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父のKG

■あのネタで思い出すこと

私の仕事は、体や恋、性的な悩みを解決する商品を作ること。
企画書を書いて、稟議を通し、試作を重ね、商品を生み出す。

ホームページに掲載する説明文やネーミング、
キャッチコピーも数々作ってきた。

そんな中、セクシャルな読み物に関わることも多い。

恋愛がうまくいかない、出会いに消極的、というライトなものから、
中イキ、両イキ、拘束プレイなどハードなものまで。

当然、体の部位に関わる内容も多い。
バストやデリケートゾーン、男性器。

そして「睾丸」。

こうがん、というとちょっと難しいので、
軽やかにKG(ケージー)としてみる。

KGの話題になると、必ず思い出す出来事がある。


210404_父たち1


■父のKG


私が小学生の頃、父は学生時代の経験をいかし、
町内のバレーボールクラブの監督をしていた。

娘というだけで私ももれなく入らされた。

その頃から、母が家を出ていたため、ほぼ父子家庭状態だった。

毎日酔っぱらって帰ってきた後、お茶漬けをこぼしながら食べる父、。
靴下を脱ぐときに必ずニオイをかぐ父。
鼻をほじるためだけに小指の爪を伸ばしている父。

年頃の私には、全てが汚らしく、気持ちわるく思えた。

できれば、父の関わるバレークラブには入りたくなかった。

でも、仕方がなかった。


その日は合同練習で、他の町のクラブとの試合。
父は張り切って、紺色の短パンと茶色のセカンドバックを手に現れた。

今日の練習試合について、真剣に話していたとき、
短パンの横からポロリとはみ出てしまったのだ、父のKGが。

そしてこれにはトリックがあった。

真正面から見ても見えない。

短パンとその下のトランクスが
ぱっくり開いていた状態で横から見ると、御開帳!


ちょうど、前に立っている父から見て、
斜め前の女子たちが、
突然顔を横にして、見て見ぬフリをしはじめた。

そして笑いをこらえ始めた。

私は、体の下からじわじわ熱くなっていた。
恥ずかしいというより、私が情けない。

バシッと一発アタックを決めて、
父のKGをどこかに吹き飛ばしたい気持ちだった。

情けなさがピークに達したとき、
無事、父の話は終わり、試合も終わった。

帰り際、皆、私を見たときうすら笑いを浮かべていた。

「あんたの父さん、KG丸出し」

明確には言われなかったが、顔に書いていた。

ああ、もうまじできもい、どっか行ってほしい、親父。

と思ったが、家に帰ると普通にいた。

それが親子、ああしようがない。

まあ、あのときだけの事件だし、本人気づいてないから、
明日には終わっているだろう。

そう思っていたが、翌日のほうがひどかった。

学校に行った瞬間、
「おい、お前の父ちゃん、昨日カタタマはみ出てたらしいやんかー!
やーいやーい、カタタマー!!」

もはや私がカタタマになっていた。

それから数日にわたり、男子たちから
(大声で言うと恥ずかしいので)
私の近くに来て耳元で「おい!カタタマ」という陰湿な罰ゲームを
受けるのだった。

ただ、KG(睾丸=精巣)って精子を作る重要な部分。

もしあの頃、正しい知識が私にあれば、
私のことをからかった男子に
「説明しよう!睾丸とは精子を作る重要な部位。
冷やしたり、出しっぱなしにしては、質のいい精子ができないこともある。
気を付けよう!」

とスマートに言えてたのかもしれない。
そして、父のKGにタオルをかけてあげたかも。

今となっては単なる笑い話。

でも今やそんな父も80代。
今度KGを見るときは、介護のときだったりして。

と考えていたらちょっと切なくなってきた。


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