■大河ドラマ『光る君へ』第17話「うつろい」感想―今日をかぎりの命ともがな
えりたです。
大河ドラマ『光る君へ』第17話……終わってしまいました。えぇ、ワタクシの歴史上の最推しであらせられる藤原道隆さまが天に召されてしまったです……
いや、「歴史上の推しさまが天に召されること」は織田信長さまで慣れていると思っていたのです。だって…昨年の『どうする家康』を含め、年に何回か「本能寺の変」って描かれるじゃないですか。だから、ちょっとした年中行事的なナニカのように思っていたのです(え)
駄菓子菓子。
第17話のラストで描かれた、あの道隆さまの最期のご様子が…ほんとうにせつなくて、いとしくて、あたたかくて、うつくしくて。マジで泣きそうでした…
推しさまが召されるってこんな気持ちになるんですね。いや、ほんとに…初めての感情に我ながら右往左往しております。しかも。
こんなに、こんなに、道隆さまがお幸せそうで…もう湧き上がるクソデカ感情をどうしてよいのか分からず、お写真を眺めてはにやにやと不審者み溢れる事態に(え)
それはそれとして。
道隆さまがお逝きになってしまいましたから、第18話からどんなモチベーションで『光る君へ』を見ればいいのか、さっぱり分かりませんが。兎にも角にも、がんばって第17話の感想を精一杯書き綴りたいと思います。
その前に。第16話の感想はコチラです。
まだこのとき、その予感はあったけれど、心は凪でござったよ…(遠い目)
■今日の中関白家
■最後の最期まで道隆さまはうるわしかったのです
もう目も見えない状態なのに、それでも道兼どんに「家族に酷なことをしないでくれ」と懇願し、頭を下げるお姿も、病でやつれ果てたお姿も、いついかなるときも道隆さまはほんとうに美しく、うるわしくていらっしゃいました。
そんな道隆さまのお姿、実はワタクシ大好きご存知『大鏡』にも描かれています。
簡単にまとめると、道隆さまは病が篤く、規定通りの装束をご着用になることもできず、また、使者である民部卿殿(源俊賢さま/明子さまの兄さま)に対し、しきたり通りに褒美をとらせることも這這の体だった。
でも、そんな姿であろうと、道隆さまはいつも通り、たいへん気品にあふれ、美しくていらっしゃったと。えぇ、1000年前のこの時代でも「ただし、イケメンに限る」の法則はがっつり生きていると、民部卿殿はいつも言っていた、と。
そんなふうに歴史語りに残るほどうるわしい道隆さまのお姿を毎週、そして、最後の最期まで拝見できたこと、ほんとうに幸せでした。
■愛妻家として逝く
道隆さまの最期は、愛妻貴子さまと共におだやかにあたたかに過ごす時間の中に描かれました。
道隆さまが貴子さまを妻として選ぶ決定打となった歌を口ずさみ、貴子さまは「きらきらと輝くような殿御でございました」と最高の笑顔で応える。そんな、この上なくやさしい時間のなか、道隆さまはご出立になりました。
図らずも、道隆さまはあれほど憧れ、目指した兼家パパりんと同じ形での最期を迎えられたのです。そして、きっとこの輝かしい時間のなかにいるお姿が、本当に本当の道隆さまだったであろうと思われてならないのです。
関白(摂政)の座を兼家パパりんから継いでから、為政者としてはどうかと思うことばかりなさっていた道隆さま。演じた井浦新さんが仰っていたように、道隆さまはおそらく政(まつりごと)そのものがあまり得意ではなく、そこに働くべき嗅覚もさほど鋭敏ではなかったのでしょう。
そんな道隆さまにとって、なにより大事なのが家族であり、妻であって。自分は嫡男だから、全力で家族も、ひいては我が一族も守らなくては!と、超肩に力を入れて、頑張り過ぎて、その結果盛大に空回ってしまった。
もしかすると、兼家パパりんが遺した言葉は、道隆さまにとって「呪い」とも、「呪縛」ともなっていたのかもしれません。
そう考えれば、道隆さまは「為政者」ではなく、「家長」あるいは「父親」でしかなかったとも言えるように思います。だからこそ、成長した一条帝も定子さまも、「父」である道隆さまの庇護から自立し、「父」の命令を拒むことができたのかも知れない、とも。
兼家パパりんの姿を、ある種ダウンサイジングしたのが道隆さまだとすれば、その道隆さまをさらに縮小して捉えているのが伊周さまであり…うん、それはもう…道隆さまの懸念が一気に実現するフラグにしかならないよねと、もう今から涙が込み上げてきます。
が、まぁそれはまた後のお話であって。
関白でもなく、家長でもなく、父親でもなく。ひたすら真っ直ぐに貴子さまを愛した一人の男性として、道隆さまは旅立たれました。とてもさみしい。とてもかなしい。とてもせつない。
それでも。
道隆さまが、いちばん大好きでたいせつな女性に看取られながら逝かれたこと。その時間はおそらく道隆さま本来の在り方であり、望む姿であったこと。それはほんとうに強く大きな救いでしたし、だからこそ、あの美しい場面をきっとずっと私は忘れないと思うのでした。
■そうしてがっつり張られる伏線(泣)
そうして、道隆さまが旅立たれたということは、ここから中関白家の没落が始まるのであり。第17話でも、その伏線ががっつりと張られていました(号泣)
それは、伊周さまと隆家さまがお話になっている場面です。そこでは、これから伊周さまが「前の太政大臣の三の君」の元へ行かれるとの描写がありました。
ここでいう「前の太政大臣」は藤原為光さまのこと。兼家パパりんの異母弟さんであり、花山院の緊縛の相手…寵姫であった忯子さまの父君でもありました。つまり、斉信さま(はんにゃ金田さん)のお父さまでもあるわけです。
このとき、伊周さまはその「前の太政大臣の三の君」の元へ通っていらっしゃいました。そうです、伊周さまは花山院の寵姫忯子さまの「妹君」を妾としていたのです。これが後々、中関白家没落を決定的なものとする「長徳の変」に繋がります。
ここでは詳しく語りませんが……この「花山院」「忯子」「三の君」という3つのキーワードを来週、再来週あたりまで覚えておいていただけると……(遠い目)
■「わたしを生きてみせる」女たち
上に、道隆さまにとって、兼家パパりんから遺された「家を守る」という言葉は呪いでもあり、呪縛でもあったのではないかと書きました。
あるいは、道長どんの妾である、明子さまの兄源俊賢さま。彼も「家を守る」「家を繁栄させる」ことを至上命令としているフシが、会話のなかに見えていました。「道長どんの娘を産め」がそれにあたります。
それらを踏まえて考えると、この時代の男性たちにとって、「家」あるいは「家の存続」は何よりも大事なコトであり、そのためにない知恵を振り切りって振り絞り、全力で東奔西走していたと言えましょう。
それに対して。女性たちは。
少なくとも、大河ドラマ『光る君へ』で描かれる女性たちは、めちゃくちゃシビアで、現実に超根差した思考をしています。もちろん、いちばんシビアなのは、主人公まひろっちだと思いますが(道長どんの恋文にド正論の漢詩を返したアレとか)。
まひろっち以外の女性たちも、良家に嫁いで御子を産んだところで、自分も子も「家存続のため」の道具にされてしまうと知っている。そして、それに抗う術を自分たちは何一つ持っていない。であるならば。
わたしがわたしを生きるためには、どうすればいいのか。
そのことを、彼女たちは「男性社会」という現実や、「家」という環境とがっぷり四つで組んで格闘し、じっくり思考し、時勢を見極め、きっちり実践していきます。そうして、必要とあらば「政」を、男性たちの後ろ側で、たまには表に回って、ずんどこと遠慮なく動かしていくのです。
兼家パパりんの性格や政治的手腕をどっこい受け継いでいる詮子さまも、その網目をかいくぐるために大人にならざるを得なかった定子さまも。
さらには、もっとも「道具であること」を期待されていた彰子さまでさえも。父である道長どんから学びとった政の道理を存分に用い、自分自身の人生をつくり上げていったと言えましょう。
そう考えると。
『光る君へ』のポスターにあった「わたしを生きてみせる」との文言はまひろっちだけではなく、『光る君へ』の女性たち全員に当てはまるもの、あるいは、彼女たちの生きざまを言い表したものなのかもしれません。
そして、それは現代を生きる私たちにとっても、強烈なメッセージと成り得るものでありましょう。…しっかり受け取らねば。うん。
■まとめにかえて―胡蝶の夢
道隆さまが道兼どんに家族のことを懇願したあと、まひろっちが美しい文字で「胡蝶の夢」と書く場面に続く流れ…あまりにも、道隆さまの人生の在り様と重なっていて、観ていて、とてもとてもとてもせつなかったです。
それでも、第1話から始めて最後の最期まで、道隆さまの人生を追いかけることができたことはほんとうに幸せでした。
おかげで、これからどのモチベーションで物語を見ればいいのか、模索しているというか、困惑している感じではありますが。
ちなみに、昨年の『どうする家康』は、私のなかでは「本能寺の変」が終わった段階で「完」の文字が浮かびました。ので、今年はどうなりますやら、、、
でもまずは。
中関白家の没落を最後まで見つめ続けることからでしょうか…うん、ジェットコースターなメンタル抱えて、がんばる(号泣)
そんなこんなで、第18話もご一緒に楽しめたらとても嬉しいです。
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