マガジンのカバー画像

もし帰る方向がちがったら

5
下校中、中学生男子2人が交わす雑談
運営しているクリエイター

記事一覧

短編小説『もし金メダルが獲れるなら』

 中学生の男子が2人、下校している。

「自分で言うのも変だけどさ、俺らって若いよな」

「まぁ比較的若いかな。今年14歳だし」

「これから無限の可能性が広がってるってことだよなー」

「じゃあさ、お前は金メダル獲れる?」

「ん? 競技によるだろうけど、獲れるでしょ」

「なんだったら獲れると思ってんの?」

「うーんアーチェリーとかならいけると思う」

「これから遊ぶ時間削って毎日何時間もア

もっとみる

短編小説『もし将来に不安を覚えたら』

 中学生の男子が2人、下校している。

「リアル(※あだ名です)さ、将来のこと考えたりする?」

「考えるよ」

「不安にならない?」

「まぁなるよ」

「俺だけじゃなくてよかったわ。
 昨日寝る前に将来のこと考えてたらすげぇ不安になっちゃってさ。

 勉強して、進学して、会社入って、結婚して――ってエスカレーターがあるみたいな感じで言われてるけど、そうならない可能性がざらにあるだろ? 会社に入

もっとみる

短編小説『もし100万円あったら』

 中学生の男子が2人、下校している。

「もし100万拾ったらどうする?」

「そりゃ交番に持っていくでしょ」

「……じゃあ、宝くじで100万もらったらどうする?」

「え? 誰に?」

「えーと、じゃあ親戚のおじさんとか」

「なんでくれたの?」

「それは……おこづかい的な、お年玉的な感じで」

「そもそもそのおじさんはなんの仕事してるの?」

「なんでそれは知りたいの?」

「やっぱりお金

もっとみる

短編小説『もしスノボみたいな板で空を飛べたら』

 中学生の男子が2人、下校している。

「俺さ、スノボするんだけど、たまに映画とかマンガであるじゃん? スノボみたいな板に乗って宙に浮いて空飛んじゃうやつ。あれほしくない?」

「まぁ、あったら便利かもね。でもめんどいよ」

「なにが?」

「そんなのが普及してみ。

 空中で事故起きるじゃん。それで落下して死ぬじゃん。そういうことを未然に防ぐために、浮くスノボの免許も取らなきゃいけなくなるだろう

もっとみる

短編小説『もし明日昼から草むしりだったら』

 中学生の男子が2人、下校している。

「明日さ、昼から草むしりじゃなかったっけ?」

「そうだった」

「うわー、めんどくさー。サボる?」

「いや」

「なんで? めんどいじゃん」

「いや、全然」

「ちょい待って。(浮く板よりも)めんどいでしょ?」

「いや」

「なんで?」

「いろんな友達や先生との出会いがあって、しかも、俺らはたまたまあの学校の生徒と先生になったわけじゃん。みんな狙っ

もっとみる