ばなー

可能性を広げるトーン&マナー

デザイナーならトーン&マナーを提案する機会が多くあります。トーン&マナーをクライアントに提案する際に、みなさんはどういう軸で考えてるでしょうか。

トーン&マナーってなんだろう?

トーン&マナーとは「醸し出す雰囲気や世界観を統一するためのルール」だと考えます。

一時期、トーン&マナーはそのサービス「そのもの」を表現するものだと思っていました。
だから必死になって、サービスの良さを理解したり、それを手に取るユーザーの好みを把握して、競合を見て必要そうなポジションを探し、あるべきトンマナを想像して案として提出していました。それでうまくいくこともあれば、あれ?なんか違うな?と思って再度、探しにいったり。。

例えば、あるサービスに対してデザインするときの軸として、こういう感じで出してしまったりしないでしょうか。

[A案] サービスのユーザーの好みに合う案
   → かわいいとか、かっこいいとか
[B案] サービスの特徴を表現した案
   → はやそうとか、つかいやすそうとか
[C案] サービスを出している企業のブランドを押し出した案
   → コーポレートカラーとか

間違ってはいませんが、この軸だとクライアントのリテラシーに頼りすぎてしまっているパターンです。
これらは、サービスがどういうポジションにあるものかを理解することで、[A案] が正しいのか [B案] が正しいのかが決められるものです。ここから案を出してしまうと、下手をしてしまうとクライアントの頭の中が整理できないまま、曖昧な好みで案を決めて詰めてしまうことになります。

でも、あるあるです。笑
なぜ、そんなことが起こるのでしょうか。デザイナーとクライアントの間に足りない情報がありそうですね。

トーン&マナーは未来を示すもの

そんな中で読んだアートディレクターのウジ トモコさんの『生まれ変わるデザイン-持続と継続のためのブランド戦略』を読んで、なるほど!と思ったことがありました。トーン&マナーとは「そのもの」を示すものではなく、その企業やサービスが持つ「これから挑戦していくもの・こと」を表すものなんだと改めて腑に落ちました。

例えば一つのサービスを作る際に、いきなり全ての機能を作りきることは、ごく稀です。
リリース計画を建てて、フェーズに合わせた機能を絞り、UIを作っていきます。その時のすべての前段に置いておくものとして必要なのがトーン&マナーです。
それが「これから挑戦していくもの・こと」でないと、リリースを重ねるごとに少しずつ崩れ、そのサービス全体の持つトーン&マナーが、やがて崩壊していくことになります。

経験の中でそれらのものごとって実はなんとなく理解はしていたものの、こうやって言語として整理されると、なるほどなーと膝を打ってしまいます。

サービスのアイデンティティを定義しよう

クライアントワークにおいて、サービスのトーン&マナーを考える時には、まず方向性をクライアントと議論する必要があります。
いきなり冒頭にでてきた [A案] [B案] [C案] から手を動かしてしまうと、決めるために必要な情報や条件をクライアントが理解していないままに、印象でデザインが決まってしまいかねません。

そのサービスは企業として、どういう願いを込めていて、どういう人に認知されたいのか、それらがリリースされることで、どういう未来を想像しているのか? を、きちんと可視化してから、クライアントとあるべき方向性を探る工程を取り入れ、最終的にトーン&マナーとして定義することで、サービスの可能性を広げ、持続可能なデザインになっていきます。

そのためにはデザインのトーン&マナーは、上流工程(要件定義)が終わってから着手するものではなく、要件を決めている時にセットで、ユーザーがサービスを利用した時にどのような印象を持って欲しいのかであったり、企業がユーザーの手元に届いた時に、どういう印象になりたいのかを計画立てて定義していかないとなと、ついつい設計が好きなので、頭は UI を考え出してしまいますが、せっかく作った UI も、トーン&マナーが突貫であれば、すぐに崩れてしまうので、肝に免じないとなと思っています。

前の記事で書いていた流れの図(をもう少し細かくした)です。
本来であればサービスの中にデザイン戦略を入れるべきなのかもしれませんが、一応自戒として分解して前段に入れました。
あと、サービスの定義を、1つのものと考えた場合は、1つのトーン&マナーに複数のサービスを紐付けることもできます。

ウジ トモコさんの『生まれ変わるデザイン-持続と継続のためのブランド戦略』は、その方向性を決めていく流れなども詳しく例とともに書かれています。本当におもしろいので、みんな読んだらいいと思います。

この記事は デザインとテクノロジー Advent Calendar 2018 に参加しています。今日からフェンリルの人たちが何かぼちぼち書き出す予定です。


もう12月!1年が早い。。

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