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「西荻窪三ツ星洋酒堂」風、オーロラソースのサバ缶サンド

根っからの食いしん坊なので、食べ物の登場する小説やエッセイが好きだ。食べ物や料理に関する描写や食事場面はつい何度も読み返すし、それが得意な書き手の方には勝手な親近感を抱く。同様に食べ物の美味しそうなドラマや映画も好きで、過去作品でも興味があれば積極的に視聴する。

普段あまりテレビを観ないので、リアルタイムでドラマを観続けることは珍しいのだが、予告時点から気になって録画し、今でもたまに見返すのが「西荻窪三ツ星洋酒堂」、2021年2月放送。原作漫画の存在を知らずにドラマを気に入り、後から電子書籍を購入して読んだ。

藤原季節さんのリアルな役作りや表情が好きで観始めたけど、他の二人もとても良かった

ドラマ版は原作にはない全編の背骨を為すストーリーとテーマが設定され、キャラクターもそれに合わせて改変されているが、やり過ぎた不自然なところはなく、キャストの持ち味と相まって狙った世界観に仕上がっている。

何よりメインキャスト3人のバランスが良い。3人ともそれぞれ魅力的で、キャラクターの描き分けも明確。各キャストの持ち味を上手に登場人物に寄せた制作側は巧いなと思った。
各話のエピソードもよりすっきりと改変され(出演者に合わせた大幅改変や創作もあるが気にならない)、ドラマは全体的に癖がなく観やすい。一方で原作も穏やかながら味があり、両方好きという方は多いのではなかろうか。

バーに缶詰グルメという組み合わせもよく、カクテルと缶詰料理の味や組み合わせを想像しながら視聴したが、最も気になり試したくなったのが、最終話の鯖缶サンド。鯖缶を使ったサンドイッチ、ソースはマヨネーズとケチャップのオーロラソースで、までしかヒントは与えられていない。
それまでの缶詰レシピは素材にはあまり手を入れず、添えるソースや提供の仕方を工夫した感じだったが、鯖缶サンドは工夫やアレンジの余地が相当ある。そもそも鯖缶は水煮かそれとも味付けタイプか。それも醤油か味噌か。

ドラマで使われていたのはAKOMEYAさんのこのお洒落な鯖缶(醤油)

パンはどのタイプを使うのだろう?お洒落なバーらしくハード系か、或いは身近な食パンか。その場合トーストするのか、耳はどうするのか。
挟む具は鯖缶のみか、何か野菜を使うのか。玉ねぎを入れるか否かでも味は大きく変わるし、切り方や量も然り。サンドイッチの世界は奥が深い。

ドラマでは粗くほぐした鯖缶の他にフリルレタスと紫キャベツ、少量のにんじんが見え、ごく軽くトーストされた食パン(おそらく8枚切りで耳はなし)に挟まれていた。食べやすい細めカットでピクルスとレモンが添えられ、この回のゲスト、ロンドン帰りのファッションデザイナー役のミポリン(メインキャストと比べて随分大御所感が…いったい何歳の設定だったのか)の鮮やかなピンクのトップスと黒のネイルに合うお洒落な一皿だった。

ソースたっぷり、鮮やかな色合いもお洒落

そのバージョンも美味しそうではあったが、鯖缶サンドに関しては、よりシンプルな原作版(一巻の最終話に登場)の方が美味しそうだと私は思った。

パンも少し厚めなイメージですよね

ある日それが食べたくなって、家にある材料で真似してみた。
材料は鯖水煮缶(スーパーの安いやつ)、食パン(6枚切り)、レタス、ケチャップ、マヨネーズ。レタスは原作版にはないが、入れた方が美味しいと思うので(フレッシュな食感とみずみずしさが補える)たくさん挟む。

パンは8枚切りを使いたかったが、この日家にあったのは6枚切り。そのボリュームに合わせて耳はそのまま、鯖も豪快にどっさり挟むことにした。

鯖の身を缶から出し、フォークで粗くつぶしてマヨネーズとケチャップ各小さじ1程度と和える。トーストしたパンにレタスを数枚のせ、その上に鯖をたっぷりのせる。味つけをよりはっきりさせたくて、パンで蓋をする前に再度マヨネーズとケチャップを絞ってみた。

いつもの私ならごく薄くスライスして水にさらした玉ねぎを入れたり、パンに辛子を塗ったりするが、この日はなし。厚切り食パンのボリュームとレタスの歯ざわり、鯖缶本来の味わいにオーロラソースをトッピングする感じをイメージした。
パンが8枚切りならもっとこんがりきつね色に焼き、ソースはたっぷりめにしただろうと思う。バゲットなら鯖缶の缶汁とオリーブオイルを少々パンに塗ってから具材を挟んだかも知れない。具材もバインミー風に、ドラマのように複数の野菜を挟んでも美味しくできたかも。

という訳で、この日のあり合わせと気分でこうなった。
カクテルというよりビールや炭酸水、オレンジジュースやトマトジュースに合いそう(昼なのでノンアルコールビールで)。
レモンのスライスを1枚挟んでもいいかな。

美味しかったです。満足。また時々食べたくなりそう。オーロラソースというのが良いですよね、なんとなく懐かしい甘さで。

それにしても、ドラマに登場する食べ物を真似て作ってみるなんて初めてかも。
その辺は、缶詰の中でも最も身近な鯖缶ならではの魅力かも知れない。

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