■大河ドラマ『光る君へ』第18話「岐路」感想―兄ってやつはどいつもこいつも
さて、第18話です。
第17話で、ワタクシの日本史上最大の推しさまである「藤原道隆さま」が天へ向けご出立になりました。そもそも「映像苦手民」なワタクシは、実は大河ドラマ『光る君へ』を見るのをもう辞めようかとも思っていたのです。
ですが、少なくとも、道隆さまがあれほど行く末を気に掛けられた「中関白家」を最後まで見届けることはせねば…と謎の使命感に駆られ、今週も視聴することに。
というわけで、今週もがんばって書いていきたいと思います。その前に、先週の振り返りはコチラから。
■大河ドラマ『光る君へ』第17話「うつろい」感想―今日をかぎりの命ともがな
えぇもう、4000字超えの文章を道隆さまに捧げております(´;ω;`)ウッ…
ではでは、第18話へレッツゴー。
■今日の中関白家
■定子さまのド正論
関白であった道隆さまが亡くなり、続けて関白に就任した道兼どんまで召されてしまったとき。朝廷では、公卿のほとんどが亡くなるという異例の事態に陥っていました。
言い換えれば、生き延びたヤツが勝ち、みたいな世界線。そう考えると『どうする家康』にも通じるような…?? とまぁ、それはともかく。
ここから必然的に、政権の中枢を担うのは道隆さまの弟である道長どんか、嫡男である伊周どんかという争いが勃発するわけです。
厨二を拗らせまくっていた道兼どんは、道長どんの励ましによって、本来の生真面目さをまっすぐに政道に向けるという真っ当な道へ歩みを進めることができました。…そのまますぐに亡くなりましたが(泣)
でもこれ、道兼どんがこじらせていたのが「厨二病」だったからできた話であり。一方の伊周さまがこじらせていたのが……というか、こじらせる以前に「幼稚園児の反抗期」のまま成長してしまった感があり。
定子さまにはあれほどきびしくお后教育をなさった貴子さま……もしかして、初めての男の子である伊周どんには激アマなご教育をなさったとか……?と、思わず「親の顔が見てみたい」→→「あぁうるわしい♡」となってしまうわけです(をい)
そうして、自分が関白(あるいは、内覧)になれなかったことを、伊周どんは妹のせいにします。「役に立たねぇ妹だなぁ、をい」。そんな悪態と共に、「御子を産め」と狂気にも似た、晩年の道隆さまそっくりの表情で迫るのです。
それに対して、定子さまは。
「もっと人望を得られませ。次の関白に選ばれるべく精進していただきたく思います」
とド正論をぶちかまします……超真顔で。
つまり。「欲しいものが手に入らなかったのは、おまえのせいだ」と妹が生まれたことで赤ちゃん返りしたみたいなメンタルの兄に対して、妹が「おまえの努力が足りねぇんだっつってんだよ」と啖呵を切るのです(違)
考えてみれば。
伊周どんは、妹である定子さまの「中宮」という地位にあやかろうとしていますが、その定子さまの地位だって、結局は「関白家の娘」という後ろ盾がなければ、朝廷のなかで説得力を持つことはないわけです。
しかも、今までであれば「中宮」が女性の最高位でしたが、この段階では「女院」がいらっしゃいます。
さらに言えば、女院=詮子さまは現天皇の実母。この段階で一条天皇の父である円融院も、祖父である兼家パパりんも亡くなっていますから、そこらの公卿の誰よりも(血縁的に)天皇に近く、また経済的にも保証されており、それはイコール「男たちの力」と同等のものを持っていることを意味するのです。
その上で。
物語の中で定子さまがおっしゃっていますが、彼女が守りたいもののなかにはもちろん「家」もありますが、それ以上に「帝」があります。
幼い頃からずっと傍で見てきた、家族の愛に縁の薄かった帝―懐仁。おそらく、定子さまはそんな懐仁の心を、彼が少年だった頃からずっとずっと温めてきたのでしょうし、守ってきたのでしょう。そして、彼にとって自分が最後の砦であることも、心の底から理解している。
そして、ほんとうならそんなかよわい雛のような自分たちを守ってくれるはずの父はもういない。その不安は、定子さまがいちばん強く感じていらっしゃるでしょう。そんなところに、兄がコレですから、ほんとに…
定子さまはもしかすると、強くありたいなどと思ったことはないのかもしれません。ですが、時代の趨勢は彼女に強くなることを無理強いした。だからこそ、中関白家没落の悲劇はより劇的に思えるのかもしれません。
■兄ってやつはどいつもこいつも
ところで、第18話を見ていて、ふと思ったのですが。大河ドラマ『光る君へ』に出てくる「妹―兄」の関係ってなかなか豪快に兄がクズ…頼りないですよね(笑)
たとえば。
道長どんの妾妻明子さまの兄である源俊賢さまは、明子さまに「御子産め」攻撃していますし。花山院の寵姫忯子さまの兄の斉信さまは、病床の忯子さまに対して、見舞う言葉以前に「おれを売り込め」って言ってますし(そして、直後に撃沈するとこまでが1セット)。
定子さまの兄である伊周さまに至っては、「御子産め」攻撃と「おれを売り込め」攻撃どちらも敢行しているわけで。
そりゃもう、「御子産め」攻撃には「おまえが産めばいいだろうよ」としか言えませんし、「おれを売り込め」攻撃には「おまえがもっとうまく立ち回れよ」としか…(白目)
そう考えると。明子さまの「ほめるところがございません」はほんそれなセリフでして。定子さまも言いたかっただろうななどと思うわけです。
でも。
あれほど父や兄が熱望した「帝の御子」を、定子さまはこの後3人お産みになりますが……それが彼女の名声だけでなく、命までも奪う結果になろうとは……ほんとうに皮肉なものです。
というか。今であってもお産は命がけなわけで。現代よりもっと実際的な医学が発達していなかった平安時代に「御子産め」攻撃とか……ほんとに「おまえが産めよ」としか言えませんよね。
…って考えたら。
道長どんはなかなか身籠らない彰子さまを慮って、いろいろ加持祈禱やらなんやらするですよね……実際には口に出さなくても「無言の圧力」を全力でかけてくるスタイル(闇)いや、だから身籠れないんじゃ…?とは考えないのですかね?
■でも、来週はとうとう…(泣)
そんな伊周さまですが、来週はとうとう「長徳の変」が起こるようです(号泣)タイトルからして「放たれた矢」ですからねぇ……あぁ、なぜそんな軽率なことを……
でも、久方ぶりの花山院のご登場ですし。そのあたりも含め、じっくり視聴しようと思います(実はリアタイできませんが)。
■うるわし男子列伝
これを定番化するとか、正気か私?と思わなくもないですが(笑)そこは、ほら…主人公にほぼ興味がないものですから…ね?(誰)
■帝のまつげの破壊力
一条天皇はほんとうにどこまでもうるわしくていらっしゃるですよ。
また、定子さまとご一緒のときなど、ほんとうに絵巻物を見ているかのよう。こんなにうつくしく、きらきらしたお二人をいつまでも見つめていたいと切望するのは、おそらく清少納言姉さまだけではないでしょう。
でね。今回、ワタクシが「ぐはぁ!」ってなったのは。詮子さまが一条天皇の寝所にまで「頼もう!」とやってきて、全力の説得を試みようとした場面なんです。
あのとき、一条天皇が人払いのために目配せをなさったじゃないですか!
あの目配せの、何かがダダ漏れているような…全国の女子を心を射抜く光線を発射したかのような風情がやばくて(語彙力)
えぇ、いつもの通りメモを取りながら見ていたのですが、そこには「まーつーげー!」と書かれていますことよ。いや、帝ってば、マジでまつげ長いですし、そこから何かしらの破壊力がものっそい強さで押し寄せてきたです。
それにしても。
母詮子さまの思惑も、愛妻定子さまの不安も、公卿たちの言い分も全部呑み込んで、自分の理想とする「賢帝」の姿を模索する一条天皇。実は、まだ10代なんですよねぇ……
儚げな空気もまだまとっているけれど、「朕は現世でただ一人の帝である」と自分に言い聞かせ立ち続けるその姿は、ほんとうにうるわしくすばらしいと感嘆してやまないのです。
■そうして公任さまは大人になった
第18話では藤原公任さまもご出演でした(るんるん)
公任さまは斉信さまと共に、伊周どんの酒宴に出席。視聴者が道綱どんの「まだ? まだ?」なワンコ姿に釘付けになっている隙に、伊周どんの為人を観察します。
「やや、人物がましになっていた」
この「やや」のところに、超ポイントを置いた発言でしたが。関白家本流の嫡男から、一介の公卿になった公任さまは、そのなかで生き抜いていくことを決意されたのでしょう。
めっちゃ人を見ていますし、時勢も読もうとしている。
伊周どんの口上を聴きながら、「どの口がおっしゃってる?」みたいな表情もなさっていたので、心の底から思っているわけではないのでしょうが。
それでも、この段階では伊周どんに権勢が回る可能性を否定できませんでしたから、親しい友人にであれ「人物がましになっていた」と穏当な回答をなさったのでしょう。「壁に耳あり、障子にメアリー」ですからね。何が足を引っ張るか分からない世界。
公任さまなりに大人の立ち回りをなさるようになったのだなと、ちょっと感慨深い思いも抱いていたのでした。
■まとめにかえて
一方その頃、まひろっちは白居易の『新楽府』に興味を持ちます。この『新楽府』は、のちにまひろっち―紫式部が彰子さまにお仕えし、漢詩を講義したときのテキストになるのです。そんな伏線もありながら。
第19話は長徳の変。ほんとに、わたしのメンタルぇ…って今からなっていますが。それでも、ずっと大好きな『大鏡』のなかで読んでいた話を実際に目の当たりにできるなんて、稀有な体験ですし。
今週もご一緒に楽しめたら、とても嬉しいです。
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