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毎日読書メモ(112)『物語のものがたり』(梨木香歩)

読書メモを整理していて、あー面白いじゃん、と思いながら、全著作をフォローしきれない作家の方がずっと多い。そんな中、新刊が出る都度出来るだけ読むようにしているのは、恩田陸、三崎亜記、村上春樹、梨木香歩といったところか。堀江敏幸、川上弘美、桐野夏生あたりも割と読んでいるかな...。ルールがあるんだかないんだか。

で、梨木香歩の近刊、『物語のものがたり』(岩波書店)、児童文学関係の評論をまとめた一冊。

岩波ブックレット『「秘密の花園」ノート』をまるまる所収していて、バーネットの『秘密の花園』を丁寧に振り返る。わたし自身は、金井美恵子『噂の娘』(感想はこちら)で言及されていたのをきっかけに、再読というかほぼ初めて物語をなぞったが、支配階級の子どもとして生まれながら、スポイルというよりむしろ二グレクトされ、何の生活力もなく、コレラの蔓延した屋敷の中に独り取り残されたメアリ・レノックスの運命に涙する。達成感も幸福感もない。ただ、不満だけを抱え、イングランドの叔父の家に引き取られ、ここでも二グレクトされかけていたところをふとしたきっかけで救われる。その魂の救済とメアリ自身の強さが物語を進める。そしてイングランドの春の光景の美しさ! あらためて、幸福ということについて考える。

後半は様々なところに発表した評論の再掲だが、アリエッティにせよ、『赤毛のアン』にせよ、ビアトリクス・ポターにせよ、石井桃子にせよ、子どもの頃からずっと馴染んできた著作の数々で、共感しながらの振り返り。いぬいとみこだけ、読まずに来たので、これは読んでみたいな、と思う。巻末の鶴見俊輔、別役実、梨木香歩の鼎談で、物語の在り方について、改めて考えさせられたり。

わたしを育ててくれた物語たちへの感謝を改めて認識させてくれる一冊だった。


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