見出し画像

手織り真田紐のこと(六)手織りの価値

ここまで来ると、流石に素人の私でも手織り真田紐の価値が
それなりにわかるようになって参りましたが、
それでも、わざわざ手織りの紐をオーダーされる方がいらっしゃることに 驚き、その拘りを持つ方に興味がでてきます。
是非お会いたいと操さんにお願いして納品にお伴させていただきました。

二分巾の単を織り上げる操さん

納品先は伊賀上野にある能面師の工房でした。
操さんの紐をみるなり、「これですよコレ」と嬉しそうに目を細められます。
しばし、職人同士のあるある談義に耳を傾けて楽しんでおりました。

幸さんの紐から操さんの紐へ 2世代にわたり納品です

「何故、お面の紐に真田紐を使うのか」を伺いますと
400年続く地域のお祭りでは能面をつけて歩くのだそうです。

大切なお面です。通常のお能は室内ですが、こちらは屋外での使用になりますので紐が緩んでお面が地面に落ちない様に、しっかり締まる丈夫な真田紐を選んだそうです。
細部まで作品に拘られる職人さんの手仕事にまたもや感動を覚えます。

手に入りづらくなった能面に使用する顔料 / 工房の門構えも気になり・・・


お面の納められた桐箱も何とも表現し難い魅力がありました。
蓋の縁がほんのり丸みを帯びていて引きつけられます。

そういえば備前を訪れたときに、窯元の方が桐箱の発注数は最盛期と比較して10分の1以下になったと仰っていました。
「いまは国外製品の紙箱、段ボール箱の質がいいのでそうしています」と
なるほどと思いつつも、桐箱には環境に合わせて長期にわたり作品を護る特徴があります。

創り上げた作品が手を離れて保存されることまで考えると
作家の先生方には是非とも指物職人さんの桐箱、そして西村家の手織り真田紐を絞めて、作品の完成としていただきたいと切望いたします。
 オリジナル柄の手織り真田紐は、作家の印としても作品の真贋を護る役割の一助となると思います。
 先人より引き継がれた手仕事を後世に遺していくためには、社会の理解は無論、職人さん同士のリスペクトや関係性が大切だと感じました。

作品をどの様な箱に納めるか、どの紐で締めるかまで
再びその拘りを魅せる作家の方が現れたら
私が西村家の真田紐を持って納品にお伺いしたいと思います。
いつの日かそのような時が来るのが楽しみです。


工房の壁に掛けられた幸さんの書

水は器に従いて
そのさまざまになりにけり
人は交わる友により
良きに悪に
映るらん
己に優る良き友を
選び求めて諸共に
学びの道に進むべし


お力添えいただけますと幸いです。