入することは、
巡り巡って、Kくんのためになるはずだ!という確信が生まれました。

「暴力を振るうことは許される行為じゃないから、
今夜のうちにでも、父親に電話しようと思う。電話してみてもいいか?」
とMさんに聞きました。

少しでも学校現場にいらっしゃった方なら、
自分のこの発言に対して大きな違和感をもつだろうと思います。

その場で、即座に「父親に電話する」旨を本人に伝えるなんて、
学校ではありえない判断です。
Mさんは隣のクラスの生徒ですから、まず彼女の担任に伝達し、
その上で学年の主任の先生にも報告し、
生活指導の担当・管理職とも協議して、
必要なら児童相談所など外部機関とも連携を取るのが
学校の基本的な対応です。

僕はそれらをすべてすっ飛ばして、
本人に直接「父親に暴力をやめるよう訴える」と宣言したのです。

若気の至りとしか言いようがありません。
当時の自分は義憤に駆られる部分が強かったし、
他の先生たちに相談すると、
たらい回しが発生して一向に埒が明かないだろうと思い込んでいました。
Mさんの担任にだけは電話する旨を報告し、
当然のように「そんなことしたら、どうなるかわからないよ!」
と忠告されましたが、聞く耳はありませんでした。

その日の夜、父親に電話しました。
お父さんは物腰の柔らかい方で、こんな人が暴力を振るうのかな、
と思いつつ、今日、彼女から聴いた内容を言葉を選んで伝え、
最後に語気を強めて
「彼女に苦痛を与えるような行為は今後一切やめてください」
と訴えました。

お父さんは、「はあ」という反応でした。
僕は拍子抜けしました。


その日の深夜・・。

僕はSNSの裏アカの投稿を見ていました。
当時の僕は、生徒の本音や実態、そしてエゴサーチも含めて、
裏アカをよく見ていたのです。

Mさんと思しき子の投稿がありました。
「先生の一言が効いたらしい。感謝。」
そんな内容でした。

嬉しかったです。
学校の一切の手続き、通常の段取りを超えて
直接、父親に電話したのですから。
やはり、リスクは覚悟していました。
僕が電話することで、父親がますますMさんに暴力を振るう可能性も恐れていました。

どうやら、想定していた問題点は起こらずに済みそうです。

「うまくいった」
そんな気持ちでいっぱいだったし、
それ以上に
「自分はよくやった」という満足感のようなものが大きかった。

しかし、です。

しかし、しばらくして、裏アカを見返してみると、
KくんとMさんであろうやり取りが出てきたのです。

Kくんは一言。
「いい気になっているんだろうな、あいつ」
でした。
「あいつ」はきっと僕のことでしょう。

そして、その投稿に対してMさんが便乗しているのです。
二人のやり取りは長々と続いていました。

詳細は覚えていませんが、
Kくんは僕に対する反発をあらわにし、
Mさんは、それにひたすら同調する形で

僕の悪口が、ダーーッと長々と延々に続いていたのです。

混乱しました。
少なくとも、Mさんが僕に否定的なのが理解できない。
「感謝している」のではなかったのか???
裏アカを見ておきながら(苦笑)、
人の心の裏の部分に、
大きく動揺し混乱してしまいました。

その日以降、Kくんは、ますますクラスと僕から遠ざかり、
Mさんも僕を避けるようになりました。

僕も、Kくん・Mさんを腫れ物としてしか見れなくなりました。

続きはまた次のコラムで書きます。
上記のストーリーは僕目線で、僕が捉えた事実です。
KくんやMさんの立場になると、どのような事実になると思いますか?
また第三者の立場で、読者のみなさんはどんな感想を抱かれましたか?

もし感じたこと・考えられたことがあれば
コメントいただけると嬉しいです。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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